ミラー! (669)式典 | 超自己満足的自己表現

ミラー! (669)式典

 着替えを済ませ、部下の元へ。迷彩服に派遣部隊識別帽。首には衛生隊色のスカーフ僕が指揮する部隊は、観閲行進のみだから、更新時間まで結構待ち時間がある。



 式典が始まる。お偉いさんの訓示や祝辞が始まる。国会議員の祝辞では、管轄各県選出の国会議員が簡単に祝辞を述べる。まずは石川県選出の僕の養父。今まで他の議員が祝辞を述べていたけれど、元防衛大臣、元総理大臣の養父は初めてここへ立ち、祝辞を述べている。さすが防衛大臣を長期間していただけはある。他の議員のようないかにも選挙運動的なものではなく、聴いていてためになるいいものだった。



そして僕の兄、春斗の番。春斗は、大叔父さんである弐條代議士が急きょ出席できなくなり、代わりに祝辞を預かって読み上げるという形で紹介されている。もちろんこれは選挙のための戦略。まあいう顔を売る戦略。イントネーションは少し違う。もちろん顔がそっくりだけど、声もこの僕と全く同じ。一部の隊員はざわついている。ほんと見た目僕が話しているみたいだからね。



「ほんと遠藤3佐のお兄さんはそっくりですね。」

「まあね…ミラーツインとはいえ、1卵生だし…。」



と、照れ笑い。ほんと昔と違って真面目になったよね。春斗。昔はチャラチャラしてて、僕の嫌いなタイプだった。防医大に行って少し変わって、雅美と付き合いだして、結婚子供ができた途端、真面目になった。昔は性格までミラーだねって言われたけれど、今は見た目だけかな?



紙を見てしゃべっているとはいえ、しっかりとした口調で話している。これなら代議士になったとしても大丈夫だ。



 長い長い式典が終わり、観閲行進。僕の部隊はちょうど真ん中くらいかな?一番前の車両に部隊旗とともに乗る僕。運転手、旗を持つ隊員、そして僕ってこと。後ろには准尉とか先任曹長とかの車両があり、そして最新鋭の衛生車両一式となる。観閲行進開始の号令があり、一斉にエンジンをかける。普通科連隊や施設隊、通信隊、野戦病院の衛生隊。その後に僕の部隊である災害等医療援助隊。誘導係の隊員が旗を振り、発車。微妙な速度で揺れなく走らせる運転手。アナウンスで部隊の説明が行われている。そしてこの僕の名前も呼ばれる。



「部隊長、遠藤春希3等陸佐です。」



中央前で、号令をかけて観閲官へ敬礼。観閲官の後ろあたりに養父が見えたりしてちょっと緊張した。



 何とか式典の出番が終わると、すぐ着替えに走る。迷彩服では記念会食へは出ることができないしね。礼装だから時間もかかるし…。ささっと着替えて訓練展示中の式典会場へ向かう。そして何もなかったかのように美里の横へ座る。



「お疲れ!遠藤。かっこよかったよ。」



と、いつものように雅美が声をかけた。



「途中、ちょっとよろけたでしょ?」

「ん?そんなとこまで見えたの?ちょっと運転手がね…。」

「ま、中央を通り過ぎた後だからよかったけど、観閲官の前で体制崩したら笑い物だったよね。」



と雅美がいろいろ突っ込む。それを見て笑いをこらえる美里。



「あ、2個目の国際派遣防衛記念章ね。いいよね。私は1個だけど。」



そういうところをちゃんと見ている雅美。2回目の海外派遣だからね。昨日貰ったとこなんだよね。



訓練展示を見ながら、色々話す。こそっと美里と手をつないでみる。



「大丈夫?暑くない?おなか大丈夫?」

「うん。大丈夫。雅美さんがいるから大丈夫。ずっと雅美さん、私に声をかけてくれていたし。雅美さんも妊婦さんだよ。」

「雅美はあと生まれるのを待つだけだし、美里はまだ安定期に入っていないし…。」



というと微笑む美里。ま、顔色とか見てたら、大丈夫だとはわかる。でも声をかけたいのはほんとに心配しているから。いつもは単身赴任だから、一緒にいるときくらいはいっぱい声をかけたいと思うからで。その光景を見ながら微笑む養母と雅美。あと半日で、またいつものように一人暮らしが始まるんだもの。たとえ1分、1秒でも長くいたいと思うのは当たり前かな?