思いだそうとしても、
うまく思い出せない。
ところどころとんでる。
記憶がなくなるくらい、必死だったみたい。

明るく努めようと、みんなで笑顔で手をふったら、
彼はこれから何が起こるかも知らずに、
覚えたてのバイバイをうれしそうにして、
手術室行きのエレベーターは閉じた。

このときの光景は一生忘れないけど。

4時間過ぎて、泣き叫んで彼は帰ってきた。
なんでこんなめにあうんだ、て怒ってたのかもしれないし、
絶望していたのかもしれない。

わたしは少しでも安心してほしくて、
覚悟してたはずのチューブだらけの彼の姿もやっぱりショックだったし、
うまく産めなくてごめんね、とかもあって、
彼の泣き声に負けない声で
名前を何度も呼んだ。
彼が聞くと落ち着く歌も、歌ってみた。

明るくふるまう、はもうできず、
涙があふれてきたけど、
わたしの声は聞こえたみたいで、
泣きながら眠りについた。

ここからあんまり覚えてない。

その後、目を覚ました彼は、
ばあばの姿をみて、
すごく苦しいはずなのに、
まだ泣きたいはずなのに、
一瞬、笑顔を見せてくれた。

なんでそんなイイコなことしてくれるんだと、
よけいに涙がでた。

そのあとは、起きたり眠ったりを繰り返して、
ぐったりしていたけど、
聞いていたよりずっと落ち着いていた。

泣いたり暴れたりで、
お母さん徹夜覚悟しといてください、
といわれていたけど、
彼は、眠って眠って、暴れもせず、
苦しみと向き合い頑張って適応しようとする
本当にイイコだった。

わたしに自慢できることがあるとすれば、
今回の彼のすべて。
彼の笑顔、ゴキゲンなとこ、
すべてが、わたしの自慢。

日に日に回復して、
本当によかった。

はやく退院できますように。