だいぶ前に読んで、いい本だとTwitterでつぶやいとことがあるんだけど、思うところあって再読してみました。

ざっくりこの本のテーマをまとめると、こう↓です。
『時代が変わって、今まで重宝されていた仕事は陳腐化していくよ。
今後は自身の能力開発も次世代の人材教育にしても考え方を変えるべきだよ。』

ちなみに原題は「A Whole New Mind」。
…これからの自分の仕事の方向性を考えたい人、子供の教育方針を考えたい人におすすめ。

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代/ダニエル・ピンク

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まずは冒頭で、
劣化する仕事を見極める”3つのチェック項目”が紹介されています。
前提としては、今まで経済発展を支えて来たホワイトカラー(理論的、分析的、情報処理能力などの左脳主導の仕事)の知的労働は、海外にアウトソースされたり、ソフトウェアが処理することによって価値がさがっている→だから以下の3つに該当する仕事は今後その付加価値が漸減するよねというもの。

さっそく、IT業界のプロデューサー(←自分です(^_^;) )の仕事を以下の”3つのチェック項目”で評価してみた。IT業界のプロデューサーという仕事は今後も付加価値を生み続ける仕事なの?

(1)「よその国、特に途上国にできること」か?
No。スマホアプリやwebサイトの開発は私達も海外のエンジニアにお願いしているけど、プランニング部分のアウトソース実績はないし、今後も現実的ではない。

(2)「コンピュータやロボットに代行できること」か?
No。プロデューサー業務にかかる情報収集やPLの計算などはIT化できたとしてもそれは一部。新規サービスの企画や設計などは人の知恵で行うほかない。

(3)「反復性のあること」か?
No。収益を生むビジネススキームをつくったりサービスをヒットさせるためのノウハウはいまのところマニュアル化できない。だからこそ難しいのだけれど。

…ということで、例えばプロデューサーのような業務はパターン化には限度がって再現性が低いために難易度が高い仕事なので、ここ数年で何か別のものに取って代わられることはなさそう。(;^_^A

じゃあ、”3つのチェック項目”に該当しない仕事だから安心していいの?

いえ、むしろ逆。
個人の経験値や能力によってアウトプットに大きな差が生じる難職種だからこそ『創造性があり、反復性がないこと、つまりイノベーションとか、クリエイティブ、プロデュースといったキーワードに代表される能力』を身につけていく必要がある!(安心するための本じゃないっす!)


だからこの本のページの大部分は、これから必要な能力を身につけていくための具体的な提言を、6つのキーワードを切り口に展開しています。これってピンクさん(野暮な呼び方で失礼…)が2005年に書いたようなのですが、今改めて読んでみても、その先見性に感動を覚えるのです。


6つのキーコンセプト
(1)Design-デザイン
テクノロジーの進化で、機能や実用性だけでプロダクトの差別化ができない時代が到来。だからデザインスキルこそが今後の差別化の鍵となる。

(2)Story-物語
プロダクトやサービスのマテリアルな価値に、利用する人の気持ちを動かすような意義が必要になっている。事物を単なる事物としてとらえるだけでなく、文脈の要素を取り入れることによって相手の感情に訴えることのできる能力が重要。

(3)Symphony-調和
イノベーティブであるためには一見異なる要素の組み合わせから新たなものを創造する力が必要。一つの分野の専門家であるよりも、全く異なる領域の仕事を同等の自身でこなせる人が求められる。

(4)Empathy-共感
人の感情を理解する能力があってこそ他の能力も活かされる。例えばDesignとは使う相手の気持ちになって(共感)生み出すもの、Storyも相手を共感させる能力であり、Symphonyも他者の文脈を理解(=共感)することで可能となるもの。共感こそテクノロジーやコンピュータでマネできない能力。かつ国や文化を超えて人を結びつける共通言語。

(5)Play-遊び
ユーモアや笑いのエッセンスは高度な全体の文脈の理解から生み出されるもので、これもテクノロジーでは代行ができないスキル。遊びは対立や緊張を和らげ毎日の生活を豊かにする。

(6)Meaning-生きがい
物質的な欲望が満たされた結果、意味的な欲望(生きがい、やりがい)が求められる時代になった。ものよりも内発的な動機づけが重視される。仕事だってお金だけでなく働く意義を求める従業員が増えるようになった。これからはますます「生きがい」「やりがい」というキーワードが重要になる。


以上がこれからの時代に求められる6つのキーワードです。
実際には本書のなかで、具体的に能力を鍛練するための提案も書かれているのですが、興味がある方は読んでw。

マテリアルな豊かさよりも精神的な豊かさが求められる時代なんだと(既に物質的にはある程度満たされている時代だから)、個人的にはざっくり理解しました。
人間の心が中心になっていく…世界が向かっている方向は悪くないよね。
私はこの本を読んでそういう感想。元々人間くさい人種だからかもしれませんが。


実はこの本を読んでピンクさん(失礼)の本をいくつかまとめ読みしてみたのですが、この人こそハイコンセプト&ハイタッチな人で、人の心を動かす文章を書く人なんだなあ…と実感しました。
それでもピンク氏の著書の中ではこの「ハイ・コンセプト」がイチオしです。

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