トリプルファイヤー 2012.10.06 @ 新宿motion (TOKYO BOOT UP!)


セットリスト:

1.ガンダーラ
2.次やったら殴る
3.ちゃんとしないと死ぬ
4.ジミヘン
5.抱きしめたい
6.スキルアップ
7.エキサイティングフラッシュ
8.おばあちゃん


オレンジの「LUCKY SOUND」Tシャツ、ローライズ気味に穿いたベージュのコットンパンツ、ビーチサンダル、短髪にメガネ、白のファイアーバードベースのベース担当山本さんは東京のアンダーグラウンドロックシーンを支えるインディーギターテック・LUCKY SOUNDその人です。両手でアンプヘッドを抱えて登場、マイアンプなんですね。それにしてもマイアンプを抱えて出てきてみずからセッティングするベーシストを見るのは初めてです。
黒地のTシャツのドラムス大垣さん。「blood thirsty Butchers」のロゴと突き上げた拳の絵入り。絵柄としては70年代末の、来日公演も行ったゲイのベーシスト、トム・ロビンソンのバンドのジャケットに描かれた拳そっくりですけれども。スネアが銀色のメタルで深め。
ギター鳥居さんは青のポロシャツですが黒、白、赤のストライプが身頃に入って、茶色のハーフパンツ、紺?のスニーカー。
遅れて登場したボーカル吉田さんは黒のTシャツ、プリントが白字で「Is This a Pop Song?」、光沢のある茶色のスリムパンツ、ニューバランスのグレーのスニーカー。

ボーカルが他のメンバーと向かい合ってリハーサル、「いろんな人がいる」と歌いますが曲調としてはQueenの「Another One Bites The Dust」そのまま。

ボーカル「…人と向き合って行きたいです…『トリプルファイヤー』です。よろしくお願いします!」

一曲目「ガンダーラ」、ハンドマイクでステージを左右に往来するボーカル。三白眼。どこからどうみても不審者以外の何ものでもないボーカルをそっちのけのようにバックの三人はタイトなサウンドを生み出します。

マイクをスタンドに一瞬戻しますがふたたびハンドマイクで二曲目「次やったら殴る」、赤と緑の照明が、このバンドの「情けなさ」を演出しているかのようです。

三曲目「ちゃんとしないと死ぬ」、これまで「あるがままの自分を」という歌詞に気を取られていましたけれど、この曲、まるでキングクリムゾンをシンプルにしたような緻密なサウンドを聴かせてくれていたんですね。

四曲目「ジミヘン」、ジミ・ヘンドリックスを聴いたことがあるかと問う歌詞ですがサウンド的には全然ジミヘンではありません。ジミヘンドリックス・エクスペリエンス→エクスペリエンス→経験、という連想で、共通感覚を得られない悲しみを歌った曲のように思いました。

ボーカル「『トリプルファイヤー』っていうバンドです」、そのまま沈黙が続きます。
観客「しゃべるか!?」
ボーカル「ぼくは全然テレビ見ません」、何か続けてしゃべろうとしますがかまわずバックの演奏が始まってしまいます、五曲目「抱きしめたい」。歌われている恋人は妄想なのでしょうか。

ドラムスのカウントから六曲目「スキルアップ」、曲中で出世し「ありがとうございます!」とくりかえすボーカル、やはりありもしない夢を歌っているのでしょうか。

ベースのフレーズを聞いて曲名を察知した観客が湧きます、七曲目「エキサイティングフラッシュ」、「俺は頭が良いから…」のフレーズは東京インディーロックシーンの金字塔でしょう。

ボーカル「ハイありがとうございました。次で最後の曲です。『トリプルファイヤー』ってバンドでした」

八曲目「おばあちゃん」、振り込め詐欺の電話をかけているうちに自分への不満が思わず噴出してしまったのかと思わせる歌詞、ハンドマイクですがマイクスタンドにしがみつくボーカル。自分を否定しないでほしい、期待してほしいとおそらく見たことも会ったこともない電話の向こうのおばあちゃんにすがりつきます。

「ありがとうございました」
ストイックでクールなバンド、トリプルファイヤーのライブでした。