なかびとごころ

ナナです。


世の中ツライ事、苦しい事いっぱいありますやん。

でも、その人に乗り越えられない障害はやって来ないて、

言いますやん。


ひたすら前に進むのみ。


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お久しぶりでございまっせ。

えっと、、、。




えーーーーーっと、、、。








何年ぶりでっしゃろ? 先ほどばぁちゃんストーリーの続きを書きました。。。






えっと、みなさんお久しぶりデス。 ナナです。 




って、覚えてくれてる人おるんやろかぁ??(笑)


読者登録や、コメントいただいた方々、ホンマ申し訳ない。



完全に放置してましたわぁ。。。 というのも、日本におりませんで・・・。




うんと、、、何から書いてえぇのかわからず、とりあえずご挨拶まで(`・ω・´)ゞ




あ、元気ですわぁ♪♪


ばぁちゃんのお話、一個書きましたので、よかったらのぞいてくださいですわぁ♪♪







あぁーーーーーーーーーーーーー

久しぶりすぎて使い方がわからへん(汗


***祖母シヅ波乱万丈物語⑭***志津とシズと静。

志津とシズと静。





なんでなんやろう。


この優しいおとうはんは、いったい誰なんやろう。



志津には疑問しか無いし、早すぎる初めての女としての体験やった。


一つだけわかるのは、"おとうはん" やなくて "男の人" やって事だけ。



『志津。 ほな、行くぞ。 お前も用意せな。』



『おとうはん、なんで・・・』



『行くぞ。』



『・・・・・・・・・はい・・・・。』




そこからは、ただ一言も交わさず、おとうはんの強く引っ張る手に引かれ、


静かに、ただ黙って、茶屋・・・、おかあはんの元へと歩いた。





『あら、志津のとこへも寄ってきたん? 志津、エライ立派になってきたやろ?』



うれしそうに、おとうはんへ話しかけるおかあはん、静。



『あぁ。驚いたわ。 ホンマにいつのまにか立派な舞妓はんになって。


これで、この茶屋も安泰やなぁ。』




談笑する二人をよそに、志津は震えが収まらず、吐き気が止まらなかった。




おかあはんには言えん。


おかみはんにも言えん。


おとうはん、、、なんで?



その後食事をしても、喉に通らず、ほとんど会話なんて覚えてへん。



おとうはんが悪魔に見えた。




時間も遅うなり、おとうはんがもう帰る・・・・て話を始めた。




『今日は、泊まっていってくれへんの・・・。 なぁ、もう少しえぇやないの・・・。』



『あかん。 帰らな。 またすぐに会えるさかい。 お前も本調子やないんや。


はよ床に入った方がえぇ。』




『わかったわぁ。 また、すぐに来てなぁ。 ほら、志津。 そこまで おとうはん送ってきて。』




『え、だって・・・。 』



『そうやなぁ。 志津に見送ってもらおうか。 おいで。 志津。』




イヤだ。 イヤ。   でも、言えへん。



笑顔で見送るおかあはんとおかみはん。  何もつたわらへん。

 




外に出た瞬間、おとうはんに抱きしめられ、


汚い舌が這う。   吐き気が止まらない。




『志津、お前は賢いし、えぇ子やなぁ。 おかあはん、おかみはん、みんな好きやもんなぁ。


おとうはんが、何もかも教えてやるさかい。 お前は、おとうはんの子ぉや。


えぇ子やなぁ。 志津。』




"やめて"  なんで言えへんねやろ。


"助けて"  なんで叫べへんねやろ。




『これからお前の座敷にも、もっと顔出してやるからなぁ。 志津、おぼこいのぉ。』






未来に光なんて見えん。 どこまでもどこまでも、ずっとずっと、夜が明けへんと思った。







***祖母シヅ波乱万丈物語⑬***受け入れ難い真実。

受け入れ難い真実。




『あれ? おとうはん?

後で茶屋に来る言うてたんやない??』



『そうや。 今日は志津の仕事ぶりを見に来たんや。

おかみはんとシズのところへは、一緒に行こう。』



おとうはんは、じっと志津を見つめて、そう言った。


志津は、うれしかった。



いくら働いてお金を渡しても、おとうはんに踊りを見てもらう機会は無く、

成長した自分も見てもらいたかった。



お酌をし、最近のこと、おかあはんのこと、

これからのこと、たわいもない話を志津はまくし立てた。


おとうはんと二人きりで話をする機会なんて、今までなかった。


志津はうれしくてうれしくて、

自分の父親に、13歳である娘の立場から、

一生懸命尽くし、踊り、ほめてもらいたい一心で、

舞妓・志津を勤め上げた。



『志津、えぇ舞妓になったなぁ。

踊りも上手やし、おぼこい中で色気も出てきはって・・・』



目を細めて、志津をほめるおとうはん。

志津の喜びは最高潮やった。  



そのときやった・・・。




おとうはんが近づいてきたとき、信じられへん事が起こった。



おとうはんの唇が、志津の唇に重なってきた。

息が荒く、舌が口の中に入ってきた。


おとうはんのいやらしい手が、

志津の着物のあちこちの隙間から入り込んで来る。



『お・・・・・ おとうはん??』



『志津、えぇ子やなぁ。 

えぇ子は何も言わんと、おとうはんの言う事聞きぃ。』




おとうはんは、志津の着物と結った髪を崩さぬよう、

それはそれは丁寧に扱ったそうや。



志津の"初めての人"は、実のおとうはんやった。

たったの、13歳やった。



この話をばぁちゃんから聞いたとき、

ばぁちゃんのおとうはんが憎かったし、信じられへんかった。

そして皮肉にも、おとうはんが一生で一番優しかった瞬間やったて、

ばぁちゃんが言った。


吐き気がした。



この話はこれ以上、何も聞けんかった。


信じられへんって思ったけど、ばぁちゃんにとっての真実やった。

***祖母シヅ波乱万丈物語⑫***長い夏の夜。

長い夏の夜。




志津の仕事ぶりは、花街でも目を見張るものがあった。

若さもあったんかなぁ・・・


一晩にお座敷を何席も掛け持ち、

踊りをこなし、別のお茶屋さんのおねえはん芸妓さんのサポートでついても、

次に先斗町を訪れたときの舞妓は志津に・・・

という約束を毎度もらえるような、

誰から見ても上々な舞妓はんやった時期。志津13歳の夏やった。




京都の夏は暑い。

ジリジリ照りつける太陽、煩いセミの大合唱を背に、

志津はいつものように男衆さんの到着を待った。



ハードスケジュールの中でも、

志津は舞妓の仕事が楽しくて楽しくて、

毎日が充実していた。 


そんな中、具合の悪いおかあはん、静の容態もだいぶ良くなり、

お座敷に復帰することが決まった。


志津は忙しい中も、静の看護・世話を一生懸命に優先させ、

親子同士、たわいも無い話から、

舞妓時代の苦労、芸妓の心構え等、

たくさん、たくさん、話をした。


志津はこの頃13歳になったばかりやったけど、

静は母としてやなく、もう一人の女として、

志津に接しておったような気がするて、ばぁちゃんが言っとったわぁ。




そんな真夏のある日、静の復帰のお座敷は、志津も同行することになり、

広い京都の花街でも見られへん、親子で同じ座敷に入る事が決まった。

まぁ、お茶屋のおかみはん以外は、親子だなんて知らんからね。



『叔母と姪なん?

よう似てはるなぁ・・・ 静はん、戻ってこれて、ホンマに良かったわぁ。』


『志津ちゃん、キレイになってきたわぁ・・・

静はんの仕出しの頃、そっくりやんなぁ・・・』



みんな口々に似てる似てるというけど、

当たり前や。 親子やもん。



その頃、志津の中で、一つ疑問があった。

おかあはんの年齢。

何しろ昔の話やからね、当時は子供産む年齢も若いしぃ・・・


そもそも、おとうはんとおかあはんの年齢は、だいぶ差があった。

まだ前の家族と一緒におる頃に、おかあはんに会った時、

芸妓さんのお化粧やったからよぉわからんかったけど、

おとうはんと並ぶ姿には、エライ違和感があったように思えた。




お座敷を回る中で、一軒のみ志津だけ別のお座敷が入っとった。

この夜の一番最後のお客は、おかあはんの復帰を祝って、

おとうはんがお茶屋さんに来る事になっとったし、

早く済ませて、早く親子水いらずの団欒がしたかった。



指定されたお茶屋さんに駆け足で向かう志津。

志津が一生懸命働いたおかげで、

何とかおとうはんの事業も持ち直してきた。

志津の未来は明るかった・・・ かのように思えた。




指定されたお座敷に着くと、そこにおったのは、

なんとおとうはんやった・・・。

***祖母シヅ波乱万丈物語⑪***志津

志津


その日から、過酷な仕込み生活が始まった。


当時の舞妓は、13歳~仕込みをはじめることが多く、
シヅは若い・・・というよりも、幼い舞妓として、初座敷の日を待った。



屋形では、それまではただ可愛がってくれたおかみはんも、

厳しい目をするようになり、

今まで優しく、いろいろ教えてくれた、

踊りの学校の舞妓はんたちも、
ライバル視なんやろうか・・・?

今までと違うて、よそよそしくなっていった。




踊りに関しても、今まで見様見真似で覚えていたものは、

やっぱりおねえはん達の真似でしかなく、

他の舞妓はんたちよりも、厳しく踊りを直される日が続いた。




『そんな踊りやったら、お座敷なんて到底出せまへんえ!!』






何度も何度も叱られた。

通常、見世出し(デビュー)までのお稽古は長くて1年間。

しかし、シヅの見世出しはあっという間にやってきた。



おかあはんが倒れた今、おかみはんも必死の思いでシヅの見世出しを願った。



その日、シヅは未だ12歳。

顔も体も幼い、少女。



でも、おかみはんが必死で用意してくれた黒紋付にだらりの帯。
襟足には3本衿を引き、
下唇だけに紅をさす。



舞妓 『志津』 誕生です。




ほんまは本名をあんまり使わへんねやて。


でも、シヅは芸妓をやめるまで、

この 『志津』 の名前を捨てへんかった。



それからは、ほんまに過酷な日々が続いた。



覚えること、やらなくてはならないこと、
毎日毎日忙しゅうて忙しゅうて、
でも充実していて、
いつのまにか舞妓の仕事が楽しくて楽しくて、
それが顔に現れているような、
えぇ舞妓に、日々なっていった。



その頃のおかあはん 静 は、

志津の体を気遣いながらも、

どこかで女としてのはがゆさ、

嫉妬・・・まではいかんかもしれへんけど、

自分の娘さえもライバルと思ってしまう、

芸妓のプライド・性みたいなものが常々あったんやろなぁ・・・



って、ばあちゃんがしみじみ言った。

その頃、舞妓の見世出しすぐの志津は、

お座敷でも引っ張りだこ。

明るくて若い志津は、

日を追うたびに人気も出て、

置屋のおかみはんも褒めるくらい、

数多くのお座敷をこなしていった。




踊り、お座敷遊び、お客との会話、

全てが楽しく、全てが刺激的で、

どんどん女へと成長していく、まだ12歳の志津に、

静が言った。





『シヅちゃん、男には気ぃつけんと、ダメになるよ。

これから、いろいろ恋もするかもしれへんしぃ、

えぇ人ができる時が来るかもしれん・・・

でも、シヅちゃんは芸妓になるんよね。

自分を大事にせんと、喰われるんよ。』




『何に喰われるん??』




『さぁ・・・

何やろなぁ・・・? 想像もできひんわぁ。

物かも、人かも、、、自分かも・・・・・・』





志津は、ずっとこの言葉が忘れらんかった。

もしかしたら、おかあはんも喰われてしまうんやろか・・・

そうしたら、一人になってまう・・・

志津はひたすら働き続けた。

そして、だんだんこの花街でも、有名な舞妓になっていった。

***祖母シヅ波乱万丈物語⑩***舞妓 誕生。

舞妓 誕生。




久しぶりに見るおとうはん。


少しやせたのか、それとも年をとったのか・・・。





会ってへん期間は、

そこまであいてへんのに、どうしてやろうか・・・


遠くに遠くに感じたんやわぁ。




『シヅ、、、久しぶりやなぁ。


ちゃんと、ええ子にしとるのか?


おかみはん、おかあはんの言う事、キチンと守っとるのか?』





その声は、優しかった。





『はい、お掃除もしとるし、お勉強もしとるし、


お座敷がここに入るときは、お手伝いもしとります。』




『ほんまやでぇ、シヅちゃん、ほんまによぉお手伝いしてくれて、


ウチも助かってますねや。』






おかみさんが、助言をしてくれはった。





『そうなんや・・・。

えぇ子にしとるのか・・・。えぇぞ、シヅ。えぇ子やな・・・。』





おとうはんにほめられることなんて、

ずっとずっと無かった。



その目は温かくて、やさしくて、愛を感じたそうだ。





『”シヅ”は・・・、いてはりますか?


男衆さん(着付け担当の男の人)、もう来てまいましたか?』






『旦那はん、今日来るなら来るって言ってぇなぁ・・・』





おかあはんが、息を切らせて降りてきた。




おとうはんの声が聞こえたらしく、


髪結いも途中でやってきた。



それから、二人は別室へ消えていった。


けっこうな時間がたつ・・・。 深刻な様子・・・。





しばらくして、二人がやってきた。


おかあはんは赤い目をしとる。


おとうはんも、”良くない” 顔をしとる。





『じゃぁ、シヅ、堪忍やで・・・。


よろしゅう頼むわ・・・。』




なぜか、その目は小さな”シヅ”に向けられているような気がした。


その後、おかみはんとおかあはんは、別室へ・・・。




しばらくして、


もっと目の赤いおかあはんと、微妙な顔つきのおかみはんが、


話さなければならない事がある・・・ とやって来た。





『シヅちゃん・・・ よう聞いてや。


旦那はんの会社、あかんようになって、


シヅちゃんの前の家族たちも、生活するので、精いっぱいなんやて。


でもな、今はおかあはんがいっぱいお金を稼いで、


おとうはんにも手伝ってもろうて、


このお茶屋さんで、もっともっとお客さんに来てもらわな、


旦那はん・・・ おとうはんも生きていけへんくなってまうの。


そやから、シヅちゃん、


おかあはん、今より忙しくなる・・・。


まだ、シヅちゃんも小さいしぃ、一緒にいたいんやけど、


ほんま、堪忍やでぇ・・・。もうしばらく我慢してやぁ・・・。』




『はい・・・』



て答えるしかないのは、わかっていた。





おかあはんの宣言どおり、


ほんまに顔を合わせる機会はどんどん減り、


たまに見るおかあはんは、


どんどん痩せていった。




でも、どんどんキレイな芸妓さんになっていった・・・。





舞妓さんの学校に通う生活も続き、


隠れて覚えた踊りも、もっともっとレパートリーが増えた。



舞妓さんたちにかわいがられ、


お座敷の手伝いもし、花街へのおつかいも難なくこなすシヅ。





今思うと、一番平穏な生活だったかもしれへん・・・


て、ばあちゃんは言ってた。



長いようで短かった、ほんまの何年か・・・。


ほんまのシヅの少女時代は、数年間で幕を閉じる。





シヅ 12歳。





おかあはんが倒れた。



度重なる過労の末、ついに倒れはったのは、全てのタイミングが揃った瞬間やった。






『シヅ、、、 舞妓にならへんか?』





『はい!!』




おかみはんの突然でもあり、必然でもある真剣な”お願い”やった。



何の前置きもない、何の説明もない、


前提も、理由も、何もなかった。



ただただ、シヅは、心から、”はい” て、言うとった。






ここから、ほんまの波乱万丈な生活が始まる。









***祖母シヅ波乱万丈物語⑨***芸妓・静

芸妓・静



シヅさんと過ごすようになって、1週間ほどで、


シヅの生活は変わってきた。



まず朝。


夜の帰りが遅いおかあはん(=シヅさん)は、


あまり朝は早く起きてこない。



置屋のおかみはんとシヅだけで、


簡単な朝食を食べる。



置屋の掃除やら、簡単な手伝いを終えたシヅは、


舞妓のおねえはんが通う、学校に行く。



踊りやら唄を大勢の若い舞妓さんたちが、一生懸命練習する。




そこは、シヅにとっても学校だった。




厳しい規律の中にも、和む時間がほしかった舞妓さんたち。


みんな妹のようにシヅをかわいがってくれた。




踊りやら何やらのお稽古の合間、


みんなは字だったり、算数だったり、


時々は裁縫までおしえてくれた。




当時は先斗町でかなり名の知れたシヅさんの”子”ではなく、


”姪”ということにして、シヅは花街にだんだん溶け込んでいった。




午後になると、


置屋にておかあはんの準備が始まる。



着物を着せてくれる男の人が来て、


力いっぱい帯を引っ張る。



お化粧をして、髪を結って・・・・





かなり時間をかけて、芸妓・静(シヅカ)が完成する。


静いうのはおかあはんの芸妓での名前。


ほんまにほんまにキレイな芸妓さんやった。



(写真見たんやけど、めっちゃキレイやで(゜д゜;))



いつも、 


「シヅちゃん、おかあはん、お仕事してくるからね。えぇ子にしててぇな。」



こう言って、夜の先斗町に出ていくおかあはんやった。




学校に行くのが夢やったシヅも、


花街の生活に慣れるにしたがって、


本を読むよりも、算数の問題が解けるよりも、


自然と踊りに興味を示すようになった。





舞妓さんたちの学校で、皆が練習している曲を覚えて、


何度も何度も真似てみる。


それが楽しくて楽しくて、どうしようもなくて、


毎日踊ることを欠かさなかった。




ある日、置屋のおかみはんと、


いつものように夕食をとっているとき、



「シヅ、学校行きたいんか?」


と、おかみはんに聞かれた。



一瞬回答につまると・・・


「舞妓・・・やらへんか? 静と一緒に、お座敷に上がらへんか?」




思ってみなかった。


おかみはんの目は真剣で、本気なんだと、そのとき7歳のシヅにもわかった。




「おかみはん、ちょっと見て?」




シヅは、毎日舞妓さんの練習を見ていた成果を、


どうしてもおかみはんに見てもらいたかった。




誰かに、ほめてほしかった・・・





おかみはんは興奮して褒めちぎった。



「シヅ!!どこで覚えたん??すごいやないの!!」




シヅはうれしくてうれしくて、


何回も踊った。気がつけば、いつの間にか10曲以上のレパートリーを持っていた。





お座敷からおかあはんが帰ってきた。


いつものように、とっても疲れていた。



「静!! 見てみぃ!! この子、こないたくさんの踊り、覚えて来たんやで!!


わてはうれしゅうてうれしゅうて・・・」




そのとき、おかあはんの顔が豹変した。




「シヅちゃん!! そんなん覚えんでえぇ!!


踊りよりも、覚えることようけあるんやないの??


踊りはあきまへん!! おかあはん、そんなシヅちゃん、見とうない!!」





とにかく、悲しそうな顔をして、


おかあはんはシヅに訴えた。



踊りは好きやったから、悲しかったけど、


おかあはんが悲しいほうがいややから、もう踊らんって決めた。





それから数日後。


おかみはんがえらい忙しそうにしてはった。


今夜のお座敷は、久しぶりにこの置屋を使うらしい。


古くからの、お偉いさんのお客さんやから、


お料理も、最高のものを注文したって、張り切っとった。




おかあはんは、浮かない顔をしながらも、


いつものようにキビキビと準備を進めた。



夜、護衛付きの客が到着した。 


いかにも”エライ”おじさん。


太っていて、背も低くて、年もとっていた。


お世辞でも、”ステキ”な男性ではない。




その日なぜか、いつもおかあはんと寝ている離れの和室ではなく、


おかみはんと一緒の部屋に床をひいた。



お座敷にお酒を持っていったとき、


明らかに感じた、いやらしい客の目。




夜が更けても、帰ってくる気配のないおかあはん。




おかみはんと寝る理由がわかった。




当時の芸妓は、芸だけでは食べていけなかったし、


暗黙の了解だった。


特にこの時代は、遊女は飽きられ、芸妓と・・・ というのが人気やった。




これこそ、母・シヅの仕事。


芸妓という女の仕事。 


踊りを見て、あんなに怒ったのは、きっと同じ人生は歩ませたくなかったんやな・・・




朝方、客が帰っていく音が聞こえた。


なぜかほっとして、やっと深い眠りについた。




次の日、いつもように笑顔のおかあはん。



目が赤かった。


泣いたのか・・・  寝不足なのか・・・




次の日、おとうはんがお座敷に来た。

***祖母シヅ波乱万丈物語⑧***シヅ、花街へ

シヅ、花街へ





そう言ってシヅさんは、シヅをぎゅうっっと抱きしめた。



ほんまに、ほんまに久しぶりの人の肌のぬくもり。




シヅは、うれしくてうれしくて、


声を出して泣いてしまったんやて。




つられてシヅさんも、


「ごめんなぁ・・・堪忍やで・・・」


って、泣き崩れたんやて。






「シヅ、えぇ子にして、


おかあはんの言う事、よう聞くんやで。」






「はい。」







「ほいで、よう働くんやで。」











え?



働く??




シヅさんが言う。



「あかしまへんって。 こない小さい子を働かせるなんて。


ウチもまだ、ぎょうさんお客はんがおりますさかい、


シヅちゃんのことは、置屋のおかあはんのところで、静かに育てます!!


学校も行かせて、学もある、はんなりした、えぇ大人に育てるんや!!」





「知らんぞ。シヅ。お前かてもう若くない。」




「えぇんです!! 


ウチの技量でどこまでいけるか、わかりまへんけど、


この子は、誰よりも幸せにウチがするんです!! 幸せになってもらわな、あかんのです!!」





シヅは、ほんまにうれしかった。


もう、この時点で幸せだった。





シヅさんは、京都の祇園・先斗町で芸妓さんをしてはった。


あとでわかったらしいんやけど、


えらい評判の芸妓さんだったらしく、


時の政治家なんか、何人も相手してはったって、ばぁちゃんが言ってた。




「じゃぁ、シヅ、また来るなぁ。」




シヅは、自分に言ってるんやろかぁって思ったが、


やっぱり違かった。


シヅさんを見つめるおとうはんは今までに見たことがないくらい、男前で、


それを見つめ返すシヅさんは、誰よりもキレイやったって。


何をするわけでもない、毎回の二人の別れの場面。



一緒になれへん二人が、とってももどかしかった。






おとうはんが出て行った後、


「さぁ、シヅちゃん、行きまひょかぁ?」



「はい!!」



「あ、シヅちゃん。


これだけは約束してぇや。置屋はんて、これからウチとシヅちゃんが住むところな。


その置屋はん以外では、絶対ウチのこと、”おかあはん”って呼ばんといて。


”おねぇはん”って呼んでな。」



「・・・・・はい。」



やっぱり、どこに行っても、


完全に歓迎されてるわけやないんだ・・・ シヅは少し落ち込んだ。



でも、このシヅさんの笑顔と、愛情があれば、


ほかに何もいらん!! って思うくらい、


シヅさんの手はあったかくて、スベスベで、シヅを引っ張っていってくれた。





しばらく歩いて、路地に入った。



もう夜も更けてきたのに、


そこらじゅうのお店に、明かりがついている。


えらい立派な着物を着たキレイな舞妓さんが、そこらじゅうにおった。




そこは花街・先斗町。


シヅの人生の大半をすごす場所になった。

***祖母シヅ波乱万丈物語⑦***新しい家族

新しい家族。




ほぼ一年の間、楽しいことなんて全然なかった。

歯も抜けたまんまで、背ぇも伸びんし、がりがり。




そんなシヅも、学校へ行くような年になった。


学校へ行けば、ほとんどの時間は家の外やから、


あんまりいじめられんと、ぶたれんと済むんやないかと、


シヅはめっちゃ期待した。





2ヶ月に1回の”シヅさん”・・・ ほんまのおかあはんとの食事。




おとうはんは、毎回変わらずの早足で、


シヅのほうなんて振り返らずにスタスタと前を行く。




でも、シヅはその日だけは何が起こってもうれしかった。



おとうはんが必ず朝、髪を切りに連れていってくれて、


すこーしだけ、紅をひく。


新しい洋服に、靴。



シヅさんに会う日だけは、シヅが主役やった。



普段いじめる兄弟たちも、


うらやましそうな顔で覗き見をしてる。





ある日、いつものように約束の日、


おとうはんとシヅは美容院へ行った。




「いつもよりも念入りに整えてやってくれ。」




シヅが聞いた。




「おとうはん、今日はいつもより特別な日なん?」





おとうはんは言った。





「そうや。おまえは今日からシヅさんとこ行くんや。」






うれしさと不安が一気に押し寄せた。


ほんまのおかあはんと一緒に住める!!


もういじめられる事もない!!


やさしいおかあはんと一緒や!!







きっと、学校も行かせてくれる!!!








でも・・・・・・・     シヅ、迷惑やないんやろか・・・









その日の夜、出かける間際、


というか、もうその家を出ていくときに、


おかあはんがお小遣いをくれた。




「持っていき。あちらさんとこ行って、恥ずかしいことせぇへんように。


おかあはんが恥ずかしい想いすんねんから・・・」





育ててくれたおかあはん、夫の愛人の子供が憎くて憎くて、


現代やったら”幼児虐待”で確実に捕まっとるような、


古い時代を生きたおかあはん。





シヅが再会するのは、


ずっとずっと後のことですわぁ・・・






いつもと同じく、


おとうはんの早足に必死でついていく。


少し雨が降った後で、


地面がぬかるんでいた。




シヅが、転びそうになったとき、


おとうはんがしっかり支えてくれはった。




「危ないやないか。」




シヅはうれしかった。


久しぶりに、誰かに守られた気がした・・・






いつものお店に着くと、


そこには、一段と艶やかな”シヅさん”がおった。




満面の笑みを浮かべて・・・





「シヅちゃん、今日からウチとシヅちゃんは家族やで。 よろしゅうな。」







シヅに、新しい家族ができた。




ばあちゃんとお別れ


9月3日、



やっと、やっと、



ばぁちゃんとお別れすることができました。





お通夜・お葬式は、もう忙しくて忙しくて、


泣いてる暇なんて、なかった。




参列してくれはった方たちは、


みんな大変やなぁ・・・ とか、


しっかりしとるなぁ・・・ とか、


口々に言いよった。





それは違う。





火葬場にて、ばぁちゃんがオーブンみたいのに入って行く前、


最後の対面をした。



最後のお化粧をしたばぁちゃんはとってもキレイで、


キレイすぎて、


焼かれてしまうのがとってもかわいそうだった。



"火葬"っていう日本のシステムを恨んだ。



まさにそのときの事は、


覚えてへん・・・




泣き崩れたような、まったく泣かんかったような・・・





うん。


誰も何も言わんかった。




朔ちゃんも、家族代表で来てくれはった。


実際のところ、


朔ちゃん家族はばぁちゃんとあまり面識がない。



ただ一つ知っていることは、



『このばぁちゃんは、戸籍上、最後のナナの家族』



って事。


心配して、来てくれはったんやなぁ。






骨になったばぁちゃんは、


癌のところ以外は真っ白で、


ぎょうさん骨が残っていた。




お骨を持って、家に帰って、


おかんが着せてくれた喪服の着物を脱いだ。



脱力感。




もう、仙台に行かんでもえぇんやなぁ・・・




しばらく吸うのを忘れとったタバコを吸った。


この時のナナには8mgはキツすぎて、


ちょっとむせた。






朔ちゃんは、ようしてくれはったし、


一人でおるのがつらかったから、


とっても助かった。





『今、ナナには誰かが必要なんやと思う。』



『誰かがそばにおらんと、壊れるんやないかと思う。』



『一緒に京都、帰ろう。』






お断りした。




『ウチ、意外と大丈夫やと思うわぁ。 おおきに 朔ちゃん。』




そして今に至る。


朔ちゃんからは、日を置かずにメールが来る。


それも元気いっぱいの 笑




ナナは大丈夫、9月3日に納骨が終わって、


すっきりしたしなぁw


大丈夫。





墓参りは京都へ。


京都へ帰るきっかけが、また増えてしまった。







大丈夫。


待っててくれる人が増えただけ。


ナナは、もう少しこの東京で、


バリバリ働いて、ぎょうさん経験をつんで、


がんばってみます。





さて、そろそろ記事も更新していかな、あきまへんなぁ 笑





心配してくれはった皆様、

今度こそ本当に大丈夫。

おおきにぃ。

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