これは、フィクションです。(創作文)
イ・ビョンホンが出演した「オールイン」の最終回を見て、少し、物足りなさを感じたので、その後のSTORYを創作してみました。
独り勝手気ままな妄想劇場です。

前回までの話はこちら→目次



第50話 運命









イナは、スヨンを優しく見つめていた。
不思議とスヨンの不安は、消し飛んでいた。

「…ずっと、側にいてね…。」
「…もちろん…。」

見つめ会う二人に声を掛けたのは、チョンウォンだった。


「…イナ…車で来たのか…?」
「…ああ…。」

すると、
「…じゃあ…スヨンさんを連れて先に帰っててくれ。僕は、これからチョンエさんと、何件か物件を見て来る。」
と、言った。

「…今からか…?」
「ああ。もちろん。今日中に場所決めないと…明日からのチェスの生活はどうなるんだ?路上生活でもさせるつもりか?」
「…あ…いや…確かにそうだが…。」

イナは、驚きを隠せなかった。
どちらかと言えば、打算的な奴だと思っていたチョンウォンが、チェスが困るのを助けるとは、正直、思いもよらぬ行動だった。


イナは、チョンウォンに意味ありげに笑い掛けた。

「なんだ…?」
「…いや…人は、変われるんだな…と思ってな。」

イナは、そう意味深な言葉を言った。
当然、チョンウォンは、イナに、その意味を追及しようとせまったが、イナは、取り合わなかった。


「…じゃあ、場所が決まったら連絡してくれ。俺達は、一足先に帰る…。」

イナは、チェスにそう言い、スヨンと共に、ホテルに戻った。



ホテルに戻ると、早速、待っていたかのように、チョングがやってきた。

「…イナ。一体、何処に行ってたんだ…?」
「…ちょっとな…。…それより、何かあったのか…?」

イナが、そう言うとチョングは、真面目な顔で答えた。

「…ああ…。…実は、明日ラスベガスに戻ろうと思ってな。今度、いつ会えるか分からないから、最後に顔を見ておきたかったんだ。」

「…明日…?…随分、急だな?」

イナが驚いたように言うと、チョングは、言った。

「早く戻って腕を磨かないと、次の大会までに間に合わなくなっちまうからな。…色々あったが…、入札の結果も出て、チニさんとチョンウォンの所に決まったし、イナとスヨンさんも、又、元のさやに戻ったし…。これで、心残りはないからな…。」

「…まだ、あるだろ…?」

イナが、そう言うと、チョングは、きょとんとした表情を見せた。

「…チョング達は…何しに戻って来たんだ…?」
「…何しにだって…?…お前とスヨンさんの結婚式に出る為だったけど…色々あって…まさか!?」

チョングは、ひとしきり喋ると、驚いたようにイナを見た。

「…おい…!…まさか…!?…そうなのか…?」

チョングが、気付いたように、そう言うと、イナは、笑顔で答えた。

「…明日、帰るだって…?……それじゃ、あんまりだろ…?」

「…本当なのか…!?…」
「…ああ…。式場が空いていれば、明日でもいいんだが…。」

イナが、そう言いかけてる側から、
「…俺にまかせとけ…!」
と、チョングは、走り去っていた。

あの勢いなら、間違いなく今日中に、何処かを見つけてくるに違いない。

イナは、チョングの背中をはにかむように見つめ、熱い友情に感謝していた。




吉報の知らせは、驚く程、早かった。

「…本当に、見つけたのか…?」
イナは、驚きを隠せなかった。

「ああ。ちょっと、いい所を思い出したんだ。事情を話したら、OKが出たんだ。」

チョングは、得意そうにイナに言った。

「…何処なんだ…?」
「…イナが、前に挙式を挙げようとしていた、あの教会だ…。」

「…なんだって…?」
「もう一度、やり直すんだろ?だったら、そこがいいだろ?…なんだ?不満か?…もっと盛大にやりたかったのか?」
チョングが、そう言うと、イナは、考えていた。



…その教会は…

…以前、スヨンに『待ちぼうけ』させてしまった所だ…

…今のスヨンが、そこに行って耐えられるんだろうか?…


「…明日…?」
スヨンは、イナに聞き返した。
「ああ…。急すぎるかもしれないが…チョング達が戻る前に、見せたいんだ。嫌か?」

イナが、そう言うと、スヨンは、嬉しそうにほほ笑んだ。
「いいえ。明日が楽しみです。」

「ところで、イナ。…ウェディングドレスは、どうするんだ…?」

チョングが、そう言うと、イナは、
「今から見に行こう。」
と、スヨンに言った。


「…ウェディングドレスなら…家にあるわ。」

スヨンは、そう言うと、
「…ちゃんと仕事しましょう。」
と、言い残し、足下軽やかに仕事場に戻っていった。


イナとチョングは、スヨンの後ろ姿を見送り、顔を見合わせた。

「…良かったな…。…幸せになれよ。」
チョングは、そう言ってイナの肩を叩いた。

イナは、
「…ああ…。…もちろん…。」
と、うなづいた。

チョングは、イナの背中を叩いた。
「…じゃあ、俺も最後の仕事をしてくるか…。…チニさん所に顔出せよ。まあ、怒られるかもしれんがな。」
「…わかった…。」
「じゃあな。」
「ああ。」

そう言うと、二人はその場を別々の方向に歩きだした。



「…えっ…!?…式を明日挙げるですって!?…おめでとう!良かったわ。」

チニは、イナからの突然の参列の誘いに驚き、喜んだ。

「…突然で驚いたけど…良かったわ。…チョンウォンさんは知ってるの?」
「…いや。…ついさっき決まったばかりなんで…。」
「そう…。それじゃ、私から伝えてもいいかしら…?」
「…もちろん。…お願いします…。」

イナが、そう言うと、チニは、嬉しそうにほほ笑み言った。

「…それで…もちろん、披露宴は、うちでやってくれるのよね…?」

にっこり笑うチニに、イナは逆らう事が出来なかった—。



チニから、やっと開放され会議室を出ると、イナの携帯電話がなった。
チョンエからだった。

「もう場所が決まったのか?」
イナは、チョンエからの電話をうけていた。

「…うん…。…こんな形で出来なかった夢が果たせるとは思ってなかったわ。」
「…そうか…。良かったな…。ところで、明日、予定空けてくれないか?」
「えっ!?…急に改まってどうしたの…?…」
「…実は、急な話だが、スヨンと明日、結婚式を挙げる事になった。…それで是非…」
「もちろん行くわよ!チェスもテジュン達にも伝えておくわ。」

イナが、まだ話し終える前に、チョンエは、答えた。
イナは、チョンエのはりきり方に少々、面食らっていた。
「…ああ…。ありがとう。頼むよ。…それで、場所と時間だが…」

「ねぇ!ねぇ!すごいイナったら、あたしのお客の第一号になるのね!?」
「…はっ?…一体、なんの話!?」
「やだわ!すっとぼけちゃって!!結婚式の後は、披露宴でしょう?第一号のお客様がイナ夫婦なんて、凄いわ!あたし、張り切るから!期待して!」
「…ああ…。」

あまりの勢いに、つい、うなづいてしまったイナであった—。



スヨンは、一人、自席に座り、積まれた書類に目を通していた。
突然、目の前に、黄色い花の鉢植えを置かれ、驚き、顔をあげた。


「…おめでとう。…するんですってね…。結婚…。」

スヨンは、しばらく姿を見せなかったリエが、突然現れ、祝福の言葉を述べている事に、戸惑っていた。

「…ええ…。…ありがとう。綺麗な花ね。」

スヨンが、ひとまず礼を言うと、リエは、そばにあったイスに腰掛けた。

「…運命ってあるのね…。」

突然、リエは、そう言った。
スヨンには、リエの言葉が不思議な呪文のように聞こえた。


「…私…結構、落とす自信あったのに…。…全く悔しいわ…。」

スヨンは、何も言わなかった。
リエは、続けた。

「…私の方が、スヨンさんより、先に会っていたら…あるいは、記憶をなくしたのがイナさんだったら、良かったのに…。きっと、その時には、私がイナさんの隣にいるわ。」

リエの言葉に、スヨンは、動揺を隠せなかった。
自信をもって言い返す事が出来なかった。


そんなスヨンを、見てリエは、ふっと笑った。

「…って、イナさんに言ったの。…そしたら…『そうだったとしても、俺は、又、スヨンを、好きになる。何故なら、運命だからだ。』…って、言いきったのよ…。」

スヨンは、顔を上げてリエを見た。

「その時の私の気持ち、分かるかしら?…だから、これくらいの意地悪くらい、言わせてね。」

リエは、そう言うと、笑顔を見せた。

「あんまりムシャクシャするから、カジノを渡り歩いて荒稼ぎしてきちゃった…。やっぱり、私には、この道が合ってるんだわ。…ところで、ジェニルさん、見なかった?」
「いえ。…そういえば、最近、見てません…。イナさんなら、何か知ってるかも…?」
「…そう…。…まあ、いいわ…。とにかく、おめでとう。幸せになってね。」

リエは、そう言うと部屋を出て行った。



スヨンは、黄色い花を見つめながら、イナが言ったという言葉を思い出していた。


…もう、イナさんったら…


スヨンは、ふと、その花を見つめた。



…この花…何処かで…?


しかし、何もおもいだせなかった。


スヨンは、その花を窓辺に置いた。

…ああ、そうだわ…
…イナさんの家の庭で見たんだわ…


…でも、どうしてこの花なのかしら…?


スヨンは、しばらく考えていたが、明日の事を思うと笑みがこぼれた。


…早く明日にならないかしら…?…


スヨンは、花の事をすっかり忘れ、明日の結婚式に気持ちは向かっていた。


忘れられた花は、寂しそうに小さく揺れていた…。











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