あヴぁんだんどが白い麻の服を着て能楽堂でライブを行った。筆者は残念ながら拝見する機会を得なかったが、さまざまな方たちの提供してくださった画像や感想から思うところがあったので記しておく。

 

能楽堂は女性に対して苛酷な場所である。
みずから能楽の舞台に立ち、300番(※1)は舞ったという白洲正子は、その挙句に、女性の肉体は能に向かないと結論付けた。また、白洲氏の文章ではないが、ある日舞の女流大家が能楽堂を舞台に踊った(※2)ときの印象として、日舞らしい女性的な、柔らかなあるいは曲線的な表現が、能楽堂という非情な空間に押し潰されていたと記したものを読んだことがある。


今回あヴぁんだんどは白い麻の服を着て舞台に立った。さくらいかおり氏の手になるというそれらの衣装(※3)はこれまでのステージでは披露されたことがないものだが、とくに能楽堂でのライブを意識して用意されたわけではないらしい。したがって、白い服を着て能楽堂に立ったのは、メンバーたち自身の選択ということになろう。

能にはさまざまの演目があるが、もっとも能らしいとされる演目たちの多くは、死者と生きている人間の対話劇である。前段(※4)で登場した主人公(シテ)が、後段においてみずからの死者=霊たることを明かし、舞うのである。こういった主人公たちがときに女性であるのは能楽堂という空間の特性を述べたさきの記述と矛盾するように思われようが、女性は肉体を失い霊となってはじめて能楽堂の舞台にふさわしくなるという見解の提示と考えれば納得がいくだろう。
白は死を表す色である。経帷子や花嫁衣裳を思われたい。花嫁衣裳が死をあらわすとは、と意外に思う方がいらっしゃるであろうけれども、花嫁衣裳が白いのは結婚する女性の娘としての死を表しているのである。そして白はすなわち今回のあヴぁんだんどの衣装の色である。


あヴぁんだんどは、能楽堂でのライブであることを強烈に意識し、衣装を選択したに違いない。
ふだんのあヴぁんだんどと違う、荒々しい、と読める感想が呟かれていたことから、彼女たちの戦略は明らかであるように思える。すなわち、能楽堂の舞台において、あヴぁんだんどのメンバーはアイドルらしく可愛らしい振る舞いをあえて行わなかったのだ。彼女たちは、日舞の大家がみずからの日舞の大家たることを捨てられず普段どおりに表面的な女性らしさを踊り、まさにそのゆえにこそ能楽堂という非情な空間に押し潰された故事など知りもしなかっただろうが、あたかもそのことを踏まえていたかのように振舞ったのである。


名古屋能楽堂でのあヴぁんだんどは、アイドルたる自分たちを白装束のうちに葬り、そして、かつてアイドルであった霊的存在として能楽堂に降臨したのた。すなわち、彼女たちはまさしく能を舞ったのである。

 

あヴぁんだんど、おそるべし。

 


※1: 能では曲のことを一番二番と数える。
※2: 能に於いては「踊り」と呼ばず「舞い」という。
※3: 能に於いては「衣装」と呼ばず「装束」という。
※4: 能の曲の多くは「前段」「後段」というふたつのパートに分かれている。

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あヴぁんだんど 2016.09.07 @ 下北沢club251

 


セットリスト:
1. さいごのクリスマス
2. オンナノコヤマイ
3. あヴぁんだんど(funny bossa mix)
4. ヴぁんでぃっつ!!!
5. Magical Symphonic Girl
6. Feedback Friday

 


下北沢club251は地下のライブハウスで、ステージは間口三間、奥行き二間と広いです。ステージの高さは50cmくらい。


ピチカートのSE、「ヴぁー!」でメンバー登場。こたおさん、夏季さん、べにさんの順。衣装は制服衣装、べにさんはお下げツインテール、左側に椿のパッチン留め、左腕に「なんでもやる係」のみどりの腕章。こたおさんは左に白地にテーマカラーのドット柄リボン、夏季さんは右に同様のリボン、ヒマワリのパッチン留め。べにさんは右手首にテーマカラーの数珠バングル、夏季さんは左手に同様のバングルと透明のバングルを重ねつけ。
べにさん「あヴぁんだんど、です!平日で!」、夏季さんとこたおさん「ウェンズデイ!」


一曲目は「さいごのクリスマス」、以前はべにさんが最初にジャンプしていましたが現メンバーの三人になってからはセンターに位置した夏季さんが最初にジャンプ。間奏で「はい、うさべに、です!」「小日向夏季です!」「小鳥こたおです!」「わたしたち!」「見捨てられたアイドル!」「あヴぁんだんど、でーす!」
エンディングの振り付けを「みんなも一緒に!」とべにさん。
今日の会場は有線マイクなのですがステージが広いため動きに対して前々日の新宿タワレコインストアほどのシバリは無いようです。
エンディング、遠ざかるトナカイの鈴に耳を澄ます三人、暗転、客席からは拍手が沸きます。

 

二曲目「オンナノコヤマイ」、夏季さんのヴァースにつづいて「みなさん、もりあがって行きましょう!聞いてください、オンナノコヤマイ!」とこたおさん。
やはりマイクコードの制約があるのかエンディングにべにさんのピルエットはなし。

 

べにさん「ありがとうございます!」、こたおさん「みなさん、平日なのに来てくださって、ありがとうございます!下北沢、いい街ですね!」、夏季さん「次は、下北沢にぴったりの、この曲、聞いてください!」、べにさん「…初めてこんなこと言ったでしょ」
下北沢にぴったりという三曲目は「あヴぁんだんど(funny bossa mix)」、こたおさんと夏季さんにプロポーズされるべにさん、こたおさんの手を取ります。夏季さんは無く仕草から、失恋の苦しさを表現するべく床を叩くしぐさ、演技に積極的になってくれたんだなあ、自信を持ってくれたんだなあとうれしくなります。こたおさんのソロ、夏季さんは縦笛、べにさんはピアノの弾き振り。

 

イントロの鳴るなか、べにさん「聞いてください、ヴぁんでぃっつ!!!」、四曲目は「ヴぁんでぃっつ!!!」です。
自らのソロ「…傷つけるためになんて…」という一節に感情があふれてしまう様子のべにさん。
エンディングは夏季さんがべにさんのツインテールをハンドルのように持ち、べにさんはなにかが歯に当たった仕草。

 

べにさん「ありがとうございました!ここで、あヴぁんだんどから告知をさせてください!」、夏季さんがCDリリイベが池袋タワレコで、無料観覧ライブは最後とアナウンスすると、べにさんは「生ハムと焼うどん」(焼きうどん、ではありません)の「チャリーン」ポーズを真似て見せます。
9月10日に単独出演のライブが二件と夏季さん、こたおさんは「食パン女子」のイベントで、夏季さんとどこかでぶつかるかも、と。べにさんは「9月11日、天下のサンリオピューロランド」で、メンバーのグッズ販売、みずからは生涯二回目のDJとアナウンス。

 

夏季さん「次の曲、行くか!」とラッパー風に。べにさん「次の曲は、つるうちはなが提供した、Magical Symphonic Girl!」
五曲目「Magical Symphonic Girl」、つるうちはなさんが初めてあヴぁんだんどに提供した曲ですね。曲中歌われる「負けるな、負けるな!」という女の子へのエールが、ご自身に贈る言葉でもあるのかなあと感じられるべにさんのソロ。こたおさんんと夏季さんの絡みのうしろで飛び跳ねるべにさん。
セリフのシーン、夏季さんの「愛されたくって…」はいつもどおりでしたが続くこたおさんとべにさんのセリフはいつもと異なっていたと思うのですが聞き取れませんでした。

 

イントロ、六曲目は「Feedback Friday」です。べにさん「最後の曲です!」、こたおさん「水曜日、だぞー!」
ヲタク氏の差し上げるカンペを見つけた夏季さん「これは、カンペです!みなさん、カンペ読んでください!最後の曲まで、もりあがってください!」
べにさんはソロをとったあと客席のほうを向いたままホリゾント側に下がります、足がコードに引っかかりそうになりますが笑顔で切り抜けます、ライブアイドルの根性。
ヲタクの「ウ!」「ハ!」というコールに加わって「水曜日、だよー!」とべにさん、こたおさんのソロでは舌を噛んだように歯列から覗かせるべにさんはMIXを先導し、ヲタクが肩を組むところでは足を横に蹴りだします、ちょっと「オンナノコヤマイ」のラストの振りみたいですね。
いつもは三人がピルエットする「メリーゴーランド」、今日は夏季さんだけが回転、引っ込み思案が消えたのでしょうか、嬉しいことです。
下手から夏季さん、べにさん、こたおさんと前一列に並んだメンバー、こたおさんが一回転、べにさん「盛り上がり、まだまだ行って!」、三人が客席に背を向け、こぶしを突き上げて終わり。

 

べにさん「ありがとうございます!」
「以上わたしたち!」「見捨てられたアイドル!」「あヴぁんだんど、でーす!」、応えての「やっぱ、あヴぁんだんど、だなー!」にはべにさんも唱和。

 

MCを少なくして曲数を増やす、観客への甘えの無い、あヴぁんだんどのステージでした。
 

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あヴぁんだんど 2016.09.05 @ 新宿タワーレコード(インストアライブ)

 


セットリスト:
1. 勝手にしやがれ
2. あヴぁんだんど
3. てのひら
4. オンナノコヤマイ
5. ヴぁんでぃっつ!!!

 


リハーサルを見られるかな、と、30分前に会場に到着するものの、すでにリハーサルは終了したあとでした。居合わせたヲタク氏に伺うと、すでに30分以上前にリハーサルは終わったのだったとか。後でわかるのですが衣装が特別なのでその準備のためだったようです。


ピチカートのSE、上手奥の楽屋から聞こえる「ヴぁー!」は楽屋への扉が閉じられているためこもって聞こえます。
夏季さん、こたおさん、べにさんの順にメンバー登場、彼女たちを見るなり客席からは「ワオ!」と声が上がります。そう、今日はなんと、さくらいかおりさんの手になる浴衣を着ての登場だったのです。浴衣の下半身はサテン生地に刺繍を入れたモンペの形になっていて動きやすさを重視したことが伺えます。べにさんはツインテール、左側に薔薇の花のコサージュをたくさん、右には和風な紐細工の髪飾り。夏季さんは右側にテーマカラーのギンガム柄パッチン留めふたつ、左側に細く三つ編みと鶴の髪飾り。こたおさんはポニーテール、左側に鶴の髪飾り。三人とも上履き、夏季さんとこたおさんはテーマカラーのソックス、べにさんだけ白地にテーマカラーたる赤の格子が入ったソックスです。三人とも右手に数珠がたのバングル。

べにさん「あヴぁんだんど、です!今日は浴衣だよ!」


一曲目「勝手にしやがれ」は「夏休みがやってきた」と歌いだされますが、夏の初めからこの浴衣を着て見せてほしかったな…それでも今日着てくれてよかったですけれども。マイ
クが有線なのが数日前のヒソミネのかつての状況を思い出させます。
「普段のあヴぁんだんど」シーン、こたおさん「あー、明日からテストだ!」、べにさん「夏、がんばった!」、夏季さん「ありがとうございます!」
そこからのパート、べにさん「ヲイ!ヲイ!…もっと!」、夏季さん「元気出していきましょー!」と以前からは考えられない張り切りぶり、べにさん「跳ぶよ!」

 

二曲目「あヴぁんだんど」、べにさん「改めましてこんばんは!あヴぁんだんど、です!タワレコ!盛り上がってください!」
こたおさんのソロの後ろ、おもちゃの日本刀で夏季さんに切りかかるべにさん。
マイクが有線のためでしょう、動きに制約があり、べにさんはいつもならピルエットする「ここにいると…」のソロ前にはピルエットしません。
立ち上がってピースサインのべにさん、インストアだけにサークルモッシュは無し、べにさん「みんなで一緒に!」、ラストは三人で「センキュー!」

「はい、ウサベニです!」「小日向夏季です!」「(小日向?とかなんとかひきずられて言い間違ったあと)こたおです!」
べにさん「今日は、浴衣の衣装です!見納め…」
今日はリリイベと紹介するこたおさん、水を飲みます。
べにさん「浴衣が汗まみれになるのを見納めください!」

 

「この体制は!」、三曲目は「てのひら」です。リリイベでもあり、本来なら今回発売のCDと同じ作曲者で近作でもある「Magical Symphonic Girl」を歌うのが普通かもしれないところ、この曲をやってくれたのは実に嬉しかったです。
こたおさんのソロの終わり、いつもならピルエットを決めるべにさんですがマイクが有線のためにここでもピルエットは無し、べにさん「タワレコ!…まだまだ行くよー!」


夏季さんのリフト、それに応えてなんと客席からもリフト、新宿タワレコのインストアではリフトは禁止のはずですが、そのアナウンスが今日は無かったな、あヴぁんだんどはやんちゃなグループとは思われていないんだな、などと思いつつステージを眺めていたのですが。

べにさんのソロ、続く「手、伸ばして!」のタイミングで、なんとオケがいきなり停止します。あまりに突然だったので、はじめは、会場スタッフによって音源がオフされてしまったのかと思いました。
新宿タワレコでのリフトはステージの上のことであっても禁止だったのか、それとも、事前に警告されていなかったとはいえ客席でリフトが起こったのがやはりまずかったのか。強制的な音源オフ、このままリリイベも中止か、と思っていたら、リフト云々はさておき、純粋にトラブルだったようです。そこここでスピーカーやコード、音源をチェックする運営さんや会場スタッフたち。
けっきょく音源は最後まで鳴らないままでしたが、客席とステージ上と、両者の合唱によって「てのひら」は中断せずに歌い踊り続けられたのでした。
エンディングのガチ恋がひときわ力強く感じられるなか、ついに最後までリズムを狂わせることなく、曲は終結します。
無伴奏のままメンバーと観客の共同作業によって演じられた今日の「てのひら」は、あヴぁんだんどが続いて行ってくれるのならば、神話的な出来事として語り継がれることでありましょう。

夏季さん「アカペラ最高!大丈夫!今の、演出でした!」、トラブルにめげない強さを持ったのだなと、じつに印象的な夏季さんの発言でした。

 

べにさんのライブ告知、7日に下北沢でライブと。鼻をほじる仕草。
夏季さんのソロが一日に二件、同日にこたおさんは社長令嬢という設定で食パンを咥えた少女のイベントに参加、翌日にべにさんがDJする件を11日にサンリオピューロランドでと紹介するこたおさん、べにさん以外のメンバーも手作りグッズを販売すると。二回目のDJとべにさん。

 

四曲目は夏季さんがヴァースを歌う「オンナノコヤマイ」、後ろに控えた二人を目覚めさせる仕草が新しく加わったような。
伴奏が入り、こたおさん「みなさん、本当にありがとう!愛してまーす!聞いてください、オンナノコヤマイ!」
「受け止めてよ!」と叫ぶべにさん、ソロを取りながら鋭くターンを決めます。
ラストの「…見せてやるよ!」で客席に背を向けて横方向にケリを入れるシーンがこの曲の白眉かな。

 

べにさん「ありがとうございました!最後の曲です!聞いてください、ヴぁんでぃっつ!!!」
五曲目「ヴぁんでぃっつ!!!」、今日のリリイベは通常のライブ並みの曲数をやってくれたわけですね。浴衣をやっと着られるということもあったのでしょうか。
夏季さんのマイクが不調と見て取るやすばやく自分のマイクを渡すべにさん、数日前にライブした大宮ヒソミネがまだ有線マイクだったころ、卒業した東雲好さんがマイクのやりとりが上手くいかないと見て取るや他人のソロをすばやく歌って歌を落とさなかったのを思い出します。
ラスト近くの「贈る賛歌」、三人それぞれの心の叫びと曲がシンクロする瞬間。

べにさん「ありがとうございます!」、特典会をアナウンスします。
「以上わたしたち!」「見捨てられたアイドル!」「あヴぁんだんどでした!ありがとうございました!」
「やっぱ、あヴぁんだんど、だなー!」「だなー!」
退場のときにおもちゃの刀でこたおさんに切りつけてみせるべにさん、そのこたおさんは刀の鞘を持って退場。

 

ももクロにも同様のエピソードがあったと思いますが、音源が停止したにもかかわらず最後まで歌い踊られた今日の「てのひら」は、ファンの間では末永く語られることでしょう。


 

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