『Get Out』

(原題: 『ゲットアウト』)

昨日のブログでも触れたけど、テキサスでの道中、途中で一泊した時に次の朝まで暇だったので、フラッと映画館に入って見た映画が衝撃的だった。こんな映画、観たことない!というほどびっくりしたので、ぜひ記録に残すためにも記事にしておきたいと思う。

 

低予算で製作されたにもかかわらず、『ジョン・ウィック』 などを抜いて1位に躍り出るほどの大人気のこの映画、“人種差別ホラー” という新しいジャンルだ、と言われているが、確かにこんな映画、今まで観たことないっていうか、いいのか?って思うほどの痛烈な社会風刺映画。

 

大人気のコメディアン、キー&ピールの片方であるジョーダン・ピールの監督デビュー作品でなので、コメディー的要素もすごく多く、ホラーというくくりなのに爆笑できるw もともと彼らは人種差別をネタのコメディーをよくやっていて、いろんな差別も笑いに変えて抗議というのが彼らのスタイルなんだと思うけど、黒人でない私としては、これ笑っていいのか?ってところもたくさんある。

 

ちなみにこれも日本未公開だったけど、ジョーダン・ピールが相方と一緒に主演した作品で、犯罪とは無縁の猫好きの男2人が誘拐された小猫の“キアヌ”を取り戻すため、 非情な殺し屋のフリをしてギャングの世界に足を踏み入れるというコメディー。

 

猫好きで、“黒人” らしくない男2人組の話。

この映画、猫好きにはたまらないし、爆笑ものだけど、1番すごいのがキアヌ・リーブスが猫の声でゲスト出演しているところw

キアヌ・リーブスのこういうとこが好きw

そして猫のキアヌが可愛すぎる・・。

夫婦そろって猫大好きのうちには、たまらない映画w

 

閑話休題w

 

アメリカでの大ヒットにもかかわらず、日本での公開は未定らしい。確かに、これも 『ムーンライト』 同様、社会背景や現状がわからないと、単なるホラーで終わってしまう映画なのだと思う。例えば、最初に主人公が白人の恋人の実家に行く前に、彼女の両親は自分が黒人であることを知ってるのか?と聞く。これはほんとにあるあるで、うちの夫も聞いてきたし、異人種と付き合う黒人の人たちは、たぶん全員聞くと思う。そして別の場面では、警察に彼はまったく関係ないのに身分証明書の提示を求められる、これもあるある、である。

 

そういう地味な差別は日常的だからこそ、誰か黒人が警察に殺されたりすると、日頃からの不満が爆発して暴動になったりする。そこをわからない私たち日本人は、なぜ暴動ばかりで話し合いで解決しないのか?とか思ったりしてしまう。もちろん、暴動を起こすのは一部の人間で、たいていの人は暴動では何も解決しないとわかっているけど、でも暴動する気持ちもわかる、という人も多い。

 

その点、かなり過激ではあるけど、暴動を起こすのではなく、差別を笑いにかえ、強烈な皮肉にしあげて人種差別にとことん抗議をしたこの映画はすごい。そして、この映画が1位になるアメリカって国も、やはりすごい、いろんな意味で。

 

ちなみに、この映画のラストシーンは最初計画されていたものと全く反対のものとなった。それをここで書いてしまうと最大のネタバレなので、ネタバレのあらすじ後に書こうと思う。もし、この当初のラストシーンであったら、さらにすごい風刺映画になったはずだけど、やりすぎな感じもするから、これでよかったのかな、とも。

 

日本語はないけど、プレビューを。

<あらすじ> ネタバレあり

カメラマンのクリスは、白人の恋人であるローズの実家に挨拶へ行く計画を立てていた。ローズは家族にクリスが黒人であることを言っていなかったことを心配していたなクリスだが、ローズは 、自分の家族は人種差別者じゃない、歓迎してくれるはずだ、とクリスをなだめる。

 

ニューヨークの高級住宅街にあるローズの実家へ向かう途中、飛び出してきた鹿を引いてしまったローズ。事故現場に白人の警官がやってくるが、クリスに横柄な態度を取り、身分証明書を要求したため、ローズは警官に抗議する。クリスはそんなローズを頼もしく思った。

 

ローズの実家に到着すると、ローズの父ディーンと母親ミッシーはクリスを大歓迎する。父ディーンはクリスを家中に案内する。そこにはいそいそと働く黒人の使用人、ジョージーナとウォルターがいた。まるで、昔の南部のような光景に少し驚くクリスだったが、父ディーンは、彼等はもともと両親を世話するために昔からいた使用人で、両親が亡くなった時に家族同然の彼等を追い出したくなかった、と言い、さらにオバマ大統領をほめたたえ、クリスと打ち解けようとしたのだった。

 

クリスが禁煙しようとしていることを知った精神科医の母ミッシーは、禁煙のための催眠療法をしてくれるというが、クリスは丁重に断る。ローズの弟も到着するが、彼は夕食のテーブルの場で酔い、黒人であるクリスは格闘技が得意なはずだ、と勝負をしたがる。

 

歓迎を受けつつも、なんとなく違和感を感じていたクリスは夜眠れず、一服しようと家の外に出ると、ウォルターが家の周りを全力疾走していた。ふと二階を見るとジョージーナは窓を凝視していた。あまりの2人の不気味さに、クリスはタバコを吸わずに家の中に戻ると、母ミッシーがカウンセリングの部屋でいて、クリスは強制的に催眠療法を受けさせられる。

 

催眠によってクリスは母親が亡くなった思い出し、汗だくで目覚めたクリス。昨夜の出来事は夢だと思おうとするが、クリスは煙草を見ると強烈な不快感を抱くようになっていた。催眠術は実際にかけられていたのだった。

 

その日、ティーパーティーが行われ、高級車に乗った招待客が続々と家にやってきた。ほとんどの招待客が年配の白人で、クリスにフレンドリーに話しかけるが、黒人であるクリスに、タイガー・ウッズと知り合いだと言ってきたり、クリスの体に勝手に触れたり、性的なことを言ってきてクリスは居心地の悪さを感じる。

 

息抜きのため庭を一人で歩いていると、客の1人であるクリスも知る有名なアート・ディーラーのジム・ハドソンに出会う。彼は盲目であったが、アシスタントと共にアートを手がけており、クリスの作品の独特の視点を褒める。

 

再び人混みに戻ったクリスは、白人だらけのパーティーに唯一いた黒人の客ローガンを見つける。ほっとして話しかけたクリスだったが、ローガンはかなり年上の白人の妻と一緒で、ローズの実家で働いている使用人のように感情表現に乏しい。フィストバンプ(拳と拳を付き合わせる挨拶で、黒人同士がよくやる)にも握手で返す。違和感を感じたクリスだったが、彼の顔は見覚えがあり、一生懸命思い出そうとする。

 

パーティーでの居心地の悪さに、部屋に戻り親友の空港警備員(TSA)であるロッドに電話をしようとするが、充電していたはずの携帯電話のコードが抜かれていた。ジョージーナが充電コードを勝手に抜いていたことを怒りながらローズに言い、あとでジョージーナが謝罪にくる。深く反省する彼女に、気にすることはないし、自分は白人だらけで居心地が悪いから過敏に怒ってしまった、と本音を漏らすクリス。ジョージーナはクリスを安心させようと、奇妙なほどの笑顔を見せ、家族は皆いい人たちだと言うが、突然ノーノーノーと口走りながら、目から涙をこぼすのだった。

 

再びパーティー会場に戻り、クリスは見覚えのあったローガンの写真をこっそり撮ろうとしたが、フラッシュが光ってしまった。フラッシュが光ると、ローガンは突然鼻血を出し、出ていけ!出ていけ!と叫びながら、クリスに殴りかかる。周りの人間が取り押さえ、母ミッシーの部屋に連れていかれたローガンは、すっかり落ち着きを取り戻していた。

 

あまりにいろいろな不快な出来事や居心地の悪さに、我慢の限界に達したクリスは、ローズと散歩に出かけて、予定を切り上げ家に帰りたいと言い出した。最初はショックを受けるローズだったが、クリスのローズへの思いを感じ、帰ることに賛成する。その頃、パーティの会場では父ディーンが招待客を相手に、怪しげなビンゴゲームを開催していた。写真に写っていた景品はクリス。落札したのは、盲目のアートディーラー、ジム・ハドソンだった。

 

すっかり暗くなったが、散歩から戻るとパーティーは終わっていた。クリスは部屋に戻り帰る準備をしていたが、偶然ローズの昔の写真を見つける。そこには多くの黒人男性とローズの2ショット写真があった。黒人とつきあうのは初めてと言っていたローズだが、ローガンとの写真、ウォルターとの写真、さらには、ジョージーナとの写真もあった。クリスはローズにも不信感を感じつつも、身の危険を感じとにかく早く家をでようとし、ローズを呼ぶ。

 

クリスが家を出ようとすると、玄関で弟のジェレミー、両親に行く手を阻まれる。ローズもその場にいて、パニックで泣きながら車の鍵を見つけられないというが、実はそれはローズの芝居で、やはり初めから一家でクリスを監禁する予定であった。ショックを受け逃げ出そうとするクリスだったが、母ミッシーの催眠術にかけられていたため、その場で動けなくなり、地下室に閉じ込められ、椅子にしばりつけられたのだった。

 

そのころ、クリスの親友ロッドは、クリスが送ってきたローガンの写真が、古い知り合いのアンドレ・ヘイワースであったことを思い出す。SNSで、彼が数ヶ月前から行方不明になっていることを知った。愛犬を彼にまかせっぱなしでクリスが予定を過ぎても戻ってこないことで、ロッドはクリスの安否を心配し始める。何度もクリスに電話するが、クリスはでない。クリスからアンドレが年上の白人女性と結婚して一緒にいた、と聞いていたことから、知り合いの警察のところに行き、黒人男性が白人家族に誘拐されて、洗脳され性奴隷にされている!と熱弁するが、大爆笑され相手にされない。

 

ロッドが繰り返しクリスに電話をすると、ローズがでた。クリスは2日前にタクシーで1人で帰ったというローズだったが、ロッドが警察に行ったことを話すと気にしてるそぶりを見せる。おかしく思ったロッドは、電話を録音しようとするがローズの挑発にのり、電話を切ってしまう。

 

地下室で目覚めたクリスだったが、そこにある古いテレビから流れる映像により、ローズたち一家とその友人たちが、脳だけを入れ替えて、黒人になることを目的としていることを知る。そして、ジム・ハドソンは、クリスの目で世界を見たいと思っていたのだった。パニックになるクリスだったが、母ミッシーの催眠術がかかっている彼は、術がかかる引き金となるスプーンがコーヒーカップに触れる音で、再び気を失ってしまう。

 

父ディーンと弟ジェレミーは、ジム・ハドソンの脳とクリスの脳を入れ替える手術の準備を始めた。ジェレミーがクリスを地下室に迎えに行くと、クリスは催眠術によって意識を失っていた。ジェレミーは準備を整えようと、点滴を用意し始めた。実は何度も催眠術にかかり、コーヒーカップのスプーンが催眠のきっかけになると学んだクリスは、しばられていた椅子から、綿をとりだして耳につめていて、意識を失ったふりをしていただけだった。油断したジェレミーはクリスに倒された。

 

なかなか来ないジェレミーの様子を見にきた父ディーン。クリスはディーンの隙をつき、部屋にあったシカのはく製で、ディーンを串刺しにする。クリスは手術室にいた、脳がひらいている状態のジム・ハドソンがかけていた毛布にも放火をして部屋をでる。

 

地下室をでると、母ミッシーがいた。催眠術をかけようとテーブルにあるコーヒーカップとスプーンをつかもうとするミッシーだったが、クリスはそれを阻止、カップを割る。ミッシーはナイフでクリスに襲い掛かるが、逆にクリスはそのナイフを使い、ミッシーを刺し殺す。

 

玄関から外にでようとすると、意識を取り戻したジェレミーが待ち構えていた。クリスの首をしめるジェレミーだったが、クリスの逆襲にあい殺される。外にでて、ジェレミーの車に乗り込み、車を発進させたところに、女使用人のジョージアが飛び出してきて轢いてしまう。交通事故で亡くなった母親を思い出したクリスは、そんな彼女をほっておけず、助手席にのせて再び車を発進させた。

 

ヘッドホンをしていて最初騒ぎに気がつかなかったローズだが、ジョージアが連れ去されるのを見て、「おばあちゃん」 とつぶやき、クリスが放った火によって火事が起こった家から銃を持って出た。実はジョージアには、脳移植によってローズの祖母の脳が入って、助手席で目覚めた彼女はクリスに襲い掛かる。二人の乗った車は木に激突し、ジョージアは命を落とす。

 

後ろから追ってきたローズは、銃を撃ちながらクリスに近づいてくる。やめるようにローズを説得しようとするクリスだったが、そこにいきなり男の使用人ウォルターが猛スピードで走ってやってきた。ローズはそんな彼に、「おじいちゃん、彼を殺して」 と言うのだった。ウォルターも脳移植により、ローズの祖父の脳が入っていたのだった。

 

ウォルターにやられそうになったクリスだったが、携帯電話のカメラのフラッシュを点灯させる。自分がクリスを殺す、とローズに近づき、銃を受け取ったウォルターは、クリスではなくローズの腹にむけて銃を撃ち、自らも命をたつ。クリスは怪我をしていたが、ローズがまだ生きているのを見ると起き上がり、彼女の首をしめる。

 

そこにパトカーがやってくる。ローズはか細い声で、助けを求める。どう見ても不利な状況のクリスだったが、パトカーに乗っていたのは親友ロッドだった。ロッドはクリスを乗せ、二人は無事に車で走り去ったのだった。

 

<感想補足> ネタバレありあり

あらすじ前の感想でも少しふれたけど、最後のシーンは当初、お金持ちの白人一家を殺したクリスが逮捕される、というエンディングにする予定だった。彼いわく、まだある人種差別の過酷な現実を反映したものにしたかったのだと言う。

 

実際、もし黒人青年が裕福な白人一家を皆殺しにしたら、正当防衛関係なくまず絶対に逮捕されるだろう。それがアメリカの現実である。もちろん今でも。

 

黒人であるオバマ元大統領に選出されたのだから、人種差別の時代は終わった、もうそれについて語る必要はない、と主張する人たちは多く、それに対してまだ人種差別は終わってないというメッセージを伝えたかったというジョーダン・ピール。

 

だが、この映画の製作が始まったころ、警察が黒人を不当な理由で射殺するという事件がアメリカ国内で相次いだ。そこで、彼はあえて本作をハッピーエンドにしたという。

 

数々の評論家たちが、この映画にはそうとう高い評価をしている。映画批評集積サイトのロッテン・トマトでは、批評家支持率は99% という驚異的な数字。この映画の悪役は、アメリカ南部にいる人種差別主義者(ネオナチやKKKなど)ではない、リベラルな白人。裕福で知的、そして善良な人たち。この手のリベラルな白人たちの無知と傲慢が、リベラルを腐らせていて、それを白日の下にさらした初めての映画だと、批評家たちは語っている。

 

<オススメ美女>

映画の中では黒人大好きのサイコ役を演じたアリソン・ウィリアム。

イェール大学を卒業した才女。

映画にはまだあまり出演してないけど、ドラマなどで活躍中♪