彼にドキドキしたりしない。
見栄張って、格好つけたりもしない。
狂おしいような気持ちになったりもしない。
けれど疲れてベッドに沈む瞬間に、ぼんやり名前を呼ぶ。
まったく「素」の時間に会いたくなる。
全てを共有することは出来なくても、それでも出来そうな気持ちになる。
それは私の汚く愚かな部分さえ。
「愛してる」で正しいのか、依存心なのか微妙。
彼の機嫌とったりしない。
彼の理想に近付こうとしたりもしない。
彼の目に映る自分を誰かと比べたり、勝とうとしたりすることもない。
けれど彼が悲しい眼差しで一点を見つめるときは、そっと寄り添って手を握り、くだらない冗談を言う。
解決策を提示してあげることなんて、私にはとても出来ないから。
せめて、問題とは違う部分で少しでも笑顔を見せてくれたら嬉しい。
少しでも、救われる瞬間があってくれたら嬉しい。