裁判官たちは、何を「当たり前」と思うのか? ……「公知の事実」大全集 | ナガミネ文晶塾 ―― 決めつけない 押しつけない 「著者ファースト」の出版デビュー戦略ブログ

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 裁判所の裁判は、法律と証拠にもとづいて行われます。

 しかし、裁判所にとって当たり前のこと、常識だと考えられていることを、証拠で証明する必要はありません。

 「日本の首都は東京」だとか、「2011年3月11日に東日本大震災が発生」といったことを、いちいち証拠によって証明するのは、時間と労力のムダ遣いだからです。

 

◆ 民事訴訟法 第179条(証明することを要しない事実)
 裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

 

 前回(1月)、この「顕著な事実」についての具体例を徹底調査して採り上げてみましたら、そんなリサーチをやってまとめる物好き(私)が珍しかったのか、おかげさまで好評を得ました。

 そこで、今回は、顕著な事実の一類型であります「公知の事実」について、判例の文章をピックアップしてみました。

 さて、判決文という公文書の中で、裁判官たちは何を「当然」だと認定したのでしょう??

 前回に引き続き、順番に意味はありません。何でもありのランダムっぽさをお楽しみください。
 
 
 

● プロ野球が日本国内において広く普及していることは公知の事実であって,ファールボールが観客席に入る危険のあることも,少なくともプロ野球の観戦に行くことを考える通常の判断能力を有する人にとって容易に認識し得る性質のものといえる
 ⇒ この裁判官は、どこのファンなんでしょうね。

●自動車教習所の中には,一般的な技術的,学習的水準をもって教習を行える職員がいなかったり,施設としての相当性に問題があったり,資器材の性状,具備なども不十分なものも多々存在することは公知の事実である
 ⇒ クルマが爆発的に普及し始め、自動車教習所が殿様商売だった時代の話でしょうか。 
今はさすがに違いますよね?

●被爆者は原爆投下によって蒙った物質・人的な被害に加え,被爆後63年にわたって,多かれ少なかれさまざまな健康被害に悩まされ続けてきた。そのために,結婚や就職に支障をきたすなど,経済的・精神的にも苦しい生活を余儀なくされたものが少なくない。原爆投下によって,家屋を破壊され,肉親を失ったために,悲惨な生活を強いられたばかりか,一般の戦災者と異なり,原爆放射線の影響によって被爆後,急性症状にとどまらず,ほとんどの被爆者が長年にわたって倦怠感や疲労感に苛まれ,ときどき原因不明の病気に見舞われるなど,健康を害され続けた。健康を害された被爆者にとって,安定した職に就くことがいかに困難であったかは容易に理解されるところであるが,就職できたとしても,ひとたび病気が発症した場合には,退職したり,転職を余儀なくされたもの少なくない。被爆者の中には,結婚できないまま一生を過ごしたものも数多く存在することは,公知の事実である。
そうした背景の中で高齢化を迎えて,被爆者の平均年収は,現在,約200万円ほどに過ぎず,生活保護受給者も数多く存在する。そうした被爆者に対して,国の責任として何をなすべきかを定めたのが被爆者援護法である。
 ⇒ 国の重要な施策ですが、本音を言えば、原爆に関してはアメリカにも補償してほしいものです。

●高砂は,夫婦愛と長寿を内容とする能の作品に由来するもので,高砂人形が古くから能装束に基づいて夫婦融和の象徴として各地で制作されている人形であることは公知の事実であり,先代Eが,高砂人形を制作する際にどの部分に独自の工夫をこらして作り出したかを認めるに足りる客観的な証拠もない
 ⇒ 高砂って、披露宴の席のことだとしか思い至りませんでした…。

●親同士で子供の取り合いとなったり,子に対する暴力が主張されているケースでは,子供とともに生活していない親が,探索的な情報開示請求をすることにより,子の居住地を探索したり,それを把握した上で,子を連れ去ったり,関係者に自己の主張を通すために一定の働きかけをしたり等の行動を起こすことも稀ではないことは公知の事実である。
 ⇒ ごく一部ですが、こういう親子関係の現実もあるんですよね。

●少なくとも,専門家等によって,いろいろな議論や実践が試みられている割りには,現代社会における引きこもり・不登校問題の深刻さが解消するきざしが見えていないことは公知の事実である。
 ⇒ 原因や背景は様々あるでしょうから、たしかに難しいですよね。

●いわゆる医療過疎地帯などにおいて医療に従事する医師等であれば,専門領域などないに等しいほど 幅広い領域の疾患に対処せざるを得ないことは 公知の事実である。
 ⇒ 過疎地の弁護士にも似たような事情がありそうですね。

●アルミニウム箔が、通常銀紙と呼称表記されていることは公知の事実である。
 ⇒ 「銀紙」は、さすがに死語に近いかも。裁判官の間では「通常」なのかな?

●広義の風俗営業なかんずく性風俗関連営業は,決して固定的なものではなく,時代の変遷によりあるいは地域的な事情によってその形態が変化し,あるいは新たな業種が出現してきたことは公知の事実である。
 ⇒ その辺の事情って、裁判官として働いていたら、嫌でも詳しくなりそうです。

●今日、事業者が労働者に時間外労働・休日労働を命じることが少なくないのは公知の事実であって,
 ⇒ ちなみに、裁判官の仕事では何時間働いても残業代は出ません。

●「国際」の語は,学校の名称の中で用いられる場合,帰国子女のための学校であるとかの役務の内容を表示したり,外国に分校を有するなど役務の提供場所を表示するものとして使用されるとは限らず,国際的な視野を有する人物を育成するといった漠然とした意味で用いられることが多いことは公知の事実である。
 ⇒ 全国の「○○国際大学」は、漠然としているそうです。

●修学旅行は大体二日ないし四日で終るが、出発の前日および帰着の翌日には参加教職員の勤務が軽減されることを通例としていることが認められるが、このことは、旅行に際しての教職員ならびに生徒の事前準備や疲労回復のための考慮によるものであることは公知の事実であり、
 ⇒ 確かに授業は午前中で終わってたかも。遠い昔なので、定かじゃないですが。

●石川県が我が国の他の都道府県と比較して,地震の数が少ないことは公知の事実であり,証拠〔乙6(添6-5-2)〕によれば,歴史時代において,本件原子炉敷地から100キロメートル以内でマグニチュード7を超える地震が起こった記録があるのは,1858年の飛越地震(マグニチュード7.1)のみであること,歴史時代において記録が残されている地震で本件原子炉敷地周辺が受けたと推測される震度は,強震以上が5回,烈震以上が2回で,激震はないことが認められる。しかしながら,他方,我が国において,過去の地震活動性が低いと考えられていた地域で大地震が起こった例が珍しくはない上,むしろ従前地震が起こっていない空白域こそ大地震が起こる危険があるとの考え方も存在する。
 ⇒ 日本に住む以上、震災はどこでも起きうることを前提にしなきゃいけませんね…。

●企業が大学の新卒者を雇用するについて、早期に採用試験を実施して採用を内定するような方式は、わが国において広く行なわれているところであり、これは、終身雇用制度の下における企業間の優良な従業員獲得競争の結果であり、一方においては、企業は、一応確保した者に対してなお調査を補充して従業員採用についての危険を無くしようと意図しているものであることは、成立に争いない甲第一二、第一三号証、同第一六号証、乙第七号証の一、二、同第一一ないし第一六号証によつても認められ、また公知の事実でもある。
 ⇒ 内定が出た学生を対象に、よりよい他の企業へこっそり移るのを支援するサイトもできたらしいですね(こないだのWBS情報)。企業側もウカウカしてられないようです。

●学業成績と業務上の成績ないし能力とはかならずしも一致しないものであることは公知の事実である
 ⇒ 軽いイヤミでもあります。この裁判官は、学歴も良くて仕事もできる……んですよね?

●近時自家用車を所有しない業者の存在はむしろ例外であることは公知の事実である
 ⇒ 現代だと、ネットなどの通信手段さえあれば、移動手段はさして重要じゃないと考える事業者も多そうです。

●とくに最近-本件問題の時点における土地-とくに東京などの大都会およびその周辺地区における宅地の売買価額の高騰は驚くべきものがあることは当裁判所にとつて公知の事実であり、
 ⇒ おっと、昔話ですな。

●個人企業と何ら経済的実体の異ならない法人成り企業(その多くは同族企業である。)が多数存することはいわば公知の事実であり、
 ⇒ 確かに多数存しますよ。個人事業主とは取引をしたがらない会社もありますしね。

●今日、交通頻繁な幹線道路ではどこでも大なり小なりの事故が発生していることは公知の事実であつて、
 ⇒ この裁判官は、何を見たのかな?

●幼稚園については、就園率がかなり高くなつてはいても、義務教育とはされておらず、国・公立のものはなおその数が少くて、多くは私立であり、しかも小規模のものが多いことは公知の事実であり、
 ⇒ 待機児童問題も深刻です。

●立川市が東京のいわゆるベツドタウンとして近年著しい発展を遂げ、他地方よりの流入者の割合の高い地域である(この点は公知の事実である。)
 ⇒ 立川も東京ですけどね…。イケアもできましたし、ベッドを実際に売ってるタウンになりました。

●航空運賃の中で機内食の食材購入費が占める割合は微々たるものであるところ、各航空会社とも機内サービスや機内食の質の向上に努めていることは公知の事実である
 ⇒ LCCは、その逆の戦略を踏んでますね。機内食について、運賃とは別料金を取ったりしますし。

●教義によつては土曜日を特別に宗教上重要な日とし、あるいは金曜日をそのような日と考え、また、曜日によつてではなく特定の暦日をそのような日として扱う宗教があることは公知の事実である。
 ⇒ 確かイスラム教徒にとっての金曜日は礼拝の日で、仕事は休みでしたっけ。

●NHKがわが国における唯一の公共放送としてその放送内容につき国民一般から高い信頼を得ていることは公知の事実であり、
 ⇒ 信頼しております。お笑い番組も増えました。

●火山灰は砂状の細い熔岩の砕片であつて、これを除去するため、箒などで灰を一個所に掃き集めようとすると、灰が舞い上り、灰を浴びながら作業せざるを得ず、舞い上つた灰が目に入り鼻孔から口腔内に吸引され、ときによつては目や鼻に炎症をおこすこともあるため、同作業はかなりの不快感と肉体的苦痛を伴うものであることは公知の事実である。
 ⇒ 鹿児島ならではの公知の事実。

●日本赤軍による度重なる破壊活動に対しては、日本国内はもとより国際世論からも非難が浴びせられ、世界各国は、そのような破壊活動を惹起させないよう最大限の努力をする必要があることを認識し、いろいろの対応策をとっていることは公知の事実であり、
 ⇒ いろいろの対応策とは何だろう。ドキドキ。

●レバノンがマロン派を始め多くの宗派に分かれるキリスト教徒とシーア派及びスンニ派に分かれるイスラム教徒との複合国家であり、昭和五一年から昭和五二年にかけての熾烈な内戦を経た後のレバノン国防軍(政府軍)は、政権を握るマロン派キリスト教徒、特にフアランジスト(カタイエブ)党の民兵組織とその構成の上で截然と区別し得るものではなく、また、フアランジスト党の民兵組織がレバノン国内のPLOないしパレスチナ難民と厳しく敵対していたことは、公知の事実といえる
 ⇒ すげえ! これって公知の事実なのか? 教えて、池上さん!

●角運動量保存の法則を含むニュートンの運動の法則は真理であり,これに反する現象は未だに見いだされていないということは顕著な事実である。
 ⇒ しまった! 「顕著な事実」が混じってました。まあいいか。

●神戸と岐阜は、その距離や交通事情から見て、それほど往来困難な遠隔地でないことは公知の事実であり
 ⇒ こだまでね。

●高校生になると体力が増加するのは公知の事実である
 ⇒ だいぶ個人差がありそうなことを、こんなに言い切っちゃっていいのでしょうか。

●本来売買の対象とはなり得ない酒類販売業の免許が公然と売買され,その斡旋を業とするブローカーが暗躍していることは,マスコミでも報道されているとおり,ほぼ公知の事実である。
 ⇒ ほぼとは?

●一般に,証券会社の従業員が顧客に取引を勧誘するに際し,セールストークとしてある程度の誇大宣伝を行うことがままあることは,公知の事実であると認められる
 ⇒ 証券会社からクレーム来ませんかね?

●インターネットによって情報を公開した場合、その情報は即時かつ際限ない範囲にわたって伝達し得ること、また、特に個人に関する情報については、何らかの形で悪用されるおそれがあることについては、いずれも公知の事実である。
 ⇒ 善用されるものは、悪用もされますね。

●家電量販店においては,店頭表示価格と,店員との交渉の結果最終的に提示される価格(以下「値引後価格」という。)とが異なる(後者の方が安い)場合があることは公知の事実である
 ⇒ この裁判官、家電を値切って買ってるんでしょうか。裁判官が持ちかける交渉はシビアそうです。

●支給される給与の額が,年功序列,費用補償,福利厚生等,必ずしも労務の質ないし量とは関係しない要素に基づいて決定される場合も少なくないことは公知の事実である。
 ⇒ 役職における責任の重さが、給与に反映されている…という建て前もありえますね。

●発泡スチロールが割れたり欠けたりしやすい材質であることは公知の事実であり,
 ⇒ 間違いない! 発泡スチロールをザラザラの壁にこすりつけて削り取って、「雪だ!」とか言いながら散らかしたもんです。

●バブル崩壊による土地下落という,当時においては予測不可能な経済的要因に基づくものであり(当時予測不可能であったことは,公知の事実である。)
 ⇒ この裁判官、まさか、バブル崩壊で大損こいてませんよね。

●禁煙に失敗している人も多くいる反面,禁煙に成功した者も多く存在するのは公知の事実である
 ⇒ 人生いろいろです。

●我が国において,「MENDEL」(メンデル)が,メンデルの法則を発見した植物学者として広く知られていることは公知の事実であり,
 ⇒ はい、メンデルさんは、その人しか知りません。

●現在経済界の一般的な傾向では週休二日制(月間二二日勤務)を妥当としてその実現に向かい努力中で、労基署でもその指導をしていることは公知の事実である。
 ⇒ これが1990年の判決文ということなので、実現はなかなか厳しい道のりかもしれませんね。

●帝王切開を複数回行うことによる母体への身体的危険が大きいことは公知の事実である
 ⇒ それでも子どもをほしい夫婦は、たくさんいますよね。

●成人映画にいわゆる成人とは、原判決もいうように一八歳以上の者をいうことは証拠上明白であるから、人間的には未だ未成熟の者をも含み、他面、性的成熟期はむしろ一八歳以上にあり、かつ、いわゆる性的犯罪が、統計上、一八歳以上の少年並びに法律上の成人である二〇歳以上の者のうちその若年層に集中していることは公知の事実というべきである。そして、映画の観覧は、文芸作品等の読書と比較してより安易になしうるところである。それ故、本件映画が成人映画であるからといつて、その猥褻性の判断について格段に利益な考慮が払われるべき道理はない。
 ⇒ 10歳でいろいろ心得ている子どももいれば、40歳になってもあんまりわかってない人もいる。だけど、法律的には年齢という基準で区切るのが便利で合理的なんでしょうね。


 
((関連記事)) 2014.1.19
もしかして、裁判官は庶民的? ……『顕著な事実』大全集