一度した遺産分割協議をやり直せるか?(その2) | 名古屋市,岡崎市の相続,遺産分割,遺言に強い弁護士のブログ|愛知県

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前回には、遺産分割協議をやり直したいというお話を度々聞くこととその理由・原因をご紹介しました。

 また、遺産分割協議は合意でやり直せる可能性があるものの、債務不履行で遺産分割協議を解除して、やり直すことは難しいのではないか、というご照会をしました。

 

 では、遺産分割協議をやり直す方法は、他にはないのでしょうか。

 他にないとすると、相続人全員が合意しない限り、不当な遺産分割協議もそのまま有効になってしまうことになります。

 

 遺産分割協議も、当事者の意思表示が合致することの一種です。

 そうしますと、民法には、意思表示に問題があったときに、意思表示を取り消したり、無効にする条文があります。

 例えば、詐欺・強迫により意思表示をさせられたような場合には、民法上、意思表示の取消ができるとされています(民法96条)。

 遺産分割も意思表示ですので、騙されたり、強く迫られたり、脅されたような場合には、意思表示の内容に問題があったとして、遺産分割協議を取り消すこともできると考えられます。

 

 また、これ以外にも、民法上は錯誤無効(民法95条)という条文があります。法律行為の要素に錯誤があった場合、その意思表示は無効とされていますので、遺産分割協議が無効だと言える場合も考えられます。

 最近の例として、東京地方裁判所の平成27年4月22日の判決が挙げられます。

 この事例は、概要として、被相続人の死亡前後に預貯金が相続人の一人によって引き出されていたが、それを知らずに遺産分割協議を成立させ、その成立後に預貯金の引き出しが発覚したという事案です。

 本来の事案はもっと複雑ですが、実際に遺産分割協議の錯誤無効が認められた事案もあります。

 ただ、一部の遺産が含まれていなかったという場合には、その含まれていなかった遺産を別途、分割すればいいということで、錯誤無効が認められない可能性も十分考えられます。

 

 このように、遺産分割をやり直す方法として、詐欺・強迫による遺産分割協議の取消や、錯誤無効という方法も考えられます。

 しかし、実際に詐欺があったか、強迫があったかを証明することは簡単ではありません。

 同じく、錯誤があったかどうかを証明することも簡単ではありませんし、錯誤の場合、意思表示をした人に重大な過失があると、錯誤無効が認められません(民法95条但し書き)。

 

 そう考えますと、遺産分割協議のやり直しは、かなりハードルが高いと言えるでしょう。

 遺産分割協議で不満を持ち、後でやり直しを求めなくてもいいように準備する方が簡単で、手間もかからないと思われます。

 そのためには、怪しいと思ったら印鑑を押さない、印鑑登録証明書を渡さない、不利だと思ったら一人で話し合いに行かない、遺産分割協議書はよく読む、書いてない約束はしない(約束は全て協議書に書く)といった対策をとって、不満の残る分割協議を避ける方がいいでしょう。

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