今年のオープンハウス ロンドンはコロナ禍の影響で参加するビルが少ない上に、オンラインでのバーチャル訪問が殆ど。しかもオンライン版は20分くらいで終わる短いものばかり。仕方なしにともかく実際に建物の中に入れるところは何処か探し、主に外観はよく見るけど中に入ったことがないビルを選んだ。ただ、正午にルベトキンが設計したBevin Courtのオンラインレクチャーを予約済みなので、一旦帰宅しなければならない。と言う訳で訪問したビルは順にRoyal College of Pathologists, Round Chapel, Shoreditch Town Hall だった。

 
 Bennetts Associates設計のRoyal College of Pathologists はオールドゲイト・イースト駅に近い。Pathologyとは病理学なので、もしかしたらコロナウィルスに関する展示か何かがあるかも、という淡い期待を抱いて朝一に行ったところ、展示はなくて2018年築の新しいビルの紹介だけだった。体温を測られ、携帯電話番号を記入して入館。外観にはレンガを使いながら吹抜があり、インテリアには木をふんだんに使った贅沢な造りで落ち着いた雰囲気。さすがRoyal 👑 付きの学術団体。(因みにRoyal College of Physicians はデニス・ラズダン設計の名建築。) 受付の人と話したところ、今年はオープンしてからたった1時間で訪問者が30人で「昨年数人だったことと比較すると大変な人気だ」と喜んでいた。内心、今年は中に入れるビルが少ないのと同時に私のようにコロナに関する何かを期待した人も居たのでは?と思った。

 

Royal College of Pathologists 紹介ビデオ
 
  ハックニーのRound Chapel (1871)はHenry Fuller & James Cubitt設計。いつもバスで前を通るものの敢えて教会に入る勇気がなかったが、予想以上にインテリアのデザインが凝っている。壁に沿って展示してあるバナーによると、元は非国教徒の教会だが、教会としては長らく使われてないらしい。たまにコミュニティセンターのようにコンサートなど催し物やドラマとか映画の撮影で使われるだけとか。ヒストリック・イングランドのGrade-II*に指定されている(Grade-IIよりも上)。パイプオルガンを修理して、外装の石を洗えば更に印象が変わると思う。元々のオーナメントやステンドグラスなどの細工は素晴らしいし、馬蹄型の2階部分は構造上も手が込んでいる。近隣住民としてはもっと活用して欲しいところ。

Round Chapel 外観
 
入口                床の通気口のデザイン
 
正面はパイプオルガン(工事中)     廻廊のモザイク模様
 
  最後はShoreditch Town Hall。45分のガイドツアー付きで建築デザインの点から見ても一番面白いビルだった。1866年築でヒストリック・イングランドのGrade-IIに指定されている。そもそもイギリスのタウンホールは教会以外で結婚式をあげる人々の式場を兼ねるので、どこのカウンシルでも立派で写真映えする事が多い。例えばベルファストのタウンホールは、「一体誰の宮殿なの?」と思うほど豪華だった。Shorditchタウンホールだって二面がそれぞれ鉄道と車の通りに面して排気ガスのせいで汚れているけれど、かなり立派なビル。1904年の増築で入口上部には「Progress 」と名付けられた自由の女神像まで掲げている。しかし、地下階は仕上げなしで、使っていないのかと思いきや、映画やドラマの撮影で引っ張りだこで、このままの状況で問題なしとの答え。ちょっと怖い感じがするので写真を撮るのが憚られた。1階には綺麗な部屋がいくつかあり、その一つのChamber Hallで議論をした後、市長の意見に賛成の人々は奥の間に招かれて飲み物が出されるが、反対の人は即反対側のドアから外に追い出されたとか。2階にあるミュージックホールは1500席を有する大空間でエルトン・ジョンが誕生会を開いたり、ひと昔前はボクシング会場として名高かったという。ガイドさんは「かつてタウンホールだったビルが高級ホテルやレストランなどに用途変更される事が多いけれど、Shorditch Town Hallは今でも同じ用途のままで嬉しい」と言っていた。
 
 
増築上部には自由の女神        確かChamber Room
  
怪しげな仕上げのない地下      Music Roomとバイザー姿のガイド
 
管楽器のデザイン  バイオリンのデザイン