《モノフォニー》→《ポリフォニー》→《ホモフォニー》 | myu Music&Hobby

《モノフォニー》→《ポリフォニー》→《ホモフォニー》

音楽史上の発展の順序は、

《モノフォニー》 → 《ポリフォニー》 → 《ホモフォニー》




■モノフォニー(単旋律音楽)

ただ一つの声部からなる音楽。単旋律音楽。単声部音楽。単音楽。

ポリフォニーホモフォニーの対語。


例えばグレゴリオ聖歌に見られるように、1声部しかないテクスチュア(音構成原理)のことである。

演奏家や歌手の人数に関係なく、単一の旋律だけが続いている限り、そのような部分や全体のことを「モノフォニー」と呼ぶ。

このため、器楽と歌手が同じ旋律を重ねていてもモノフォニーと呼ばれる。

最も根本的な作曲技法であり、しばしば民族音楽では重要な創作原理となっている。





■ポリフォニー(複旋律音楽)

「多声音楽」。複数の声部が異なる動きをしながら協和しあって進行していく音楽。


「ポリフォニー」という言葉には2つの意味がある。

1. いくつもの声部から成り立つ音楽…「モノフォニー」(単旋律音楽)に対して用いる。
2. それぞれの声部が独立した音楽…古典派以降の「ホモフォニー」(和声音楽様式)に対して用いる。


ポリフォニーは全ての声部が独立し、それぞれが同程度の比重で絡み合う。

どこが主旋律でどこが伴奏か、という区別はない。


ポリフォニーは各声部の旋律の流れに重点をおいており、和音や和声は従属的に生まれたものといえる。
(独立した旋律の集合体として作られるポリフォニーでは、和音は、各声部の旋律のその瞬間の一音が重なりあって一つの和音として聞こえると考えることが出来るため)


ホモフォニーや和声(ハーモニー)が、いわば縦の同時的な重音の効果をねらったテクスチュアであるのとは対照的に、ポリフォニーにおいては水平の線条的な旋律の運動をいくつか同時に絡ませることによって、異なる音楽時間の重層構造を感じさせる効果をあげることができる。



◆ポリフォニーの歴史

ポリフォニーを用いた音楽は9世紀に始まり、12世紀ルネッサンスに音楽ではグレゴリオ聖歌などに別の旋律を重ね合わせるオルガヌムが行われた事を発端に、それ以降、複数の旋律をどのようにすれば響きよく重ねることが出来るかが音楽の世界では追求された。

15世紀中頃~16世紀末のルネッサンスの後半に、フランドル地方で活躍したネーデルランド楽派(フランドル楽派)によって多様化され、イタリアに伝わってパレストリーナによって完成した。

この流れは17世紀のバロックに受け継がれたが、そこでは根底的に変容をする。

ここでは、器楽の通奏低音がそれぞれの声部を支えて、統一感を持たせるとともに、半音階的手法や不協和音も用いられた。

J.S.バッハパレストリーナとは異なった様式の対位法によりフーガ形式を完成させた。

長調・短調の音楽におけるバロック時代の対位法による音楽では、それまでの技法に和声的な要素が加わる。

すなわち、和声の機能の考え方が加わり、調性が強く意識される。

声部間で旋律が模倣し合うような対位法もあり、その究極の形がフーガである。

フーガも、和声や調性の緊張と弛緩の関係の中で進行する。


この流れはバロック期経て、前古典派・古典派の時代には影を潜め、やがてホモフォニーに主役の座を譲る。



◆バッハとポリフォニー

バッハはちょうどポリフォニーホモフォニーの勢力が拮抗し、やがてホモフォニーが台頭する時代に生きた。

しかし、基本的な彼のスタンスは常にポリフォニーに置かれており、正にポリフォニーを最も高次元で昇華させた。

バッハは音楽の基本的な要点として、左手と右手の独立した動きに求めた。
左右の手が独立して動けるようにすることを、音楽の第一の基礎と考えた。

そして初心者にも、伴奏音型のみに甘んずる怠惰な左手を許さなかった。

それは、音楽に対するバッハの根本的な発想と関係している。


また、バッハホモフォニーの手法も身につけ作品に生かしたが、たとえモノフォニーで書かれた作品であってもポリフォニー的手法を組み入れることを行った。

例えば、有名な管弦楽組曲第3番のAir「G線上のアリア」(ホモフォニー的音楽)では、低音弦の歩みの音型や、中声部と長い旋律の対位的な動きは、既に伴奏と言う範疇を越えたもので、旋律と対声部の絡み合いこそがこの作品の妙である。



●ポリフォニーを実感できる作品
J.S.バッハ
・フーガの技法
・音楽の捧げもの
・無伴奏ヴァイオリン・ソナタ
・インヴェンション




■ホモフォニー(単声音楽)

単声音楽。和声的な様式の音楽。

主旋律・伴奏といった区切りがある。

同時に鳴る音が一つでないにもかかわらず、旋律が一つしかないことである。

1声部のみが主旋律となり、他の声部はそれを和声などで支えてあくまでも従の働きしかしない音楽。
またその作曲様式。

各声部の水平の流れに重きがおかれるポリフォニーの対概念で、音の垂直的な結びつき、和声的な流れが重視される。

1. 全声部がほぼ同一リズムで動く、厳格な和声様式。讃美歌に見られる。
2. 主旋律に簡単な伴奏がつけられた音楽。例として、モーツァルト「トルコ行進曲」など。


ホモフォニーは、現在我々が接している大部分の音楽様式で、一つのメロディーに対し、和声的伴奏が付く形のものである。

音楽の重心はメロディー部(普通は最高声部)にある。



◆ホモフォニーの歴史

ホモフォニーへの大きなうねりは、バッハのライプツィヒ時代(1723-50)頃に起こった。

バッハもこれを吸収し作品に生かしたが、本質的な彼の書法とはしなかった。

ホモフォニーの音楽では書法によって作曲者が主旋律、形式の区別を明確にしている。

モーツァルトにしろベートーヴェンにしろポリフォニーも用いたが、彼らは本質的にホモフォニー的手法を用いた作曲家である。