一瞬、ジュワァアっと派手な音がして煙が出た。

「熱いぃいいいいいい!!!!」

言葉にならない声で叫ぶユウキ。

痛がり、転げまわるユウキ。

カイトの動きが固まった。

酷いことするなぁ、昨日まではあんなに可愛がってたくせに。

そう無意識に言ってしまいそうになって慌てて口を堅く結んだ。

毛穴から妙な汗が噴き出てきた。

明日は我が身なのだ。

ここにいる誰もがそう思っている。

それでも口に出す事はない。

平然とした顔で吉田の周りを固めている。

それしかないのだ。

一度、吉田と仲良くなってしまうと、あとは恐怖しかない。

仲良くなってしまったことをいくら後悔しても遅いのだ。

気に入らないヤツがいれば、相手がボロボロになるまでいたぶる。

親も加勢して、とことんやる。

誰も止めることができない。

だから従うのだ。

吉田の下についていれば、シンナーやクスリは余裕で手に入る。

吉田はそれを知っている。

「何があったか聞いてんだよ?答えろや。殴るぞ?」

吉田に威嚇され、カイトはハッと我に返って状況を説明した。

もちろん、ヴェルファイアからハコ乗り状態で攻撃してきたモンスターのような男のことも報告した。

「あれは人間じゃないです、まじで。車を絶妙なバランスで運転して皆をなぎ倒していったんすよ!」

興奮気味に話すカイトの顔面を吉田が殴り飛ばした。

「お前の説明聞いてたら、オレらよりあっちのが強いみたいじゃねーか!」

ゲホゲホと咽ながら、口の中に溜まった血を吐き出すカイト。

いや、強いんっすよ!

カイトはそう言おうとしてやめた。

この人に何を言っても無駄だ。

そう思った。

ヴェルファイアに乗っていた男、アイツはただ者じゃない。

いくら相手は車だと言っても、あれだけ束になってかかって勝てなかったのだ。

相当ケンカ慣れしている。

「ヴェルファイア乗ってる男ねぇ~」

吉田は持っていたタイマツを、床で転がっているユウキの服の上から押し付けると、

「気に入らねぇなぁ~」

そう言って嗤った。

ユウキの服に火がついて、それは大きな炎になった。

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