ユナイテッド93 | 春のワルツ

ユナイテッド93

2001911日。ニューアークの空港は、朝の喧騒に包まれていた。離陸の準備を整えたユナイテッド航空93便は、40名の乗客を乗せ、サンフランシスコへ飛び立つ。その直後、ワールド・トレード・センターに2機の民間機が激突した。その頃、ユナイテッド93便の機内でも、テロリストが爆弾を持って操縦室を制圧。機内は混乱に陥るが、地上で起こっている事態を知った乗客と乗員たちは、わずかな武器を手に立ち上がった…。

2棟のビルから立ち上る煙。積み木のように崩れ落ちていくワールド・トレード・センターの映像を見ながら、それが真実と信じられなかったのは、たった5年前の現実だ。本作は、911のテロ事件でハイジャックされた4機の航空機のなかで、唯一、目標に到達することなく墜落したユナイテッド航空93便の物語。そこに映し出された、何の飾りもない生々しい真実は、圧倒的な臨場感を持って観客の胸にのしかかってくる。監督は、『ボーン・スプレマシー』のポール・グリーングラス。出演者に大物スターは存在せず、この機に搭乗した乗客の年齢などを考慮して選ばれた俳優たちと、実際のパイロットや管制官を起用している。わずか5年で、すでに薄れていくあの時の記憶を、まざまざと甦らせる本作は、どんなストーリーよりも意義深いはずだ。