宝島社 [ISBN4-7966-5134-9]

 2006年度「このミステリーが凄い!」大賞 特別奨励賞 受賞作
 
 さてさて・・・ひどい小説である。いったい何が良くて奨励賞をもらったのだろう? 書いたのが12歳だってのが凄いってんだろ? でもさ、こりゃ12歳が書いたものじゃないな。おいらみたいに大した文章が書けない大人が書いた文章だな。でも、おいらよりは上手だけどね、この文章(笑)。ほんと。たぶん、彼女の親なんかが書いたものだと思う。一種の詐欺だな。困ったね。それは文章を読んでいくとわかる。「押せば命の泉湧く」って浪越徳二郎なんかがいきなり登場する。僕が若い頃にテレビによく出ていたこのおっさん...今はご承知のように故人なのである。現在ではテレビにも出ていない故人を12歳の少女が知るはずもないじゃない? ま、それはそれとしても、下手な文章であるけども、それなりに整然としすぎているのである。こりゃ大人が介したものに違いないのである。ま、その大人のことは置いといて...。
 
 それにしても、12歳だと仮定したら...人生経験少なくて何も知らないから人物が描けないし、第一に現場となっている東硫黄島の風景や物語のバックグラウンドがじぇんじぇん書けていないのだ。これは現在の病める日本推理小説業界の重チン(重いチンコ)たちの責任であろう。彼ら(重チンのこと)の書く推理小説は、新本格とか呼称されており、その内容は赤面するほどにばかばかしいトリックや人殺しの描写に終始しているのだ。たぶん人との接触もあまりなく、そのために取材もしないのだろう。だから登場する風景、人物、警察や自治体の施設などについても抽象的であり、詳細が書けないのである。それが12歳の作者にも遺伝しているのだ。ただし、この小説が本当に彼女が書いたモノであるならば...である。
 
 そのため、この小説は、登場人物たちがずっと意味のない話をして、ひどい殺され方をしていくだけのセリフ小説であるのだ。ブログや日記以下の代物である。本の価格が1100円とちょっとした文庫本並なのはうなずける。お試し価格ってやつか? 

 その殺され方もひどいのである。たくさん人が死んでも、無惨な殺され方をしても...「死」は架空のもののようであり、迫力に欠けるのだ。そうだよ。小説であるから架空の物語なのだが、小説以下...僕の書く落書きのように薄っぺらいのである。
 
 ちょいと待てよ。これが本当に12歳の子供が書いたものとするならば、恐ろしいことではないか? 無理矢理にサカキバラセイトなどの未成年殺人事件につなげるのは陳腐だが、だがだが...やっぱり危ないのである。一部の未成年は、人殺しをこれだけ軽く考えているのは間違いない。ひとつやふたつのサンプルを取ってモノを言うのは、それこそ危ないが...しつこいようだけど、これが本当に12歳の子供が書いたモノであるならば、本当に恐ろしいことである。
 
 あ、そうそう。こりゃ新本格探偵小説の影響というより...小説としても映画としても最低作であった「バトル・ロワイヤル」の影響が大きいように思う。なんであんなもの? 僕はあんなものがウケる今の日本そのものがおかしいと思うのである。