アルコール依存症 | myu Music&Hobby

アルコール依存症

アルコール依存症の診断

過去1年間のある期間に、次の6項目のうち3つ以上に該当する場合はアルコール依存症を疑ってみる必要があります。

1.アルコールを摂取したいという強い欲望あるいは強迫感がある

例えば、終業前になると決まって飲みに行くことを考える。
家には常に酒を用意しておかないと落ちつかない。
他のことなら外出が面倒に感じる状況でも酒を入手するためなら積極的に出かけるなど。
これが高じて仕事が終わると帰宅まで待ちきれずに車中でも飲んだり、隠れてでも飲んでしまう。


2.アルコールを飲みたという欲求を統制することが困難

今日はやめておこうと思ってもつい飲んでしまう。
一杯だけと決めて飲み始めたはずが、結局は自分の定量を越えてあるだけ飲んでしまう。
翌日に酒臭が残るほど飲む。
臓器障害を起こすまで飲む。
医師から禁酒や節酒を指導されても守れない。


3.飲んでいない時は禁断症状がある

アルコールを摂取していないとさまざまな禁断症状がある。
イライラして落ちつかない、発汗や微熱、脈が速くなる、こむらがえり、不眠、手指の細かい震えなどがある。
依存が進行した状態では、全身の大きな震えや幻覚・妄想などを起こす場合もある。


4.だんだんと飲酒量が増えてきた

かつてと同じ量では酔わなくなる。
そのために、だんだんと飲酒量が増えてきた。
耐性が生じていない人であればとても飲めないような量を飲む場合がある。


5.アルコールのために、それにかわる楽しみや興味を次第に無視するようになった

例えば、飲酒のために、家族で過ごす時間や会話が減った。
外出といえば酒を飲むことばかりを優先する。
飲んでいる時間が長くなり、他のことができなくなってくる。
休日は二日酔いでごろごろ寝ているばかりになる。


6.アルコールによって有害な結果が起きているにもかかわらず、アルコールを摂取する

有害な結果とは、アルコールに関連する身体の病気(肝臓病、高血圧、糖尿病、心臓病等々)、うつ状態などの悪化、家庭内でのトラブル、飲酒によって周囲の信頼を失う、飲酒運転などの違法な行動、職場や学校でのトラブル(急な欠勤や遅刻、成績の低下やミス、人間関係の問題等々)。



アルコール依存症とは

アルコールは、依存性のある薬物の一種です。
飲酒を続け、耐性、精神依存、身体依存が形成され、飲酒のコントロールができなくなる状態がアルコール依存症です。
アルコール依存症になると、身体、仕事、家族関係などの様々な問題が起きます。
アルコール依存症は酔って問題を起こすこととは異なります。


アルコールは、麻薬、覚せい剤、タバコ、睡眠薬などと同じく、依存性のある薬物の一種です。
そして、他の薬物と同じく、下記のようなプロセスを経て依存症という病気に至ります。

習慣的に飲酒していると、まず耐性が形成されます。
耐性とは、同じ量の飲酒でもあまり効かなくなってくることです。
いわゆる「酒に強くなってきた」状態で、少量の飲酒ではあまり効果がなくなり、同じ効果を求めて徐々に酒量が増加していきます。

そして、精神依存という症状が現れます。
精神依存とは、簡単に言うと「酒が欲しくなる」ことです。
酒がないと物足りなくなり、飲みたいという欲求を感じるようになります。
更に精神依存が強くなると、酒が切れると家の中を探したり、わざわざ出かけて買いに行くような行動が現れます。

耐性精神依存が形成され、長年ある程度の量の飲酒を習慣的に続けていると、しまいには身体依存が出現します。
身体依存とは、文字通り酒が切れると身体の症状が出ることで、酒を止めたり減らしたりしたときに、離脱症状と呼ばれる症状が出現するようになります。
代表的な離脱症状としては、不眠、発汗、手のふるえ、血圧の上昇、不安、いらいら感などがあり、重症の場合は幻覚が見えたり、けいれん発作を起こしたりすることもあります。
酒を止めると、このような症状が出現してしまうので、症状を止めるためにまた飲酒するという悪循環となり、ますます酒を止めることが難しくなります。

どこからがアルコール依存症で、どこまでが普通の酒飲みかという線引きは、はっきり出来るものではありません。
しかし、アルコールが依存性のある薬物の一種である以上、飲酒をしている人は、誰でも、依存症の回路がゆっくりと脳の中で作られていきます。
つまり、飲酒をしていれば、誰もが依存症になる可能性があるということです。
アルコール依存症はゆっくりと進行していくため、依存が作られている途中では自分では気付きませんが、しまいには、飲酒によって問題があるにもかかわらず、飲酒をコントロールできなくなります。
そのコントロールできない状態がアルコール依存症なのです。

飲酒による問題は、様々な問題があります。
まず、肝臓や膵臓、脳・神経などの様々な臓器に悪影響を及ぼします。
更に、仕事に影響がでることも大きな問題の一つです。
飲酒のせいで遅刻や欠勤をした、頭が働かず仕事の効率が落ちた、朝に酒のにおいを指摘されたといった問題は飲酒の問題の代表的なものです。
また、家族との関係も悪化していきます。
家族の信用を失い、関係がギクシャクし、その結果、更にストレスをためて酒に逃げるようになります。
うつ病などの精神的な影響、事故に巻き込まれやすくなるなど、飲酒による問題は様々なものがあります。
そして、アルコール依存症になると、そのような問題があるとわかっていながら、自分では飲酒をコントロールできない状態になっており、酒を減らしたり止めたりできなくなっているのです。

アルコール依存症と、酔ったときに問題を起こすということとは異なります。
それは「酒乱」であって、依存症とは違います。
酔ったときにいくら問題を起こしたとしても、たまにしか飲酒しない人はアルコール依存症ではありません。
逆に、酔ったときに周りに迷惑をかけなくても、飲酒がコントロールできなければアルコール依存症といえます。
むしろ、ほとんどのアルコール依存症の人は、静かに酒を飲んでいるものです。



アルコール依存症の危険因子

(1)女性の方が男性より短い期間で依存症になる。
(2)未成年から飲酒を始めるとより依存症になりやすい。
(3)遺伝や家庭環境が危険性を高める。
(4)家族や友人のお酒に対する態度や地域の環境も未成年者の飲酒問題の原因となる。
(5)うつ病や不安障害などの精神疾患も依存症の危険性を高める。


性・年齢

アルコール依存症は男女に関係なくみられます。
また、年齢もさまざまな病気です。
以前から依存症が中年の男性に多いことはよく知られていました。
今でも男性に多いことに変わりはありませんが、最近は若い女性の依存症が増えています。
習慣的に飲酒を始めて依存症になるまでの期間は女性の方が短く、女性は男性より早く依存症になります。
その原因として女性のほうが同じ飲酒量でも血中濃度が高くなりやすいこと、女性の方が男性より飲酒による肝障害やうつなどの精神科合併症を起こしやすいので飲酒問題が発見されやすいことなどが考えられます。

一方、男女関係なく飲酒を開始する年齢が早いほど依存症になる危険性が高いことが知られています。
飲酒開始が1年遅くなるたびに後にアルコール問題を起こす可能性が4~5%低下するとも言われます。
更に生まれる前、お母さんのお腹の中にいる間にお母さんが飲酒して胎児期にアルコールに暴露された場合は成長期や成人後に攻撃的な行動、うつ病、不安、アルコールを含めた薬物問題が発生する危険性を高めます。

遺伝

アルコール依存症の原因に遺伝が関係することは確かです。
特にアルコールを分解する酵素の遺伝子による違いが依存症のなりやすさに強く影響することが知られています。
更に最近では環境による影響の受けやすさに遺伝が関係していることがわかっています。
しかし、具体的な遺伝子については十分にはわかっていません。

他の精神疾患

依存症の人にはうつ病が多いとされますが、逆にうつ病不安障害注意欠陥多動性障害といった精神疾患もアルコール依存症の危険性を高めることが知られています。
その原因として例えばうつ病不安障害の場合、飲酒によってうつ病不安障害の症状を緩和しようとするためと説明されますが、飲酒するとかえってうつ病の治りが悪かったり飲酒に関連した問題を起こし易かったりしますので注意が必要です。

また、ニコチン依存とアルコール依存はお互いによく合併することが知られており、他の依存(ギャンブルや違法薬物等)もアルコール依存症の危険性を高めます。



治療方法

現在のところ、断酒以外の治療選択肢はありません。

一旦アルコール依存症になった人のほとんどは、二度と普通のお酒のみには戻れないこと、健康な生活を続けたければ一滴のアルコールも口にいれてはいけないことを、しっかりと覚えておいていただきたい。

次のように考えている人は、まだ断酒しようとは思っていないのであり、さらに病気が進行する可能性がある。

(1) 飲み過ぎが悪いのだから、2合以上は絶対に飲まないようにしよう。
(2) 平日には飲まないで、土曜日の晩だけ飲むことにしよう。
(3) 強いアルコールに手を出すとよくないので、ビールだけ飲むことにしよう。
(4) 意志さえしっかりしていれば、飲んでも問題は起こさないだろう。
(5) もう3年も止めたのだから飲めるような体になったかも知れない。
(6) ちょっとくらい飲んでも、酒を切って病院に帰ればわからないだろう。
(7) やめようと思えばいつでもやめられるので、アルコール依存症ではない。

毎日飲まずにいられないのがアルコール依存症ではない。
アルコール依存症の人は、飲まないでいることはできる。

しかし、飲み始めるとほどよいところで止められなくなる。