「APOLLO」植木雄人

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「APOLLO」植木雄人




このCDは、子供たちの遊ぶ声ではじまり、終わる。

その間に展開されるのは、音楽の世界の住人たる植木氏が、音楽の世界にすみかを見つけることの出来ない一般の人たち、すなわち世の多数派、圧倒的な多数派に向けて発信する、必死のメッセージである。




CDのトレイ下に書かれた文章の最後の一行、植木氏が生還してきた、もと居た場所、「向こう側」とは、音楽の世界を示すものであろう。世の中には音楽の世界に入れる人と入れない人がいる、そして、音楽の世界に入れないひとは、どれだけ音楽を学ぼうとも、「向こう側」には行けないのである。そのことをあえて記さないのは、決して向こう側に行けないひとびとへの、植木氏の、やさしさだ。


このCDに歌詞カードは付属しない。しかし、歌詞は、聴き手にたどりつく、間違いようもなく。

以下は、歌詞を聞き取っていただいた、その上での話とお考えいただきたい。




歌詞に登場する「見知らぬ国」での戦争。これを、音楽の世界という要素を抜きに理解しようとすると、まちがいなく、誤解に到達する。

音楽の世界の住人には、そもそも、戦争という概念がないのである。

すなわち、見知らぬ国での戦争とは、ここではないどこか遠くでの戦争、関係ない場所での戦争という意味ではない。戦争を必要としない音楽世界の住人にとっては遠すぎる、戦争という事態を、音楽の世界の住人から見て理解でき、かつ、現実世界のみなにも通じるかたちに表現しようとするなら、見知らぬ国での戦争と表現するしかないのであろう。




音楽さえ知っていれば、音楽の世界に住まうことさえできれば、戦争などしなくて済むのに。

じつは音楽の世界と現実世界とは何のつながりも無く並存できてしまうのである、けれど、二つの世界を往復できるのは、音楽の世界の住人たちだけなのだ、という、クールではあるけれど、過酷すぎる事実、現実が、そこにはある。でも、音楽の世界の住人しか、このことは知らない。見事なまでに、知らない。

音楽の世界の住人でない人間は、音楽が、人が生きて死ぬこの世とは別に、まったく別に在る、そんなことは知らない、考えもしない。当然だ、だって、見えないのだもの。いままで一回も、意識したことが、無いのだもの、そして、死ぬまで、知らないで終わるのだもの。




そもそも人々全てが音楽の世界の住人であり得るなら、戦争など生じようもない。音楽の世界には音楽しかないから。だのに、戦争は、起きてしまう。

音楽の世界の住人は、音楽の世界ではあり得ない戦争という事態を見たそのとき、見知らぬ国の出来事としか表現しようがない、音楽の国では起こりようのないこと=戦争だから。




「愛ってなんだろう」という歌詞は、愛さえあればOKなんだけど、でも、愛ってなに?というお気楽な表明などではない。


そこに読むべきは、思うべきは、音楽の世界では起こりようのない争いが起こる現実世界において、いさかいを収めるために必須とされる愛なるものへの、違和感である。


音楽さえあれば、音楽の世界に来ることさえできれば、そこに何の問題も起こるはずがないのに、どうして、愛なんてものを必要としなくてはならないのだ?


音楽の世界の住人たる自分たちには必要ない、したがって、評判をきいたこともない、愛、って、なんなのよ?




音楽さえあれば争いなんて起きようがない。そんな音楽の世界の住人たる植木氏が、争いを避けるために、あるかないかもわからない、愛、などというものを必要とするひとびとに向けて、音楽の世界の住人には不可解あるいは理解困難至極な、愛、なるものごとの大切さを訴えてくれる、「APOLLO」は、そんなアルバムです。そもそもは、音楽の世界からみたなら、知ったこっちゃないだろうにね。




音楽の世界の住人であるかどうかも知らなかった昔、子供のころを聞くものに想起させる、冒頭とラストの子供たちの声は、その時期をいまに再生するために響くのではなくて、実は、最初から、二つの世界の住人は別々であり、交わることなど不可能だったのかもしれない、改めてそのことを確認しよう、とはいえ、もしかしたら、音楽の世界の住人たる自分と、そうでない人たちとが、交わる可能性があったのかもしれないそんな時期まで戻ってみてよ、戻ってみたい、という、因果にも音楽の世界の住人となっている、なってしまった、植木氏ご自身と、そのほかの人たちのメッセージ、つまり、自他に宛てたメッセージなのでありましょう。




ここに記したゴタクはどうでもいい。これ、聞かなきゃわかんないよ。

聞いてください。

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あヴぁんだんど 2016.05.29 @ 渋谷メイドリーミン



セットリスト:
1. てのひら
2. あヴぁんだんど
3. Magical Symphonic Girl
※1. は物販前、2. 3. は物販後



ライブ前にしばし飲食、メンバーが客席を回ってくれますが、なにしろ二人なので、なかなか客席を回りきるのは難しいようです。二人ともメイド姿、べにさんはツインテール、白のニーソックスに黒のローファー、猫耳。夏季さんは髪をまとめて、右後ろに直径2センチくらいの丸い黄色のチャーム、左には赤っぽい長めのチャーム。黒のニーソックス、黒のミドルカットの機能的なスニーカー。

ピチカートのSE、「ヴぁー!」、メンバー登場。
べにさん「あヴぁんだんどのライブです!こんにちは、ご主人サマども!」
フロアの中心に一段上がったステージのためでしょう、べにさん「どっちが正面かなー!」、結局入り口に背を向けるフォーメーションから、始まる「てのひら」、この曲も、今日やる曲は全て、二人あヴぁんだんどでの最後のパフォーマンスですね。

オープニングで、べにさん扮するアイドルに握手を求めて4回ループ、ラストはてのひらを打ち合わせる夏季さん、二人が精一杯の狭いステージでくるくる回ったためか、軽くめまいがしている様子。
夏季さんの「プリンセスなの」、舞台を降り、ステージの周りを一周して捧げるべにさん。
べにさんがランドセルを外して、二人ともフロアに降り、夏季さん「やんの?」、べにさんが夏季さんをおんぶしてそのままステージ上へ。おんぶを解消しても続く夏季さんのソロ、べにさんは一人ステージを降りてご自身のソロの前にランドセルを背負って。夏季さんがステージを降り、交代にステージに一人乗ってべにさんが「いつかは」とソロをとった後、「手伸ばして!」で二人ともフロアへ、べにさんのソロ「ステージが」はべにさん一人がステージに立ち、ふたたび入れ替わり、落ちサビは夏季さん一人がステージに立って、捧げるヲタク諸氏、客席を指差す夏季さん。

べにさん「ありがとうございます!…推せる、愛せる、と言いましたら、叫んでください!」、自己紹介する二人。
べにさん「わたしたち、ベテランメイドという設定、三回目…ベテランですか?」
夏季さん「さっき、富士山という字を書きました。線で」とは、オムライスなどにケチャップでお絵かきされたのでしょうね。夏季さんの漢字力にいささか疑問を持っているのであろうフロアのヲタク諸氏が湧きますが、最近の夏季さんの漢字力の向上は著しいとわたくしは思っております。
べにさん「二人体制最後…6月3日にライブがあるんですが、そこで…察していただいて。最後にもライブありますんで!」
結局、物販前は「てのひら」一曲でした。

物販も終わり、再びライブ。
ピチカートのSE、今度は「ヴぁー!」は聞こえませんでした。
メンバー登場、べにさん「改めましてこんにちは、あヴぁんだんど、です!頑張っております!最後のライブ、楽しんでいってください!」

ステージに乗らず、ステージを挟むかたちで立つ二人、夏季さんが「どうしよう」と呟いたのは立ち位置を決めるのが難しかったからでしょうか。
フォーメーションから明らかですが曲は「あヴぁんだんど」。
べにさん、かつてF○CKサインを突き出していたところ、最近はVサインを突き上げていましたが、今日はてのひらを振る仕草、これは卒業した東雲好さんを真似てくれたのでしょうか。
ステージの周りをサークルモッシュするヲタク諸氏に「おお!」とべにさん、ラストは二人で「センキュー!」

すぐ始まる二曲目「Magical Symphonic Girl」、イントロで「最後の曲です!聞いてください!、Magical Symphonic Girl!」とべにさん、そう、この曲は今回のステージの最後の曲であると同時に二人体制の、東雲好さんの命名になるレあヴぁんだんどの最後の曲、かつ、オリジナルメンバーのみによる最後の演舞でもあるのです。
脱退メンバーから卒業メンバーへと引き継がれた「虫歯イタイ」をきっちりお芝居するべにさん、演技が上手くなりました。
セリフのシーン、「愛されたくって…」夏季さん、「ステップ踏んで…」二人、「空ごとピンクに…」夏季さん、「幸せものって…」べにさん、「信じてる!」にはヲタク諸氏も唱和します。
ラスト、左手を上げてキメのポーズのべにさん、ですが、しっかりわきの下を右手でおさえて。べつにおさえなくてもわきの下は見えなさそうでしたけれども、あえてそうするべにさん、奥ゆかしいなあと思いました。

べにさん「二人体制、最後のライブでしたね」
つづけて、流暢にライブの紹介をする夏季さん、漢字が書けるようになったのみならず、最近とみに美しくなっただけでなく、彼女は着実に進歩しているのですね。
共演した「レッツポコポコ」を呼ぶべにさん、レッツポコポコの現メンバー5人をステージに乗せるために自分たちはフロアに降りるべにさん夏季さん。
べにさん「〆の挨拶…」、しかしレッツポコポコは〆の挨拶を決めていないということで、べにさんが小声で説明したのち、べにさん「以上わたしたちー、あヴぁんだんどと、レッツポコポコと、めいどりーみん渋谷店でした!ありがとうございました!」、ヲタク諸氏「やっぱ、レッツあヴぁりーみん、だなー!」

あヴぁんだんど、二人体制、レあヴぁんだんどの最後、かつ、オリジナルメンバーのみによる最後のライブでした。
5人時代の「てのひら」そして4人時代の最後の音源となってしまった「Magical Symphonic Girl」を聞きながら、しばし感傷にひたりつつ、このレポートを書いたわたくしでした。
あヴぁんだんどに、そして、卒業あるいは脱退して行ったかつてのめんヴぁーたちの前途に、幸多かれ。

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パジャマ文庫 2016.05.28 @ 新宿motion



セットリスト:
1. I don't believe in future
2. 工藤姉妹のテーマ
3. 大丈夫
4.くたばれ世界 よみがえれ青春
5. SNS☆症候群
6. 新曲
7. パンクロッカーは労働者



メンバー登場、みさきさんが水色のパジャマ、ゆきみさんがピンクのパジャマ。今日はパジャマ帽はなし。
音源をバックに、二人ハンドマイクで歌われる一曲目「I don't believe in future」、「I believe in future」といいつつF○CKサインを示す曲です。ラップのパートを含むのですが「有料」「優良」というあたりライムのセンスも良いなと感じました。


みさきさん「こんちは、パジャマ文庫です…ありがとうございます」
双子の姉、みさきさんがギター、黒のメイプルネックのストラトキャスター、フジゲン製、を抱え、妹のゆきみさんがドラムスに座ります。ゆきみさんのピアニカが学校の終業のチャイムを模したフレーズを吹くと、二曲目「工藤姉妹のテーマ」、だから学校においでよ、と歌われる歌詞は、スクールカーストにおいて決して高い場所には居なかった可能性を漂わせている工藤姉妹が、かつての自分たちに向けて歌っているように思えます。


みさきさん「みなさん、こんにちは、工藤姉妹のテーマ、でした…あ、姉妹です」、「知ってる!」と観客から。

ゆきみさん「ウチらは、何にでもなりたくないので、いろんなことをやります」

下手にみさきさん、上手にゆきみさん、ハンドマイクで、三曲目「大丈夫」、なんとかなるって、という歌詞、かつては「ケセラセラ」というタイトルだったかな。歌いだしてまもなく、ゆきみさんに「前へ行きなさい」というように指で示すみさきさん。


みさきさん「今日、楽屋が可愛い女の子ばっかりで、楽屋がいい匂いで、居ていいのかと」、ゆきみさん「なんとかなるでしょう!」
ゆきみさん「ジャージャー、って、やってください!」
四曲目「くたばれ世界 よみがえれ青春」、リクエストに答えて存分にMIXを掛ける観客。
みさきさん「盛り上がっていただいてありがとうございます!コール&レスポンス、しちゃってね!」、どんどんノッてきて、柵の上に乗り出して捧げる観客。
曲終わってみさきさん「ありがとうございます!」、ゆきみさん「スゲエ!」、ふたりで「スゲエ!」と繰り返します。次はリフトだな、と観客もノッています。


五曲目「SNS☆症候群」、何にもしたくないという歌詞、こどもで居たいと歌いながらF○CKサイン。
みさきさん「せっかくだ、またコール&レスポンス、してみますか!」、みずから言っておいて笑い出すみさきさん。


曲終わって、ゆきみさんがギター、みさきさんがドラムスになります。

ゆきみさん「パジャマ文庫を始めて見るかたは…ほとんどか。ウチらは以前バンドをやっていたんです。いろんなことをやりたいので…知らねえよ」
みさきさんから自己紹介、あだ名と、20歳であることを紹介、ゆきみさんはみずからがクソリプを飛ばすことを紹介。


「新曲」は、心配だから会いに、という歌詞や、土砂降り、という歌詞が聞こえ、歌の内容としては決して明るいものではありません。ですが、醒めてみる夢、などという形容を思いつかせてくれる曲です。
この新曲には二人のコーラス部分があるのですが、双子であるがゆえの、基本的にまったく同質な声によって歌われるハーモニー、ユニゾンは、今日のパジャマ文庫のステージのもっとも美しい瞬間でした。


ふたたび、みさきさんがギター、ゆきみさんがドラムスに。
水を飲むみさきさん、「おいしょ!」と掛け声をしたのに自らウケて「おばちゃんだ!」
みさきさん「バンドをやってたときもこの辺に立ってたんですけど、音楽で世界を変えるって純粋な気持ちだった」、あまりにも正直なみさきさんの言動に沸く観客。
いまはチェキ、物販でお金をもらって「みなさんのお金なのに…」


アイドルとバンドのどっちもやる、いいとこを。「そういう感じの曲です…じゃねえか!」
ゆきみさん「やりたいことをやる!」
みさきさん「…そういう曲です」
本ステージのラスト、七曲目、「パンクロッカーは労働者」、夢を見られない現実をふまえたうえで再び夢を見ることをめざす曲でしょうか。曲中にゆきみさんと目を合わせ、「声が枯れるまで」と歌うみさきさん。


「ありがとうございました!パジャマ文庫でした!また聴いてください!」


一般のライブハウスに初めて進出したパジャマ文庫、まがりかど時代に神楽坂TRASH-UP!!で対バンしたことから興味を持ってくださったと思しきあヴぁんだんどのヲタク諸氏も何人もいらっしゃり、みなさんの助力を持って楽しいステージを繰り広げてくれました。次のライブが楽しみです。

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