水俣病の未認定患者らでつくる「水俣病不知火患者会」(熊本県水俣市)の近畿支部会員306人が、国と熊本県、原因企業のチッソに損害賠償を求めた集団訴訟は28日、大阪地裁(村岡寛裁判長)で和解が成立した。不知火患者会の集団訴訟では、24日に東京地裁(原告194人)、25日には熊本地裁(同2492人)で和解が成立しており、最後の和解となった。

 和解条件は東京、熊本両訴訟と同水準。(1)原告の9割以上の282人に対し、チッソは1人210万円の一時金を支給(2)国と熊本県などは月1万2900~1万7700円の療養手当などを支給(3)支給対象外の原告に対し、チッソが患者会に別途支払う団体加算金3億円から1人210万円を支給-など。

 和解成立を受けて原告・弁護団の6人が大阪市内で会見し、熊本県天草市出身の原告、西川成代(しげよ)さん(67)=大阪市平野区=は「国と県、チッソの責任を認めてもらえて本当によかった」と笑顔で話した。

 漁師の父がとってくるアジやイワシ、サバなどを食べて育ち、小学校に入学した頃からこむら返りなど水俣病の症状が表れるようになった。だが父から「水俣病は恥だ。一切、口にするな」と言われ、中学卒業後に就職で大阪に来てからも周囲に病状を隠した。

 水俣病の認定申請を拒否したまま、平成3年に亡くなった父の思いを知るだけに、不安に思いながらも、痛み止めを飲んでごまかし続けた。

 21年11月、天草出身者の集会で訴訟のことを知り、苦しみ続ける未認定患者らの救済に向けて力になろうと昨年6月、訴訟に参加した。和解成立を迎え、父の遺影にはこう報告するつもりだ。

 「言いつけを守らなくてごめんね。でも、みんなの願いが通じたよ」