クラシック音楽評論家にとって、オーディオは仕事道具である。だから、さぞかし立派なシステムを持っているのか、はたまた普通のシステムなのか。気になり少し調べてみた。その第一回目である。

 まずはクラシック音楽界評論の巨匠、吉田秀和。

 数年前にある番組で紹介されたらしく、使用しているスピーカーだけ判明している。ELACのFS207.2だそうだ。
 
 $あかでめいあ


吉田秀和ならタンノイあたりが似合いそうな気もするが、使用していたのはそのような高級機ではなく、ELACの入門機である。オーディオにあまりお金をかけないあたりが、生の演奏を大切にする吉田秀和の姿勢を示しているのではないか。もしもスピーカーはタンノイのウエストミンスター、アンプにはアキュフェーズの最高級アンプなどなら、幻滅したかもしれない。ゴールド・ムントあたりを使ってたらなおさらショックだっただろう。

 クナッパーツブッシュ、ワルター、フルトヴェングラー、トスカニーニなどのモノラルでしか残っていない(ワルターはデジタルもあるが)巨匠たちの演奏に吉田秀和はライブで接しているし、数えきれないほどの演奏会に足を運んでいる。それに彼は戦前から音楽に親しんでいるのであって、きっとスピーカーからいかなる音が流れてこようとも、生の音をある程度頭の中で再現できるのではなかろうか。確か吉田秀和が初めて手にしたオーディオは、中原中也が売りつけてきた蓄音機だった、とどこかで読んだ気がする。彼のバックにある経験というか、歴史が違う。
 

 吉田秀和がスピーカーを前に音楽を聴いている映像も発見した。思った以上に簡素な生活を送っているようだが、実に充実しているように見える。これぞ教養人のあるべき姿ではなかろうか。
 実はというと、僕は全集もこつこつと古本であるが買いそろえている大の吉田秀和ファン。『名曲300選』は僕の大切な愛読書である。スピーカーを買い替える際、ミーハーな僕はこれにしようか悩んでいるが、俗物な僕はこの程度の機種では我慢できないだろうな。

 でも年をとったらゆっくり音楽を楽しめるようになりたいですね。

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