あまり知られていませんが、芥川龍之介のH体験を記録したと言われる「赤い帽子の女」と言うガリ版刷りの本があります。この作品は「相対会」(哲学者・小倉清三郎主宰)と言う会員制の秘密結社みたいな会の機関誌で発表されたものです。この会の設立目的は乱交や夫婦交換、破廉恥な性愛についての体験談や性具の収集などが主ですが、会員には芥川龍之介の他にも坪内逍遙、大杉栄、伊藤野枝など文化人が参加していたと言われてます。芥川も若い頃から「金精神」(金の性欲を持つ神)を崇拝していたと言われ、春本とか淫らな浮世絵を沢山集めていたほど「性文化」に対して深い関心や興味をもっていました。

新説 あぶな絵伝
この機関紙に発表されたのが「赤い帽子の女」でした。内容は第一次世界大戦直後のベルリンで、日本人旅行者が偶然に赤い帽子のドイツ娘(娼婦)と出会い、その日の内に彼女とベルリンの森で木立に寄り添うようにして立ったまま(巨根でしかできない)Hしたことから始まり、滞在中何度も赤い帽子の女をホテルに呼びHしたという話しです。「ドイツ女とのHは激しいばかりか何時間もかけて壮絶な性愛を展開することとなり、彼女は悦びの絶叫と狂喜の震えに身を横たえ、私も羽化登仙の悦楽に耽う男となった」とその性行為を詳細に書いています。芥川自身はドイツに行ったことはないのですが、人物設定を外人とすることで、開放的で大胆な性描写を可能にするためにドイツ娘に設定したと言われます。芥川の性に対する欲望を研究する上でこの本は貴重な一冊だと思います。この本は戦後幾度か伏字による復刻版が出されましたが、内容が過激なため当局から幾度も弾圧を受けました。昭和の初期には会も解散して、この出版物も闇に消えて行く運命にありました。
金精神を祭る「かなまら祭り」は毎年4月第一日曜日に川崎市で行われます。(次回に続く)