ミラー! (95)僕の新たな目標 | 超自己満足的自己表現

ミラー! (95)僕の新たな目標

 ふといろいろこれからのことについて情報収集をしていて気がついた。医学部って本当にお金がかかる。普通の学部の3倍以上。本当、養父にお金を使わせてもいいんだろうか。父さんだってお金のことは気にするなっていっていたけれど、予想以上の授業料に愕然とした。



僕が志望している東大、慶大、慈恵会以外は年間数千万円。志望校は400万弱。それの6倍。最低でも6年間に3000万円かかるという計算だ・・・。それに引き換え、自治医科大学、産業医科大学、防衛医科大学校は学費が無料だったり安かったり・・・。まあ卒業後、9年間自由に職場を選ぶことが出来ないというんだけど・・・。特に防衛医科大学校は特別職国家公務員とされているからか、在学中も10万ちょっとの給料が出る。そういや弐條のおじいちゃんは防衛大学校出だ。一応聞いてみようかな・・・。


 期末試験が終わり、恒例の親との3者面談。そろそろ志望校を確定しなければならない。まだ2年だけど、早ければあと1年ちょっとで推薦試験とかが始まるからね。今のうちに決めて、準備しないといけないのだろう。今日はわざわざお父さんが外務省を抜けてやってきた。


「お久しぶりです。玉城先生。」
「久しぶりだね、遠藤君。どう?代議士生活は?」
「そうですねえ・・・もう長いですから・・・。ホントこの学校は変わりませんね。相変わらずな男子校のままですし・・・。」


などと、思い出話から入る。はあ・・・どうでもいいだろ・・・。主役はこの僕なんだ・・・。僕の実父の話にまで至る。


「で、春希の成績のほうは・・・?先日統一模試があったと思いますが。そろそろ結果が・・・。」


始まったか・・・。ハゲ玉は、結果の書かれた用紙を取り出す。


「春希君は今まででの最高成績でしたよ。全国3位です。うちの高校が2位3位ですからね。」


といって、教師用の全国ランクが書かれた表を取り出す。2位は春斗・・・。カタカナで書かれた苗字に学校名、受験番号が記されていて、全教科の得点が書かれている。


「1位は相変わらず灘高ですね・・・。そういや美濃は万年1位か2位だった。」
「そうそう!美濃はああ見えてとてつもない秀才だった。やはり遺伝はすごいと思うよ。息子二人とも秀才だからね。さ、本題に移りましょうかねえ・・・で、遠藤君は確か医学部志望だったね。」
「はい・・・。」
「で。今日までに受験する学校を調べて来いって言ったが・・・。決めてきたか?」
「はい・・・でもお父さんにはいっていないから・・・。」


お父さんはこの僕を覗き込んだ。


「一応例年の受験日データから調べたり、学費とか・・・そういう面から・・・調べてみたんですけど・・・。きっと先生も、お父さんも予想していない大学が・・・。」
「春希、言ってみなさい。学費に関しては心配しなくていいといっていたが?もちろん東大がメインだろ?」


僕は首を振る。


「じゃあ、どこがメインだ?」


と先生も覗き込んだ。


「防医大・・・です・・・。」
「はあ?」


とお父さんも先生も声を揃えていった。


「ちょっと待て!お前の成績だったら、今まで言っていた慶應だって、慈恵会だって、東大だって楽勝なはず・・・。慶應の指定校推薦だって可能だぞ。それを防衛医科大学校だって???どうしてだ?他は?」


「自治医科大学、産業医科大学・・・以上です。」


お父さんも開いた口がふさがらなかった。


「春希、防医大はな、自衛隊と同等の訓練もあるんだぞ。お前の体力と視力でいけると思うか?」
「でも昔に比べて体力はあるし、視力は手術して今は一応裸眼の最低視力内だし・・・。防医大も、自治医大も、産業医大も、学費の面から考えて、親に負担がかからないし・・・。全寮制だから、誘惑とかもないし・・・。特に防医大は在学中から給料がもらえるし・・・。もちろん、東大も、慶大も、慈恵会も受けますけど・・・。」
「はあ・・・春希、お前はどうしていつもそう遠慮ばかりする?お金は心配するなといっただろう?お前の実父も同じことを言っていたはずだ。どうしてそう制約がある大学ばかり・・・。」
「そうだよ遠藤。せっかくお父さんが高い学費を出してくれるというんだから・・・もう一度考え直してきなさい。いいね?」
「わかりました・・・。」


別に僕の人生・・・どの大学へ行こうとも勝手だと思うんだけど・・・。僕は親に負担をかけさせたくはないと思ったから・・・。今までいろいろ医療費とかで負担をかけさせすぎだし、こうして幼稚園からずっと私学だし・・・。大学くらいはお金が余りかからないところへ行きたかった。ただそれだけなんだけどなあ・・・。



でもひとついえるのは、僕は人から与えられた命。医療が発達していなければ、この世にいなかったかもしれない命。だから僕はたくさんの人の命を助けたい。特に子供の命をね。