2012/09/10

介護通信 2012年9月9日

認知症ワンポイントアドバイス1
海馬の萎縮がないアルツハイマー型認知症

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9月3日から4日にかけて1日アクセス数が1240という新記録を達成しました。おそらく9月3日に登場したLewy-Pick complexについて何度もお読みかえしていただいているのではないかと想像しています。ありがとうございます。

海馬は側頭葉の内側にあり、大脳の底面に位置しますが、この部位も表面ではあるので皮質(饅頭の皮にあたる)です。皮質のなかでも古皮質といいヒトの進化の以前からあったものです。記憶の出入り口と言われ、短期記憶を保存していますが、重要でない記憶はやがて消され、重要な記憶は新皮質で保存されます。

アルツハイマー型認知症は海馬の萎縮が強いから記銘(覚え込むこと)が弱いと説明されますが、海馬萎縮の少ない患者もいます。記憶のメカニズムは、いまだに謎が多く海馬の神経細胞数だけでは説明がつかないのです。ただし、その場合(海馬萎縮が少ない)も必ずといってよいほど頭頂葉(新皮質、進化で増大した部位)は萎縮していますから、それが診断のポイントになります。

スライドの患者は、レビー小体型認知症や前頭側頭葉変性症が否定され、改訂長谷川式スケール(16.5点)では遅延再生が1/6であり迷子の既往があるのでアルツハイマー型認知症です。しかし海馬萎縮は軽いです。アルツハイマーらしくない点は、長考すること。これは皮質下認知症と言ってパーキンソン病認知症(PDD)に多いパターンです(アルツハイマーは皮質認知症)。

この患者は、アルツハイマーとの生前鑑別が困難な神経原線維変化型老年認知症(SD-NFT)などの可能性は否定できませんが、治療薬はないのでアルツハイマー扱いの治療手段をとるしかないです。

また、この方は母親がパーキンソン病(86歳)で、本人も昔から寝言があり夜中にむくっと起き上がることがあるため、長考も含めてレビー小体型認知症のニュアンスがかすかに感じられますが、前頭葉萎縮がないため今のところアルツハイマーとするしかないです。

フェルガードが実名で医学会誌総説に紹介された

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認知症の正しい治療への道が、また一歩開かれた。日本におけるアルツハイマーワクチンの第一人者、田平武教授(順天堂大学大学院)がこのたび総説の中でフェルガードを紹介した。

健康補助食品だというだけで、それを無視し患者の治療選択肢を拡大しようとしない医師が多い中で、学会誌なら信じるという医師には説得力十分と思われる。かかりつけ医にフェルガードを認めてもらいたい患者は、この紙面のコピーを持参すればよいのではないだろうか。

田平先生が参考文献として挙げたのは、Kimura T(木村武実、国立菊池病院)らによる英文論文である。Kimura T et al.: Geriatr Gerontol Int 11(3): 309-314, 2011.

Lewy-Pick complexの話題
4例目の認定きまる。

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名古屋フォレストクリニックで確定したLPCは現在まで5例。今回は第4例を紹介するが、全員女性である。わずか5例なので偶然なのであろう。

改訂長谷川式スケールは7であり、7点以下なのでピックスコアに1点加算される。診察の最初に右手で左肩をたたいてもらったときはできたが、診察の最後にもう一度同じ指示をしたところ、スライドのようにできなかった。(こういうことはよくあるので、意味性認知症を疑う患者には2回させたほうがよい)。学習してできるようになることはあるだろうが、この方は最初ができて2回目ができないので学習は関係ない。

昔の顔写真を見せてもらったが、いまはびっくり眼(まなこ)になっており、かなり顔貌の変化がある。これも前頭葉症状の一種。サルも木から落ちる、の意味を聞くと「すべる」と答えた。弘法も筆の、の続きを聞いたら「こうぼ ふれ?」と聞きなおした。これは復唱困難というより語義失語と思われた。

CTでは、海馬萎縮がきわめて軽くアルツハイマーの可能性が遠のいてゆく。側面から観ると前頭葉も頭頂葉も萎縮が強い。朝顔の蕾は軽く、眼窩面萎縮はない。画像的には前頭側頭葉変性症(FTLD)の説得力に欠ける。しかしピックスコアをちゃんと取ると、8点と高得点であった。不機嫌(1)、二度童(1)、語義失語(2)、盗食(2)、甘いもの好き(0.5)、スイッチが入ったように怒り止まらなくなる(1)、CT所見(0.5)と判断した。4点以上の患者はほとんど前頭側頭葉変性症(FTLD)であることがわかっている。ここで当症は前頭側頭葉変性症が確定した(臨床診断なので)。

ところが、娘さんに確認すると幻視があるという。歯車現象は両肘にかすかにある。レビースコアも取ることにした。7.5点だったのでレビーも確定的である。幻視(2)、意識消失発作(0.5)、寝言(1)、嚥下障害(1)、まじめな性格(1)、嗜眠(1)、歯車現象(弱いので0.5),前傾姿勢になりやすい(0.5)である。レビースコアが2.5以上だとほとんどアルツハイマーが否定できる。

当症をLPCと認定した。処方は、リバスタッチパッチ、抑肝散2.5g(夕)とした。その後5人目も認定したが、やはり女性であった。4人目、5人目の年齢は72歳、74歳である。

アルツハイマー型認知症の話題(1)
ふつうはあきらめる経過でも低用量カクテルで行こう

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悪化したら用量を増やすしかないと思っている医師に伝えたい症例がある。最初はアリセプト5mgで効果があったが、初診から2年半で改訂長谷川式スケールが急激に落ち、便失禁、車イスになったら医師もあせる。

アリセプト8mgで みきりをつけてメマリー併用、レミニールへの変更といろいろやってみて、家族も冷静に用量を判断した結果、二剤とも最低用量が一番よいという結論。ついにメマリー5mgとレミニール内用液4mgでカチンと鍵穴と鍵がはまった瞬間である。レミニールがADLを上げると言うことを体現できた症例でもあった。内用液の使用は、以前ブログで説明したようにレセプトで1日4mgを通すためである(g単位薬価なので)。

コウノメソッドは、あきらめないをモットーに長期戦を戦える手法を考案中である。この方は、2年前にNewフェルガード×3にも反応しなかった方である。Newフェルガードにも反応しない症例はどうしても3割存在する。神経細胞死を阻止する可能性のあるメマリーとレミニールは長期戦向きなのかもしれない。とにかく副作用が出ない用量で辛抱強く飲ませるのもいいかもしれない。

リバスタッチパッチの話題(1)vs DLB
やはりDLBの第一選択はリバスタッチパッチなのか

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歯車現象が強く、幻覚も常時ある。気分はいらいらしており腰痛もある。夜は大声で叫ぶ。非常に難しい患者で1年3か月苦労したが、著効したときは感激した娘さんがわざわざメールをくれたほどだった。

アルマール、ヒデルギン、メネシットは合わず、特異体質だった。メネシットはコウノメソッドの第一選択薬だが、この方は服用により副作用で何もできなくなったという。

ロキソニン2錠でも腰痛はとれなかったので心因性腰痛と読んでサインバルタを投入したところ、大当たりだった。姿勢までよくなった。

もはや、パーキンソニズムの強いこの方にドネペジルの選択肢はなく、海外でPDD(パーキンソン認知症)に適応が通っているリバスタッチを90日解禁を機に処方したのは当然だった。7月は14枚しか出せなかったので、半分に切って28日間もたせた。娘からのメールはその8日後だったので、リバスタッチ2.25mgですぐに著効したことになる。

リバスタッチは薬剤過敏性のレビーに強力な援軍となるのか。1000例の使用経験を早く達成して処方戦略を確立してゆきたい。コウノメソッド2013には、結論が出ているはずである。実践医からリバスタッチで傾眠が出たと言う報告が入っている。その頻度もつかみたいところである。

なお、当症へのサインバルタの投入は、うつ状態改善を目的とはしておらず、メソッドでは心因性腰痛だけへの使用を許可している。引き続きうつ状態には症例を絞ってジェイゾロフトをまず選んでいただきたい。なお、レビーへのレメロン・リフレックスの使用は引き続き禁忌である(一時的に廃人化した症例あり)。

リバスタッチパッチの話題(2)改善者プロフィール
3日間で6名の中等度改善が出た

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先に紹介した3748症例を含めて3日間の外来で合計6名が、介護者から間違いなくリバスタッチの効果であると判定された中等度改善(かなりよい)と認められた。

5名がレビー小体型認知症である。私は、レビー中心にリバスタッチを処方しているので、アルツハイマーに効かないということではなく処方対象が圧倒的にレビーなので当然改善者はレビーが多い。しかし、印象としてはレビーに合うと言う感触がある。

メマリーの話題(1)ピック病における遅発性効果
メマリーが1年後に効いてきた可能性がある症例

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直ちには信じがたい症例である。脳萎縮は軽いが重度のピック病で改訂長谷川式スケール0、ほぼオウム返ししかできない方である。初診は平成21年2月で、3年半診てきた。初診時から改訂長谷川式スケール0である。

最近は脳萎縮の進行のせいか痩せてきたが、反応がよく初めての歌も歌詞を読んで正確に歌えるようになり、それも毎月いっそう改善していると言う状況である。メマリー低用量が神経細胞死を防ぎ続けた結果、1年でバイパスが形成されてきたという印象を受けた。

認知症ではなく統合失調症ではないかと思われるかもしれないが、現在抑制系は不要であり、あくまでもピック病第3期としか説明がつかない症例である。いつもウンとしか答えないので、ハーイと言ってくださいと促すと子供のように大声で「ハーイ」と答え、まさに二度童(わらべ)である。

メマリーの話題(2)ピックミックスにおける遅発性効果
メマリー低用量維持療法(5mg)の効果、ぞくぞく。

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2年半診てきたピックミックスである。初診時の改訂長谷川式スケールが5なので初めから重症だった。最初はレビーを疑っていてニコリン注射を試みたときはハイテンションになったことがある。そのとき妄想も誘発された。最近では、診断はピック病+腦血管性認知症と決着している。歯車現象はない。

落ち着きがないので抑制系も必要だが、高齢で弱ってきてもいるのでフェルガード100Mで継続させてはいるが、家族と相談してメマリーの適量を探ってきた結果5mgがベストとわかり、ちょうどメマリー開始から1年後から活気があり歩きっぷりはすたすたと若々しく、過去に転んで肋骨したとは思えないほどになった。

写真は、Vサインをお願いしたが語義失語のためにわからなかったところである。Lewy-Pick complexである可能性は否定できていない。

ピック病の話題(1)
フェルガード100Mを増やしたら感激の嵐

65歳男性。改訂長谷川式スケール0、無言症で同じ言葉しか発しない頑強な患者である。施設にいて、ウインタミン75mg、セルシン6mgのかなり強い抑制系でちょうどいいのであるが、フェルガード100M×1でかなり改善してウッドデッキから出ようとする行為はなくなっていた。

言葉の数が減ってきていたので8月初旬に奥さんにフェルガード100Mを2本に増やすことはできないか提案した。仕事があるので1か月に1度しか来ない奥さんが、自動車で夫を喫茶店に連れだしたときのことである(1か月後)。

喫茶店で患者はゴルフスイングの真似をしたので奥さんは驚いた。ここ3年そのようなことはありえなかったからである。さて、施設に戻る途中、とにかく田舎なので奥さんは二方向に分かれた道で、どちらに行くべきかに迷った。独り言で「どちらかなあ」とつぶやくと夫は、施設のある方向を指さしてくれ、そのとおり、その先に施設があった。ピック病は道に迷わないとはいうが、第3期でこれだけの判断力を持つと言うことは、ふつう考えられないことであった。

最近は奥さんの顔も忘れかけていたが、その日面会するとアッと叫んでわかった顔をしてくれたことがうれしくて、奥さんは胸が熱くなったと感想を述べておられた。長期戦に強いコウノメソッドならいつまでも夫婦の愛情をつなぎとめておくことができる。

先週土曜にもピック病の奥さんが非常によくなって、夫が大学の同窓会(夫婦同伴)に出席し、皆からよくなったねえと驚かれ、外来では先生と妻が一緒の写真をとらせてほしいと夫に言われた。医師として本当にうれしいことである。認知症は世間では治らないと言われているだけに、改善したときの周囲の喜びは筆舌につくしがたい感動がある。改善患者を往診した実践医も家族に感激されて自分の車が見えなくなるまで頭を下げられたと報告してくれたことがある。多くの患者さんから学んで構築されてきたコウノメソッドは、必ず次の患者さんを救ってくれる。医師はただ、それを実践する決断さえすればいいのである。

認知症ワンポイントアドバイス2
パーキンソン病

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この方は、私の診断はレビー小体型認知症(改訂長谷川式スケール16)であるが、典型的なパーキンソン病の歩き方なので、パーキンソン病を勉強できる症例として紹介する。79歳男性で施設入所者である。

パーキンソン病は、両足の幅を閉じて歩くのが特徴であり、wide baseを示す疾患(正常圧水頭症、腦血管性認知症)とは対照的である。前弯が強く、当然両腕のアームスウィングも消失している。筋肉が固いので肘は常に曲げていて、高度だとこの方のように両手は真横でなく前にきている。一般的にレビー小体型認知症の中間像ではここまではいかない。

パーキンソン歩行は非常に不思議であり、狭い場所を歩くときや曲がる時には恐ろしく足が出なくて小刻みになるが、広い場所や気分がリラックスしているとずんずん大股で歩けるのである。丸太をまたげ、というとまたげるのである。非常にメンタル的に影響を受けやすい。

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レビー小体型認知症の中間例では、このような歩行ではなく、足を閉じていることもないし、メンタルで歩行が悪化するということはない。パーキンソンタイプからアルツハイマータイプまでさまざまだが、総体的にパーキンソン病との共通点はアームスイングがないこと、表情が硬いことくらいしかない。おもしろいことは、レビーでよく左右後に傾く人がいるが、パーキンソン病は絶対に前弯しかおきないと私は感じている。

レビー小体型認知症の話題(1)
神経内科の「デビルメソッド」炸裂。修復に1年9か月。

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デビルメソッドとは奈良県の医師が考えた言葉である。悪魔のような、患者をよけい悪化させるような処方の意味で、それを行うのはほとんどが専門医(神経内科、精神科)である。とくにレビー小体型認知症に対して神経内科医がアリセプト5-10mg、パーキンソン病治療薬3-4種、抗うつ薬を出す場合を私は「パニック処方」と呼んでいる。

また、精神科がレビー小体型認知症に対して、リスパダールとアリセプト5-10mgを出すのは「ドパミン阻害ダブルバーガー」と言ってもよいし、一般開業医でもよくやるのが、メマリー20mg+アリセプト10mgというのが「メガ盛りあんぽんたん処方」なんてのもある。後者は、副作用が出ていなくて患者にメリットがあるなら問題はないが、効いていないならいたずらに医療費を釣り上げるお勧めできない処方である。

この方は、初診時は激しい振戦で口も目も痙攣しており、改訂長谷川式スケールを行うどころではなかった。大学病院の神経内科は、ここまで悪くさせるのだと感心した。幻覚もひどく随分苦労してきたが、ついに1年9か月で振戦は完全に止まった。結局パーキンソン病治療薬はコウノメソッドのほうが多く出しているわけで、それでも妄想、幻視がゼロというのはいったいどういうことかというと、結局アリセプトがすべてを壊していたということがよくわかる。

このような症例をいやというほど報告してきたが、専門医はいっこうにアリセプトをやめず、また少量投与もせず毒を毒で制する処方を続けている。なんども言うが、コウノメソッド実践医は、専門医が出すアリセプトを減量ないし中止させる目的で全国に配置しているようなものだ。

仮に、このブログを読んでも医師たちは「先生の講演(肉声)を聞くまでは、やはり減量の勇気が持てなかった」という声も聴いており、やはり講演しないといけないと考えている。講演を聞くと多くの医師は翌日からすんなりメソッドを始めてくれるものである。DVDも製作したが、それだけでもダメなようだ。

認知症の急増をNHK夜7時のニュースで報道 9月5日

NHKが夜7時のニュースで認知症の急増に備えて厚労省が新たな5か年戦略を打ち出したことを報道した。早期発見とかかりつけ医の研修が大事という二点である。非常に怒りっぽかったおじいさんが訪問看護師による早期発見で治療を開始したために穏やかになって、その後認知症症状はめだたないという例が紹介されていた。
しかし、せっかく早期発見してもアリセプトを処方されたら、それとは逆になっていたであろう。大事なことは、早期発見+コウノメソッドである。肩書きだけの講師を採用するとかえって大変なことになる。実践医の報告によると東北で有名な神経内科医が「メガ盛りあんぽんたん処方」を推奨していたので、その自信ありげな話しぶりには困惑したと言う。

誰も認知症を診られない地域で奮闘しています

河野先生はじめまして。
私は消化器内科が専門で、父から継承の開業医となり今年で6年目です。ずっと認知症は治らないものと思い込んでいましたが、最近先生の本やブログを読んで全く認識が変わりました。これからの当院の診療の柱として認知症診断、治療に取り組んでいくつもりです。

コウノメソッド実践医通信 関東の実践医より

河野先生こんばんは。
今日は私にとってコウノメソッド初の改善例を経験しました。往診先の認知症ほぼ寝たきり80代男性、アリセプト5mg長期投与も効いている様子がなく、レミニールで薬疹あり、Newフェルガードを1ヶ月前から投与。

この頃は全く発語なく会話にならなかったのに、訪問看護師の問いかけに「何ともありません」とはっきり返答。簡単な会話が出来るようになり奥さんもビックリしていました。効くとは聞いていましたが実際に目の当たりにすると感激です。さらに改善を目指してサアミオンとニコリンH注射も始めました。

Lewy-Pick complex疑の患者がいる。実践医からメール

河野先生こんばんは。昨日ご教示頂いたピック疑いの患者さんですが、ピックスコアは易怒、左右差、強い前頭部萎縮、失語(ことわざ2つともわからず)で5点。しかしレビースコアも妄想、叫び、むせ、嗜眠、左に軽度歯車現象で7点あり、朝は夢の続きで寝ぼけて機嫌が悪いそうです。今回のブログのレビー・ピック複合かなと疑っています。ひとまずウインタミンとフェルガード100Mで様子を見たいと思います。

別の症例です。78歳女性。8年前から原因不明の背部痛や口腔内心身症で心療内科通院中。パキシル10mg、ジプレキサ1%0.1g、ハルシオン0.25mg、デパス0.5mg分3内服中。いつも暗い表情で不定愁訴が多い。最近忘れっぽい自覚あり。

長谷川式は2年前29点で今回25点。遅延再生5点、数位関係3点。レビースコア4点で、かなり大きな寝言、日中の嗜眠、頭部と左手に軽い振戦あり。
歯車現象なし。腕をあまり振らずに歩く。ピックらしさはなし。FTLD検出テストは満点ですが、CTでは前頭葉の萎縮が目立ち、ピック切痕と眼窩面の萎縮もあります。これはフロンタルレビーでしょうか?心療内科の薬は中止すべきでしょうか?ご意見お願いいたします。

ドクターコウノ回答

1)LPCの可能性はありますね。
2)ずばりフロンタルレビーですね。抗うつ薬を全廃するのは危険ですから、パキシルをジェイゾロフトにかえて、ニコリンH1000mg毎月、
リバスタッチパッチ開始でどうでしょうか。陽性症状がなければジプレキサは中止。抑肝散(夕)開始はどうでしょう。

Lewy-Pick complex 談義(ドクターコウノ VS 関東実践医)
関東実践医(1)

こんばんは 河野先生。新疾患概念の確立、おめでとうございます。まさに先生の卓越するデータ解析力の賜物。
例えば、歯車無し 幻視無し・寝言あり 嗜眠傾向ありニコリン著効、レビースコア4点、診察拒否傾向 語性常同あり シャドーイングあり、前頭葉萎縮ありピックスコア3点。このような症例は従来通りピックタイプのレビーと診断して良いのでしょうか?御教授の程 宜しくお願いします

ドクターコウノ(1)
純粋な前頭側頭葉変性症(FTLD)でニコリン著効ということは考えにくいので、まずレビー小体型認知症は確実でしょう。レビーでFTDの萎縮がなく、大声で叫ぶような問題児をピックタイプと呼んでいました。これは原則レビー小体型認知症のことです。レビーで常同はおきないので、先生の指摘する症例は、スコアが低すぎるきらいはありますがLPCにぎりぎり入りそうですね。

関東実践医(2)
おはようございます河野先生。昨晩 遅くまで LPCの概念を反芻していましたが・・・先生がレビーとして外来経過観察されていて膝コスリ等の常同が認められるようになった症例がありましたが、従来「レビーのピック化」としていた症例は 常同等が認められた時点でLPCと診断して宜しいのでしょうか。

ドクターコウノ(2)
そうでしょうね。ただ、患者のだれもかれも LPCだと言い出すと 病名に権威がなくなるので(笑)。とりあえず各医師の胸の中でLPCと思っておくといいでしょうね。そうすれば、外来で病名に迷い続ける必要はないですから。ストレスなくなるでしょ?

関東実践医(3)
おっしゃる通りです河野先生。
またまた、先生が以前から指摘されていた「フロンタルレビー」に今更ながら 感心しております。フロンタルレビーはLPCの前段階として さらに重視しなければいけないですよね?先生のお蔭で認知症分類の「政界再編」ははやまりそうですね。

セロクエル後発品12.5mg発売認可!クエチアピン「アメル」共和薬品

コウノメソッドに欠かせない低用量が、動き出した。このたび、セロクエルの最低用量25mg錠のさらに半分に値する錠剤が12月初旬に発売されることになった。この低用量錠剤を販売できるのは共和薬品工業(大阪)だけである。

セロクエルは、コウノメソッドにおける重要な抑制系の第二選択であり、名古屋フォレストクリニックでは睡眠薬の効きが悪い時に細粒10mgを追加するため、苦労して調剤していたが、これで調剤が不要になった。

コウノメソッド2013ではセロクエルに関しては、認可に向けての会社の努力、患者を思う姿勢を高く評価し、共和薬品を指定会社とすることを決定した。実践医においてもその姿勢を伝達してゆく。

認知症の犬に対するフェルガード100Mの給与試験

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1年前に獣医が認知症の父親を連れてきて、オヤジにフェルガードを飲ませたいという相談を受けた。なぜフェルガードを知っているのか聞くと、自分は獣医だが、老犬でぼけ症状がでてきたときにフェルガードD(犬用フェルガード)を飲ませると治るという発表は、獣医なら誰でも知っているとおっしゃったので驚いた記憶がある。

このたび、研究論文がCLINIC NOTE 2012 Sepに掲載されたので紹介する。著者は、岡本真一路、井本史夫、三浦あかねの三獣医師である。認知症スコアシートは、夜間中吠える(5点)、くるくる回る(5点)、糞便失禁(3点)、狭い場所を通り抜けようとする(3点)など17項目を採点し、フルスコアは53点になる。認知症レベルは、犬の年齢―9+スコア合計 で算出され、10点以上重度、9-6点中等度、5点以下軽度と判定する。

報告された3例は、14歳パグ(18点重度)、14歳雑種(13点重度)、14歳テリア系(22点重度)であり、フェルガード100Mを1回0.5包×2給与したという。スコアは、250日、180日、270日後の判定で18→10、13→5、22→17と改善した。

なかでもテリア系は、幼少期よりてんかん発作があって、フェノバルビタール処方を受けていたが、フェルガード100Mによって年間数回の重責発作がなくなり軽発作だけになったという。ヒトにも効果が期待できそうだ。

フェルガード100M1日1本ということは1か月のコストは3150円である。夜中に哭かれて近所から苦情が来たり飼い主が寝られなかったり、孫が受験勉強できないなどということが解消できるなら高くはないと思うがいかがであろうか。(受験生自身が飲んだら頭がよくなるかどうかという質問に関しては倫理上ここでは回答できない、各自の判断にまかせる)犬論文の請求はグロービアまで。電話03-5540-8975

コウノメソッド実践医の標榜。尼崎の小川節郎先生が開始。

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実践医であることを証明するステッカーや認定証を現在作成中であるが、戸外の看板にメソッドの記入をしてくれたのは、小川先生が全国で初めてではないかと思う。小川先生の許可を得てここに写真で紹介する。

進む関東、関西の整備。実践医3名(横浜、松戸、京都)誕生。

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秋刀魚の生活2
抗うつ薬が効かないおばあさん

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84才のおばあさんが来ました。おいしゃさんから2しゅるいのぼけのくすりとうつ病のくすりが出ていてよくならないそうです。パニックしょほうですね。

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さて、このおばあさんはあるつはいまーでしょうか。CTをみるとあさがおのつぼみみたいだねえ。左右のいしゅくにもさがあるようだぞ!(正解は巻末)

サーモンは前菜に欠かせない

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サーモンの料理は、カルパッチョ、マリネ、ムニエル、スモーク、バター焼きなどがあるが、最近はコース料理の前菜に欠かせないようだ。信州サーモンと言ってニジマスとブラウントラウトの交配から生まれた新種の食材も開発されている。

私が小学生のころは、新巻鮭といってめちゃくちゃ塩分が強く父が苦労して太い骨を切り落としていたのを思い出す。弁当のおかずにはよく入っていたものである。その後日本では冷蔵庫が普及したために、塩漬けする必要がなくなり塩による粘膜の刺激で多く発生していた胃がんも減ったというわけである。

この5年で急激に増えたのが男性のがん2位に躍り出た前立腺がんであるが、健診の血清PSAの評価がどうも二分されていて、最新情報(讀賣新聞朝刊平成24年9月4日)ではPSA健診をやっても死亡率は減らなかったということである。私の知る医師はPSAがまったく上がらないタイプの前立腺がんで命を落とした。かといって自分はPSAを調べないというふうには思わないが。

高倉健伝説!毎日理髪店へ行く

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映画の宣伝ということもあって、最近よく健さんの姿をテレビで見かける。NHKプロフェッショナルが彼を取り上げて、日常生活に密着していた。あの健さんがよく映させたなあという感想である。驚いたのは、行きつけの理髪店に毎日行くと言うことである。健さん用になってしまった個室があり、普段着も置いてある。自宅にFAXがないからこの部屋から出すそうである!

我が家では「健さんカツラ説」が飛び交っていたが違っていた。それにしても毎日1mmくらいしか伸びていないだろうからカットするのは大変だろうなと思った。自分の長髪姿なぞ絶対に想像できない、許せない潔癖な性格なのだろうが、ほとんど人と接触することがなくて人恋しさに理髪店にくるのではないかと思える。「ここでしゃべくって安心して」と本音をもらす。

朝食はナッツのたっぷり入ったシリアルにヨーグルトを食べ、昼食は食べない。体重を絶対に70kgを超さないようにしている。太ると顔がくずれるからだという。81歳と言えば、すでに日本人男性の平均寿命を越している。今年のカナダの映画祭では会場の聴衆が80代だと聞いて驚いたと言う。

自分はプロだと強力に認識しているが、街角で一般の人に指さされるのを極度に嫌う。本当に不器用ならセリフなど覚えられるはずもない。しかし私は健さんはやはり不器用な人ではないかと感じる。嘘を言う人とは絶対に付き合えない人だ。新幹線のグリーン車には、タレントを見て騒ぐ人間は乗っていない。もし騒ぐのならその人はグリーン車にふさわしい人間ではない。

10年ほど前だったろうか、新幹線が京都駅に着くと同じ車両に乗っていた健さんが立ち上がった。背が高くて全身黒ずくめの装い。ヒューゴボスの紙袋を持ち、何やら初老の男性と別れの挨拶をしていたのだが、よくしゃべるし腰の低い人だなあと思った。

ヒューゴボスは黒を基調とするドイツの紳士服で、先代はナチス親衛隊、ナチス突撃隊、ヒトラー・ユーゲントの有名な黒や茶の制服の製造を手がけたぞうだ。ドイツだからやはり硬派の男性が魅せられるのだろう。というわけで、次の戦車コーナーに話を移していこう。

シリーズ 戦車長の雄姿 ドイツタイガー1後期型304号車

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戦車長たるもの、勇敢で知的な作戦を遂行すべく、他の乗組員(3-4名)や友軍戦車の生命をも左右する冷静で敏速な判断を必要とされる。不況にあえぐ日本をかじ取りする首相、認知症対策を推進するトップの人間にこの戦車長の姿を投影してしまう。

戦車長の判断ミスは、味方の大敗北へと結びつく。第二次世界大戦で、宣戦布告の米国への伝達が遅れた日本の外務省、レイテ沖海戦で勝利目前、謎の反転をした艦隊長、ミッドウェー海戦で空母4隻を犠牲にしてしまった艦隊長、戦後でいえば、ゆとり教育で日本を骨抜きにしてしまった男、死体硬膜移植によるヤコブ病や薬害エイズを蔓延させた厚生省、東北大震災をまったく予期できなかった地震予知連などなど、国の命運を握る次の首相はいった誰なのか。戦車長の姿を紹介しながら考えてゆく妙な新コーナーです。

ドイツ戦車は、全体として東部戦線でも西部戦線でも連合軍戦車より戦果を上げた。一例として、ノルマンディーで8月には6,000輌の連合軍戦車が1,400輌のドイツ軍戦車に対峙していたが、装甲、兵装、機動性の全てにおいて劣り、ドイツ軍戦車の3倍の損失を出した。しかしこの不利は空軍の優位によっておおむね帳消しにされた。

ソ連赤軍と西側連合軍の戦車生産台数を考慮すると、ティーガーIが敵より10倍の戦果を上げる必要があったが、いくつかの重戦車大隊は実際にこれを上回る戦果を上げ、例えばグロースドイッチュラント師団所属の隊は16.67倍の戦果を上げた。(インターネットより)タイガーは、ドイツ語でティーガーと発音するので表記が錯綜することをお断りしておく。

レクサスのフラッグシップ:LS600h 3cm延びて10月発売

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LSがフルモデルチェンジする。やはりフロントはスピンドルグリルとなり、車体は現行型とほぼ同じ大きさだが、3cm長くなる。レクサスがイメージしている次期LSのイメージカラーはシルバーのようだ。いよいよベンツとの一騎打ちの様相を呈してきた。ベンツは高速道路でトラブルをおこしていることはよく見るが、レクサスはほとんど見たことがない。

どうもレクサスは写真写りが悪い車で、チラシを見てもあまり感動しないことが多いのだが、実車を見るとほれぼれする。LSは非常に高額なので、私を含めてほとんどの人は一生乗れない車種であるが、財政的に高齢者になってからしか購入できないわけでやはり狭い路地を走るには目の老化したオーナーには、車体が大きすぎるという気がする。

LSに限らず、レクサスにはオーナーの高齢を想定して、異常な場所に停車したレクサスには車内の電話から呼びかけがあり、返答がない場合は自動的に救急車を呼んでくれる。また、通話で旅館の手配などもしてくれる。ナビ情報はリアルタイムに渋滞や事故の位置が示されるので、非常に安心感がある。

認知症ブログに週8000人が訪れています。

現在、毎週更新しています。同じ方が2回読んでいると仮定しても4000人のお役に立っているのではないかと思います。アクセスの多さは、日本の認知症治療の正常化へと直結しているものと信じ、できるだけ新しい情報をお届けするつもりです。

秋刀魚の生活2 正解 意味性認知症

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意味性認知症は改訂長谷川式スケールが3点の患者が多いです。なぜなら遅延再生課題の復唱しかできないから。この患者はさらに悪くて2点です。ピックスコアは6.5(二度童:イスまわし、語義失語、聞き直し、甘いもの好き、CT左右差、ナイフの刃)で典型的な意味性認知症です。

前医はパニック処方をしていてアルツハイマー型認知症と診断したようです。
20年来のかかりつけ医で、患者が途中から認知症となり中核症状薬をめいっぱい処方し、袋小路に入っていた様子です。とりあえずルボックスは絶対にだめです。Newフェルガード×2を推奨しました。

世の中の一般医が、この認知症ブログを偶然見るまで、意味性認知症の出題は永遠に続くでしょう。意味性認知症は前頭側頭葉変性症(FTLD)の一種であり、アセチルコリン仮説では説明されない疾患なのでアリセプトは原則効きません。またメマリー20mgは傾眠をおこす可能性があり、その副作用を十分理解した医師しか出してはいけません。ルボックスは禁忌です。

一生懸命、認知症にかかわろうという医師の姿勢は評価されるべきですが、患者の安全を守る義務がある以上無知では困ります。