HPVワクチンを勧奨する中川恵一氏と村中璃子氏、開沼博氏~彼らの言動と連携から見えてくるもの | NANAのブログ

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~HPVワクチンを勧奨する中川恵一氏と村中璃子氏、開沼博氏~彼らの言動と連携から見えてくるもの

最近、ツイッターからの情報で下記のセミナーが近々(10月19日)開催されることを知りました。
セミナー案内

「情報リテラシーについて考える
放射能と子宮頸がんワクチンの問題の共通点とは」
と題されたこのセミナーを主催する『化学放射線治療科学研究会』とはどんな研究団体なんだろうと思い調べてみました。何かの学会の傘下にある研究組織かと思いましたが、どうやら東京大学医学部放射線科准教授の中川恵一氏が主導している私的な研究会のようです。(この理解にもし間違いがあれば、お気づきの方ご指摘願います)
その中川恵一氏がセミナーの基調講演「福島の放射能問題と子宮頸がん予防ワクチンの真実」を務め、「ふたつの課題の根底に流れる共通点とは」と題したパネルディスカッションには、中川恵一氏に加えて村中璃子氏と開沼博氏が登壇するようです。

福島原発事故による放射線被曝とHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の問題は科学的医学的に検討する上では基本的に別の問題だと思われるのですが、セミナーではそれらには「共通点」があるとされ、メインテーマになっています。
いったい何が「共通点」なのでしょうか。セミナーに登壇する顔ぶれを見るとピンとくるものがあります。というのは、この御三方がHPVワクチンや福島原発事故による放射線被曝の問題に関してこれまでどのような言説を行ってきたのか、それを知ればおのずと見えてくるものがあるからです。

村中璃子氏は、多くの方が指摘しているように、また私もブログ記事で批判してきたように、HPVワクチン接種勧奨を強く唱える一方でワクチン副反応被害者と家族そして支援者たちを中傷しているとしか言いようのない言動を繰り広げてきた自称、医師・ジャーナリストです。
(彼女は実名を明らかにせず匿名ペンネームを通し続けているので、「医師・ジャーナリスト」という肩書きの前には「自称」の二文字を付けるべきでしょう)
その村中璃子氏と開沼博氏(社会学者、東日本国際大学客員教授)の対談記事「放射能と子宮頸がんワクチン カルト化からママを救う」が『Wedge』(JR東海が発行する雑誌)に掲載されています。
対談の中で彼らは、原発事故の放射線被曝による子どもたちへの健康被害を危惧する母親たちとHPVワクチンの副反応被害を訴える女性の母親たち、そして支援する人たちに対して、具体的根拠の明示もないまま「カルト」という表現を使って中傷するような言説を繰り広げていました。それは、自分たちの主張を正当化するために、相手の主張や行動を勝手放題に歪曲し、卑劣に印象操作したとしか思えないようなものでした。

母親たちを「モンスターマザー」呼ばわりした村中氏の『Wedge』記事「子宮頸がんワクチンとモンスターマザー」に至っては、露骨な悪意さえ感じさせるものでした。
重い様々な副反応症状を訴え苦しんでいる人たちが数多くいるのにもかかわらず、ジャーナリストを自称する村中璃子氏は全くといってよいほど当事者取材を避けてきました。そんな彼女が副反応被害者やその母親たちを「カルト」とか「モンスターマザー」呼ばわりする唯一の根拠らしいものは、ある副反応被害者と家族に対する一方的な「噂話」の伝聞に依拠したものです。
村中氏の取材方法には看過できない重大な問題があり、書かれた内容は実態とは大きな齟齬のある偏向したものであることが、以下のブログ記事などによって明らかにされています。

ウェッジ5月号、村中璃子氏の仕打ち(追記)

子宮頸癌ワクチンを巡る研究報告で中村理子氏と掲載誌「ウエッジ」が訴えられた件について。

週刊金曜日 「子宮頸がん予防ワクチンを推進する『Wedge』に怒りの声続出」 を読んで  その1

週刊金曜日 「子宮頸がん予防ワクチンを推進する『Wedge』に怒りの声続出」 を読んで  その2

以上のように、『Wedge』などでの村中璃子氏と開沼博氏のこれまでの言動をみれば、セミナーで彼らがやろうとしているものが何なのかが見えてきます。
つまり、彼らのセミナーでの目的は、放射能(放射線)やHPVワクチンの問題を学術的科学的に掘り下げて検討することにあるのではなく、原発慎重・反対派やHPVワクチン慎重・反対派の言論活動を彼らなりの「論理」で批判・攻撃し、それを広めることに主眼があると。

さて中川恵一氏といえば、がん医療や放射線被曝の問題などについて、「専門家」という触れ込みで本や様々なメディアを通して旺盛に自説を発信してきた医師です。
子宮頸がんとHPVワクチンの問題について同氏は、日本経済新聞に「がん社会を診る 子宮頸がん 予防も可能」と題した論説を寄稿しています。
その論説記事は、まず冒頭で子宮頸がんの脅威を誇大に語った上で「WHOの(HPVワクチンに対する)安全宣言」を引用し、「日本が「子宮頸がん大国」にならないよう」と、HPVワクチン推進派がよく使う文句を用いてHPVワクチンを勧奨するものでした。

ここで、中川恵一氏の論説記事の問題点や掲げた統計データの誤謬について指摘したいと思います。
(※ 論説記事が掲載されているサイトには、私は批判コメントを入れています。そちらもご覧いただければと思います。)

論説記事で中川氏は、「がん検診も当たり前の欧米では「過去のがん」になりつつあります。」、「日本が「子宮頸がん大国」にならないように」などと、さも日本が欧米諸国に比して子宮頸がん対策が大きく立ち遅れ、その脅威に晒されているかのような書き方をしていました。こういった言い回し、レトリックは、HPVワクチン接種勧奨の再開を強く求める産婦人科や小児科などの医師たちが同じように盛んに口にする言葉です。

最初に以下のグラフをご覧ください。

ほたかさんのブログ記事より(1)


これは、ほたかさんのブログ記事、宮城悦子氏の「洗脳教育」1~データ改ざんグラフによる印象操作~子宮頸がん検診から転載させていただいたグラフで、HPVワクチン接種勧奨再開の旗振り役を担っている産婦人科医師の宮城悦子氏が教育講演などで掲示しているものです。宮城氏も、中川氏と同じように、このグラフが「世界に立ち後れている日本の現状」を示すものだとして、子宮頸がんの脅威を煽っています。

まず最初に指摘しなければならないのは、このグラフは日本における子宮頸がん死亡率の推移を正しく表したものではないということです。
ほたかさんもブログ記事で指摘しているように、「日本のデータについて、古い資料では、子宮頸がんと子宮体がんに細かく分類されていないものが多く、本来ならば、「子宮がん」のデータを参照しなければなりません。」
つまり、古い時代の統計データでは子宮頸がんによる死亡が分類不明(子宮頸がんと子宮体がんに判別されない)の子宮がん死亡に報告計上されて見かけ上、子宮頸がん死亡率が低く見積もられてきたのです。したがってそれを補正しなければなりません。

子宮頸がんの死亡率推移をより正確に知るためには、“子宮がん”死亡の中に未分類されているものから子宮頸がん死亡を推定抽出して子宮頸がん死亡に加算補正する必要があります。補正はその時々の子宮頸がん死亡率と子宮体がん死亡率の比率を用いて振り分ける必要がありますが、その比率は正確には分からないので補正はある程度、概算的なものにならざるを得ません。
また、分類不明とされてきた子宮がん死亡は時代が古いほど多いことから、補正後の子宮頸がん死亡率は時代が古いほど高くなります。
参考までに、子宮がん(子宮頸がん+子宮体がん)、子宮頸がん、子宮体がんそれぞれの死亡率の年次推移を示すグラフを以下に掲示します。

子宮がん、頸がん、体がんの年次推移


ほたかさんは補正後の推定グラフ線(赤の破線)を書き入れたものを示しています。以下に転載させていただきます。

ほたかさんのブログ記事より(3)


ほたかさんの言葉を借りれば、「日本の子宮頸がんは、オーストラリアよりも死亡率が高かったのですが、検診が普及する前に死亡率は年々低下し、1990年代にはオーストラリアを追い抜いていた」ということが分かります。

上記のグラフは日本とオーストラリアだけを比較したものですが、他の欧米諸国を含んだ子宮頸がん年齢調整死亡率(年次推移)の国際比較を示します。

子宮頸がん年齢調整死亡率の国際比較


このグラフは、厚生労働省委託事業である『医療情報サービスMinds(マインズ)』のWeb記事から引用転載したものです。
このグラフを見る上でも注意すべき点は、日本のデータは上述したような補正が行われていないものだということです。適正な補正をすれば、日本の子宮頸がん年齢調整死亡率は1970年頃までは10人(/10万人)を越えていたのは間違いありません。
つまり、日本の子宮頸がん死亡率は、戦後間もない時期には欧米諸国に比してかなり高かった。しかしその後、検診の導入(全国的に開始されたのは1982年)とは無関係に一貫して大きく下がり続け、現在は検診先進国(受診率70~80%)と同レベルの年齢調整(世界人口)死亡率(2~3人/10万人)に落ち着いているのです。
したがって、日本の子宮頸がん死亡率推移の実態は、産婦人科医が口を揃えて脅威を煽るような「世界に立ち後れている」ものではないことが分かると思います。

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※ 余談めいた話になりますが、「日本の子宮頸がん死亡率の推移」について、先日(9月28日~29日ころ)twitter上で『全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会』事務局長の池田としえさんのホームページにあるグラフを引っぱり出してきて、鬼の首をとったかのように池田さんを批判していた小児科医(アカウント:afpid@AfpidShounika)がいました。
詳しく解説すると長くなるので省きます(関心ある方はツイートのログを追いかけてみてください)が、私はafpid氏は粗雑で問題のあるツイートしているなと眺めていましたが、そこに神戸大学大学院教授の牧野淳一郎氏(アカウント:Jun Makino@jun_makino)が登場し、問題点をまさに的確に指摘、批判するツイートをされていました。やはり、計算天文学を専門にされている方だけあって数字や統計データの捉え方、解釈が鋭いなと感じました。私のブログ記事も、ご覧になれば、数字や統計データについて鋭い指摘があるかもしれません(苦笑)。
ちなみに、afpid氏は1990年代以降の子宮頸がん死亡率の「微増」をしつこく強調していました。たしかに、1990年代以降のデータを見ると僅かに増加傾向にあると言えなくもありません。しかしその「微増」の統計データについては、子宮頸がん死亡の実態を正しく反映したものではなく、いくつかの重要な問題点があるのではないかという疑問、疑義を持っています。その点については、時間がある時にじっくり論じるブログ記事をアップしたいと思っています。
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中川氏の日本経済新聞の論説について、さらに指摘すれば、同氏は「(子宮頸がんは)現在は30代にもっとも多く発症します。」と述べていますが、これも正確ではない間違った記述です。
『がん情報サービス』の子宮頸がん 年齢階級別 罹患率グラフ(2008年、2010
年、2012年)
を以下に示します。

子宮頸がん 年齢階級別 罹患率グラフ(2008-2012)

グラフから分かるように、子宮頸がんの罹患率が最も高いのは40代です。2012年の10万人当りの罹患率は、

30代女性=49.18(人)

40代女性=60.43(人)

となっています。
年齢階級別の罹患率データは最新で2012年のものまでしか公開されていませんが、現在でもこの傾向は基本的に変わっていないでしょう。


最後に指摘したいのは、
セミナー開催の広告案内をしているWebページ『日本原子力文化財団』のサイトになっているという点です。このページでは、独立した全く別の組織である『化学放射線治療科学研究会』が主催するセミナーをあたかも同『財団』が開催するか主体的に関わっているかのように読めてしまいます。後援しているとか共同主催といった明記もありません。
中川氏が主導する『研究会』とは全く別な組織のはずなのに、『財団』がこのような形で広告記事を出しているのはどういうことなのでしょうか。両者はどこかで結び付いている組織なのでしょうか。不思議です。

でも考えてみれば、『日本原子力文化財団』が、そのホームページで記述しているように、「原子力文化」の社会への浸透・定着を目指す組織であるということから、推測できるところもあります。

「原子力文化」(=原子力発電を前提とした、それを基盤とした社会の文化)の浸透・定着を図ろうとしている事に対して、その足を引っぱるような放射線被害の「過剰な警戒反応」は何とかしたいという思いが『財団』にはあると見て大きな間違いはないでしょう。そこに、放射線被曝による健康被害を強く危惧する人たちを「カルト」、「モンスターマザー」と揶揄、中傷して批判する村中氏と関沼氏や、放射線被曝の問題を「放射線の専門家」の名のもとに軽視する言動を発している中川氏が『財団』に受け入れやすい土壌があると見るのは不当ではないでしょう。

件のセミナーは「情報リテラシーについて考える」ことを投げかけています。情報リテラシーとは簡潔に言えば「情報を読み解く能力」です。
しかし、当事者へのしっかりした実地取材も行わず、まともな根拠や情報も示さず、「カルト」「モンスターマザー」とのレトリックを安易に弄して批判言説を垂れ流す村中璃子氏および関沼博氏と批判的吟味に欠けた粗雑で誇張した統計データや数字を弄して自説を語る中川恵一氏には、「情報リテラシーについて考える」というタイトルを掲げる資格があると言えるでしょうか。その点を最後に強く問いかけたいと思います。

【10月14日 追記】

放射線被曝問題に関して中川氏は『放射線医が語る福島で起こっている本当のこと』という本を出しています。その本に対する批判レビューをほたかさんがAmazonに寄稿していますので、リンクを貼ります。
嘘と詭弁講座(入門編)】 指定テキスト?