〝すみません〟より〝ありがとう〟といえるひとになりたい。
と。私は思っている。


誰かにちょっとした思いやりを受けたとき。
たとえば道を譲ってもらうとか。届かない物を取ってもらうとか。
レストランでグラスに水を注いでもらうとか。そういうときには。
〝すみません〟よりも〝ありがとう〟のほうが適していると思う。

〝ありがとう〟はとても美しい言葉だ。
〝すみません〟よりも、多分。ずっと。


先日、スクレ・サレにお邪魔した。
荒木町にあるこの小さなレストランは。
以前から複数の友人のあいだで話題になっていた。
どの料理もおいしい。ポーションが極めて大きい。コストパフォーマンスがいい。そんなふうに。


ここでスクレ・サレの料理の。その素晴らしさについて述べるのは辞めておこう。

とにもかくにも。行ってみないとはじまらないと思うから。
ただ少なくともはじめてお邪魔したその日に。

次に来店する予約をした、それくらいに私はスクレ・サレに満足をした。


明るいオレンジ色の壁。白のモールディング。テラコッタの床。
南欧の設えは今夜の気分を明るく華やげる。
テーブルのサイズも。テーブルとテーブルの距離も的確に配される。
それは今夜の食事を共にするひとと。ひとたちへの配慮にほかならない。


そう。スクレ・サレはそうした配慮が行き届いたレストラン。
見過ごしてしまうくらいの配慮が。自然に。たくさん詰まっている。


だから私はこのお店で。
たくさんの〝ありがとう〟を伝えることになる。その夜。

そうして私の〝ありがとうございます〟に対して。
このお店のメーテルドテル(と呼んでいいのだろうか)の男性は。
必ず〝どういたしまして〟と答える。


〝どういたしまして〟


このさりげなくあたたかくつつましやかな言葉が自然に出てくるひとを。
私はそんなにも知らない。


そうしてこの方の〝どういたしまして〟を聴くたびに。
ああ、このスクレ・サレのよさは。その深さは。
こういう気持ちの積み重ねのうえに成り立っているのだと。
私は深く思うのだ。


#スクレ・サレ[荒木町]


そしてこの素敵なお店を紹介してくださったかたへ。
いつもありがとうございます。たくさんの感謝を。