今日のNHK交響楽団のコンサートは、オーケストラのサウンドでジャズを楽しめる、質の高い演奏を聴くことができました。

 

冒頭のショスタコーヴィチの「タヒチ・トロット」から、弦楽器が柔らかなサウンドを奏で、格調高い雰囲気を作り出します。続く「ジャズ組曲第一番」はフォックストロットが素敵でした。ピアノの塩谷哲さんの柔らかな音とオケが良く合っています。

 

前半ラストのチック・コリアの「ラ・フェスタ」も、ラテン系のノリの良い演奏というよりは、オケのサウンドの持つゴージャスさを最大限に活かした演奏。塩谷さんも手を加えた編曲はまるで一つの壮大なファンタジー作品のようで、オケでこそ聴きたいと思えるようなものになっていました。後半で何度か出てくるイ長調の颯爽とした旋律がオケによって高らかに演奏された場面は、聴いていて心地良かったです。ここでもピアノの柔らかさが全面に出ており、ピアノ・ソロの部分はまるでコンサートホールの響きを楽しみながら弾いているように聴こえました。

 

後半はバーンスタインの「オン・ザ・タウン」からスタート。さすがにここまでリズミックさを要求される曲だとぎこちない印象を受けてしまいますが、都会の夜を連想させる二曲目は素敵でした。

 

そして最後は、ウエストサイド物語からのシンフォニック・ダンス。演奏し馴れたであろうこの曲をどう聴かせてくれるのか、とても楽しみにしていましたが、期待以上の素晴らしい出来でした。

弦楽器の柔らかさはここでも存分に出ていて、「サムウェア」はため息が出るほど美しかったです。フーガの緊張感のある動きも見事。フルートが随所で素晴らしい演奏を聴かせてくれ、特に、絶望的な「ランブル」のラストから希望の光が差すような「フィナーレ」への場面転換が素晴らしかったです。この曲ではクラシカルな表現だけではなく、ノリの良さも見事。聴いているほうも気持ちが昂ってくるような「プロローグ」、熱狂的な「マンボ」。そして、感情が抑えきれずついに爆発する「フーガ」のラスト。ジャズ的な表現を楽しみにしていたお客さんも大満足の演奏だったのではないでしょうか。

 

きっちりと演奏しつつ、ジャズ的な要素も可能な限り表現しようとしたコンサートマスター、アンコールまで歯切れのある音で吹き切ったトランペット、そして、今日のプログラムにおいてもしっかりと存在感を発揮していたティンパニ・・・今日のコンサートは決して遊びのようなものではなく、日本を代表するオーケストラとして、クラシックが好きな方にも、ジャズが好きな方にも満足してもらえるようなレベルの高い演奏をする、そんなプライドの高さを見せつけられるようなコンサートでした。

 

この盤の選曲が一番好みです。

http://classic.blogmura.com/concertreview/ranking.html?p_cid=01508538