日本国憲法が施行されて72年目の憲法記念日を迎えました。今日は憲法記念日らしく、私が市民自治の立場から自治体(地方公共団体)の行政権と内閣の行政権の関係について予算委員会で議論し、画期的な答弁を引き出した時のことを述べてみたいと思います。

 

私は自治体の行政権と国、つまり内閣の行政権の関係を1996年12月6日の予算委員会で橋本総理、武藤総務大臣、大森内閣法制局長官と議論しました。1996年12月というとその年の9月に初めての小選挙区制での総選挙が行われ、鳩山由紀夫さんと私が代表となった民主党が誕生した年で、直前まで自社さ政権であった橋本内閣で私は厚生大臣を務めていました。

 

私は市民運動の時代から自治体における市民参加の政治の実現に力を入れていました。しかし、憲法65条の「行政権は内閣に属する」を盾に、中央官庁は行政権は国にあり、自治体は国の決めた法律の範囲内でしか自治権が認められていない、という憲法解釈でした。しかしながら当時すでに自治体は国の決めた法律の範囲を超えた福祉手当や日照権を守るためのマンション建設規制などを条例で決めていました。

 

そうしたことを背景に私は憲法94条の「地方公共団体は(中略)行政を執行する権能を有する」という規定を念頭に予算委員会で議論しました。総理をはじめ各大臣が答弁した後、大森法制局長官は最終的に次のように答弁しました。「ただいま御指摘になりました憲法65条の『行政権は内閣に属する』というその意味は、行政権は原則として内閣に属するんだ。逆に言いますと、地方公共団体に属する地方行政執行権を除いた意味における行政の主体は、最高行政機関としての内閣である、それが三権分立の一翼を担うんだという意味に解されております。」この答弁は地方行政執行権を従来のように国の法律の範囲内と限定せず、自治権を広く認めた画期的答弁です。

 

「市民自治の憲法理論」の著者でもある故松下圭一先生からよくやったと褒められたことは忘れられません。