今年もロンドン・オープンハウス・フェスティバルの季節がやってきた。でも昨日のエリザベス女王崩御でポーランド大使館にて明日予定されていた「ジャポニズム」講義はキャンセル。今日のスミッソンプラザ(旧エコノミストプラザ)はキャンセルが間に合わなかったのか、そのまま建築家によるガイドツアーは開催された。実はこの建物は地下鉄駅グリーンパークから徒歩5分ほどで、バッキンガムパレスからも10分くらい。それほど近いならば、パレスに行かない方が失礼な気がして、ツアー後に立ち寄った (次の記事にまとめます)。

 

 さて、建物自体は世界的に有名な週刊誌The Economistを発行するThe Economist Groupが2017年まで使っていた。彼らの転居に伴い建物の名称もエコノミスト・プラザから建築家の名前を受け継いだスミッソン・プラザに変更。ザ・ブリッツ(The Blitz、ロンドン大空襲)で壊滅した建物跡地にコンペで選ばれた前衛建築家アリソン&ピーター・スミッソン夫妻が3棟のビルをデザインしたもの。素の材料をそのまま見せるニュー・ブルータリズム作品で名高い建築家で、労働者階級出身とのこと。設計及び建設は1959–65でヒストリック・イングランドの等級ではgrade II* listed Building(特別に重要な建造物)。1990年代にアメリカの設計事務所SOMが、2016年からはロンドンの建築家グループDSDHAが新たに改築デザインを行い、彼らがガイドとして案内してくれた。

 

 ブルータリズムと言えば打放コンクリートと思われがちであるが、当初このムーブメントの名付け親だった建築史家レイナー・バンハムは『ニュー・ブルータリズム』(1966)という本の中でそのままの素材を使った建物全般をそう呼んでいた。だから最初のニュー・ブルータリズム作品であるスミッソン夫妻設計のハンティントン・スクールはミース・ファン・デル・ローへの影響を色濃く受けた鉄骨造でコンクリート像ではない。旧エコノミスト・プラザはコンクリート造だが、打放は仕上として使用せず、周囲に合わせ高級感のあるポートランドストーンを被覆材として使っている。

 

 ブルータリズム建築はル・コルビュジェの影響で歩車分離方式をとることが多いが、この建物も例外ではない。半地下は駐車場として、3つのビルの間に位置するオープンスペース(プラザ)は半階分高くなっている。しかし、そのせいでこのプラザは「いつも無人」という憂き目にあってきたという。建築家は「オープンスペースに人々を呼び込むには周囲より高くしてはいけないという法則がある」と説明した。しかも、今の車は当時よりもずっと大きくもはや地下駐車場には入らないし、自転車通勤の人が殆どのため、役割を終えたとか。この元駐車場は今後文化施設にリノベーションされることが決まっている。また、駐車場の入り口がプラザへのアクセスを遮り使い難くしているため、新たに細い階段を設けるらしい。暗くて陰気臭かったロビーを改修し、エレベーターも最新式のタッチパネルに取替え、タワーの各階は賃貸オフィスとなるらしい。温室効果ガスの排出量をCO2の排出量に換算した指標であるカーボン・フットプリントを考慮して、ガラス窓は二重ガラスと遮光ガラスにしたという。grade II*ビルは改装許可を得る手続きが大変なので、DSDHAは人々の通行量などの調査にかなり時間をかけて裏付けをとったとか。

 

 オープンハウスのたびにモダニズム建築の歩車分離は気候変動などの影響で車社会から脱皮しつつある現代ではもはや通用しないと実感させられる。スミッソン・プラザはまだオフィスのテナントもレストランも入っていないし、半地下の改修は始まっていない。数年後にまた訪問した方が良いだろう。

 

名前 Plaza

住所プレート        プラザ/オープンスペース

Buildings Office Floor 

3つのビルで構成             オフィス階

Steps SOM

半階高くなったプラザ           この部分のSOMによる改修は失敗だとか

  Small CCTV

駐車場入口はプラザへのアクセス無し     世界一ちいさなCCTVカメラ