花が咲く頃いた君と/豊島 ミホ
¥1,365
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内容(「MARC」データベースより)
ひまわりで遊び、コスモスに恋をし、椿に涙して、桜の微笑みに頬笑む-。目を閉じ、耳を澄ませば、可憐な花の囁きが聞こえる。日常の切ない一瞬を切り取る名手が、いま、分岐点にいる人に贈る珠玉の短編集。

面白かったです。

豊島さんの書かれるお話は割りとインパクトが薄くて印象に残らない作品がこれまで多かったのですが、今回はばっちり残りそうですね。

四つの短編が入っていたのですが、うち三つは最後にほろりとさせられました。このひとの作品、若者言葉が結構きつくてついていけないところもあるのですが、今回はそれを差し引いてもよかったです。

もう少し文章が滑らかだということなし!

豊島さんは若いのにコンスタントにお話を書かれていてすごいなあと感心します。次回作も期待しています。


  


風花/川上 弘美
¥1,470
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内容紹介
日下のゆりは33歳。システムエンジニアの夫の卓哉と結婚して7年。平穏な日々が、夫に恋人がいるという一本の電話で破られる・・・。何気ない日常の中で、色あせてゆく愛を描く長編恋愛小説。

面白く読めました。

川上さんの書かれる文章好きですし。

主人公ののゆりの、夫に浮気され、ぼんやりとしつつも傷つく様子もよくわかりました。

一昔前の夫婦は夫が浮気しようと家を半年空けようと、離婚という選択をすることはほとんどなかったのでしょう。それがのゆりの母親のエピソードのなかにありました。(それにしても男ってそんな浮気なイキモノなの? というのが率直な感想です。親子ともども夫に浮気されるなんて、ねえ?)

でも現代は違います。案外さらりと別れます。ただそこへ辿り着くまでの決心はそれほど容易には生まれない。その決心をするまでの妻の心の動きを追っているお話でした。主人公ののゆりさん。話が進むにつれ少しずつですが強くなっていってます。

夫の卓哉も現代っ子だなあと。つくづく思いました。最近の男はよく泣きます。平気で泣きます。それにしても一旦はぼろぼろになるまで傷つけた妻を、また愛せるものなんでしょうかねえ…。そのへんが女のわたしには理解不能でした。


   



別冊図書館戦争 1 (1)/有川 浩
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甘い!!

激甘です。

郁さんのほうは今回が初めての恋のようですし、ああいうキャラですからまあいいとして。え。堂上教官、実はそんなひとだったんですか!と。ところどころ目を剥いてしまいました。まあ、初期のコイビトドウシなんざ、みんなこんなもんなんざんしょね。

しかし。同僚の皆さんやりにくくないのでしょうか。わたしが上司だったら、ソッコーどちらかを転勤ですね。マジです。それくらい激甘です。喧嘩したのさえ職場のみんなに丸わかりだなんて。恥ずかしいっすね。

甘い話のついでに(?)、図書館内の事件もちらほら。

何だかんだと言いつつ、でもとても楽しく読めました。

そして別冊シリーズはまだつづくそうで。次回はどうやら別のキャラの模様。柴崎・手塚の話が読みたいなあ。楽しみですね。


  


論理と感性は相反しない/山崎 ナオコーラ
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山崎さん。

タイトルのセンスは抜群です。

内容もまた独特ですね。

もう、なんと表現したらいいのかわからない。

稚拙と取るべきか個性或いは才能と取るべきか。

ただ実際、芥川賞候補にはあがってるわけですから(この本が、ではなく)、やはり才能はおありなのでしょう。

他の方の意見が聞きたいわ~~。



流星の絆/東野 圭吾
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内容紹介
全ての東野作品を凌ぐ現代エンタメ最高峰!
殺された両親の仇討ちを流星のもと誓った功一、泰輔、静奈の兄妹。
十四年後、泰輔が事件当日目撃した男に、功一が仕掛ける復讐計画。
誤算は、静奈の恋心だった。

面白かったです。

最後の場面はなるほどね~~と、思いました。思わず最初のページに戻って確かめたほど。ちゃんと伏線張ってるんですね。

ものすご~~い大作というほどではないのですが、それでも引き込まれるように読みました。読みやすい文章。惹きつける展開。さすがです。

ラストもよかったです。

それにしても東野さん。よくまあこんなに次から次へと面白いお話が書けますね。素晴らしい才能です。


  


白蝶花/宮木 あや子
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出版社 / 著者からの内容紹介
抱いて。ずっと忘れないように――戦中の日本で恋に命をかけた女たちを描く純愛ロマン。

昭和十九年、福岡県知事の屋敷に奉公にきた少女・千恵子。書生の政吉と恋に落ち初めて結ばれた途端、政吉は徴兵されてしまい……千恵子の波乱に満ちた人生を中心に、戦前・戦中・戦後の激動の日本で、それぞれの愛を貫き通した5人の女たちが織りなす恋物語。デビュー作『花宵道中』で圧倒的支持を得た著者による注目の最新作!

相変わらずの文章力です。読ませてくれます。

戦時中の話を書くにあたり、かなり勉強をされてるなあという感じも受けました。文章そのものがその時代のものになっているし、若いのにすごいなあ、と。確か、新潮社の新人賞を取ったあの作品を書くまでは、現代モノを書いていたと言っていたように記憶しているので尚更自分の世界を確立するために勉強されたんだなあと。感心しました。

ただ、今回の話の内容に惹きつけられたかといわれると、実はそうでもなかったんです。前作のほうが、色気があったかなあ。まあ、前作と今回の話では舞台が違いますからね。でも、狙ったのがもし官能であるならば、あらゆるものが足りなかった。ように思います。

でも文章が綺麗なので好きです。これからの作品も楽しみにしています。


 


ウツボカズラの夢/乃南 アサ
¥1,785
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誰が主人公で誰が為の物語であるのか。

読んでいるうちに正直わからなくなっていきました。

ただラストに近づけば近づくほど、(おそらくは)主人公である未芙由がとても強かな女であることがわかり、ああ、そういう話か、と納得がいきました。

ウツボカズラって。食虫植物の一種のことなんですね。

でも夢、ってあるから、最後に何か大きなどんでん返しがあるのかなあっと思ったのですが…。

ところどころ、いるいるこういうひと、って納得できる部分があったり、逆につかめないな、このひと、ってひとが出てきたり。まあなんといいますか、要するに掴みどころのないお話、でした。

乃南さんの作品は、これまで音道貴子シリーズを中心に読んできたのでこのお話はちょっと不思議というか意外な印象でした。どう感想をつけたらいいのか正直わかりません。ただこのお話に出てくる鹿島田家が現在日本(東京)によくある家庭の象徴だとしたら、ちょっと怖いかも。


  



福袋/角田光代
¥1,365
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内容紹介
人生に“当たり、ハズレ”なんてない!? 謎で不可解な届け物や依頼、または同僚や夫など身近な人の不可解さに出くわしたら、あなたならどうする? 8編の短篇をとおして、直木賞作家が開く、人生のブラックボックス。

すごい。

やっぱり角田さんの書く話は面白い。以前のものよりずっと良くなってる。そう思いました。

どのお話も有りそうでなさそうなでも誰でも何かしらひとつは隠し持っていそうな人間の不思議を描いています。
角田さんのお話は男でも女でもいまひとつぱっとしないというかサイテーというかそういう人間が主人公、またはその夫や妻だったりしますが、この短編集もまた然り。

が。

「白っていうより銀」。このお話は離婚届けを出したすぐ後の夫婦の様子を描いてるのですが、この夫婦はかなりまともです。(まともっていうのも変ですね)

特に夫の龍一、なかなか魅力的でした。

別れるに至った理由と、離婚直後の展開。神様のいたずらというにはあまりにも切ない。そういうお話でした。

どのお話も奥が深かった。

角田さん恐るべし。

久しぶりにお薦め度◎!


    

夜を守る/石田 衣良
¥1,575
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出版社 / 著者からの内容紹介
上野・アメ横。繁、サモハン、ヤクショの三人はこの街で暮らす幼なじみ。仕事上がり馴染みの定食屋に集まるのを楽しみに生きてるクールじゃない毎日。だが、ある事件をきっかけに、アメ横の夜を守るべく「チーム」を結成することに。痛快青春ミステリー。
うーん。
この本を読んでるとIWGPをどうしたって思い出してしまうのはきっと作者の予想の範疇なのでしょう。
フリーターの繁と幼なじみのふたり(ひとりはおデブで実家の古着屋を継いでいるサモハンと、区役所づとめのヤクショ)、それから「のりすの家」という施設で暮らし働く天才。この四人がアメ横の夜を守ろうとガーディアンを結成したところから物語りは始まります。
まあ、主人公があまり痛い目に合わないご都合主義は、石田作品ではいつものこと。何ででしょうね。ちょっとくらい酷い目にあってもいいのでは? ここでもIWGPと同じくやくざな方に主人公の繁はその人間性を認められることとなります。それで仕事がしやすくなるの。…うーん。
話全体を通してもいまひとつハナはないのですが、それでも心温まる場面もあり。これが石田作品ということなのでしょう。

 


スメラギの国/朱川 湊人
¥1,890
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出版社 / 著者からの内容紹介
志郎の新居の前には、猫が不思議と多く集まる空き地があった。そこを駐車場がわりにしたことが志郎を狂わせる不幸の始まりだった

いやあ、もう、さわらぬ神に祟りなし、とはまさにこのことでしょう。

土地の持ち主に、「あの土地はダメ」と言われていたときに諦めるべきでした。大家の女が亡くなったのをいいことに、再び空いた土地を自分の駐車場にしようと目論んだ主人公の志郎。荒れ放題の空き地を片づける志郎を見守る(監視する?)猫たち。そして、ある日、志郎は駐車場で一匹の猫をひき殺してしまう。

悲しいお話、というより寧ろ怖かった。怖いっていっても霊なんかに対する恐怖心とかじゃなくて、とにかくむごたらしくて。ちょっとこれはやりすぎだろう。そう思いつつ読みました。

あのとき志郎が素直に謝っていれば。そういう場面はあったのに。優しいはずの主人公志郎は結構切れやすく、猫や犬を見下します。なんか、納得いかないところが多々ありました。そういう性格は志郎の生い立ちによるものなのかもしれませんが。

どんどん追い詰められていく志郎の様子は痛いくらい伝わってきました。

最後のほうはちょっと泣けました。「アカチャンッテカワイイナ」と思うスメラギの素直な心。その直後の飼い主のふるまい。伝わらない気持ちは本当に悲しいものです。