大相撲と砂かぶり観戦 | 山野井昇の未来紀行

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先日、大相撲観戦の機会があり、両国の蔵前国技館に行ってきました。

到着したのは、16時前。ちょうどこれから土俵入りが始まる時間でした。

案内人から誘導され、座った席が、東方の通称、「砂かぶり」と言われる土俵ぎわの溜席でした。

もともと私はこどものころから相撲は大好きでした。

夕方のこの時間が来ると、必ず祖父は、NHKにチャンネルを合わせて、顔を乗り出しながら、当時の白黒テレビを熱心に観ていたものです。

だから私は、祖父の影響で、今でも夜のスポーツニュースでは、相撲は欠かさず観ています。

さて、砂かぶりという席は、たぶん相撲ファンならすぐ分かるでしょう。審判部や力士の座る、直ぐ後の席です。

白熱する肉弾戦から、土俵を割って倒れ込んでくる力士が、勢い余って覆い被さることもあり、いつも気を抜けない席です。

ちょうど私の座った席は、まさに出番を待つお相撲さんの背中が目前に迫るところです。

大銀杏から醸しでる、すき油の匂いが、相撲ファンの私には実に心地よい。

出番を待つ力士の広い背中からは、すでにしっとり汗がにじんでいます。

迫力ある力士の背中を熟視していると、つい私の人間観察眼と好奇心がよぎります。

前頭、小結、関脇、大関、そして横綱。

日馬富士。稀勢の里。この際、目前に座る力士の背中を、じっーと次々に観察してみることにしました。

そこで私が出した感想と結論ですが、やはり力士の強さは背中と足腰で決まる、ということでした。

ふつう正面の筋骨隆々と、強くたくましい力士像が、ふだん見慣れていますが、私の観察点は異なります。

私の専門の陰陽学で言えば、ふところは陰、背中は陽となります。また、上半身は陽、下半身は陰となります。

力士は対戦相手と、「陰陽」で戦っていると言ってもよいでしょう。

もっとも相撲の古典を調べてみると、「陰陽」はあらゆる道理の基礎になります。

相撲では、四股を踏むと言われるように、腰を落とし、下半身の強化、つまり陰のパワーが重要です。

そのために日頃、稽古場では、基本の突き、摺り足を繰り返します。

つまり強いお相撲さんは足腰を鍛え上げ、その修練の賜物が、最終的に、陽の背中に結実されるのです。

次々と様々な体格のお相撲さんが、私の前に座る中で、特段に広く、分厚く、たくましい背中は、何と言っても稀勢の里でした。

大腿部の太さも他の力士に比べて、半端ではない。

しかも一点をじっと凝視し、不動の姿勢を保ったその様子は、後ろに座っている私まで伝わり、その気迫は、簡単に言葉では、語り尽くせないものがありました。

前場所の、あの奇跡の逆転優勝も、この気迫からもたらされたものだったのでしょう。

「男の背中」は、やはり昔から言葉どおりです。

久しぶりに、無言の男の背中が語る、威厳と気迫を、砂かぶりで感受できた貴重な一日でした。