羽生の4回転ループ改善法

 

2017年1月5日

 

羽生の4回転ループはどのように改善すべきか。この記事のタイトルが大げさなことは認める。数多くの4回転ジャンプを観察して研究してきた。2014年度オリンピック金メダリストの羽生結弦は驚くべき日本のスケーターで数々の素晴らしい賞に輝いている。優れた闘争心とフェアプレーの精神に満ちた偉大な競技者でもある。結弦は自分を乗り越えるのが好きだ。だからこそ、ショートプログラム(SP)でも4回転ループを跳んでいるのだ。

 

フランスのマルセイユで開かれた2016/17年シーズンISUグランプリファイナルで、羽生はSPで単独の4回転ジャンプを跳んだ。この時は、ジャンプの準備段階で上半身がやや傾いてしまった(47°)。このポジションが空中での体の角度(26°)に影響した。羽生の多くのジャンプを研究して居るが、一般に空中での羽生の体の角度は他の優れたスケーターたちよりも傾きが大きい。

 

 

開始時点の分析

 

羽生はジャンプの前にステップをしている。静止画像にあるように体の角度が47°(Detail A(詳細A))になった時、ジャンプの準備が本当に始まる。この静止画像の状態の後、右膝を大きく曲げる。下の写真でわかる通り、ジャンプの長さはそれほど長いものではなく、わずか130cm(一般の長さは200cm)である。

詳細Bでは、羽生の体が最も傾斜した角度は26°になっている。準備段階の体勢の結果だ。

 

 

グローバルな位置で説明できる。下の写真を見てほしい。赤い縦線を2本引いてみた。線Aでは、頭がブレード(トウピック部分)よりも前にでている。線Bでは、4つの静止画像の後、結弦はほぼ直線上にきているが、頭は(最低限)左つま先に揃っていなければならない。

 

 

もしも

 

3回転ジャンプと4回転ジャンプに対する私の観察では、空中の体の角度は5°から20°まで変化する。実際にはISU競技者の中で結弦が4回転ループを試みたのは結弦1人しかいないので、データは少ない。たとえは、この大会のフリースケーティングで1位となったネイサン・チェンがルッツを跳ぶ時の体の角度は約16°だ。ネイサンはすばらしい4回転をやってのけた。羽生の体が最も傾いた時の角度は26°だ。(10°から17°の角度の方が効率がよいが)もしも20°でしかなければ、どういった違いがでてくるだろうか。20°にするには、47°でなく約57°にしなければならない。そうわずか10°である。ごく千紗名変化だが、4回転をやる時には、空中をとぶのはわずか1秒たらず(0.666秒)であるため、すべての小さな点が必要不可欠になる。

 

 

 

着氷部分はどうか

 

通常の着氷とは何かを定義することが重要だと思う。スケーターは当ピックで氷りに触れて、ブレードが氷りを押す。最初に氷りに触れるのが当ピックだ。着氷のバランスもとる。羽生は当ピックで愛すに触れて、わずかにブレードの前の部分を使う。私はこれを「トウピックの着氷」と呼んでいる。

 

結弦の得点は基礎点の12点ではなく、10.97だった。2つ目の4回転サルコウ(4S+3T)には優れた実施につく+3がついた(7人のジャッジのうち4人が+3を付けた)。羽生が状態の角度を約57°で準備していれば、着氷の角度は10°ではなく8°になっていただろう。そうなっていれば着氷がよくなったはずだ。

 

 

 

上の写真では、体の軸と足首の角度を詳しく分析した。足首の動く範囲は、横断面によると約44°。足首の動く最大の範囲であることに注意してほしい。

空中での足首の角度にかかわらず、結弦がジャンプを成功させる方法

 

 

 

結弦はJohn WilsonのPattern 99を使っている。ブレードの長さは28.2 cm。大きさは39(欧州サイズ 訳注:http://topic.wowmemo.com/fashion/shoes_size01.shtmlによると、24.5)だ。

 

12インチ(12" radius)の範囲は3.3 cm、27インチの範囲は4.7 cm、8フィートの範囲は約20.14cm。このブレードでは、トウピックは他の優れたブレード(たとえばJohn SilsonのGold Seal)よりも大きい。トウジャンプの回転はこのトウピックで生まれるということを念頭にいれておくことが重要だ。だが一番重要なトウピックの使い方は着氷時の使用だ。スケーターはまずトウピックで氷りに触れて、残りのブレードで触れる。この場合、トウピック部分の設計が本当に重要になる。1つではなく2つの大きなピックがあることで、結弦は着氷をやってのける。2つのトウピック(赤丸の部分)を多用してバランスを取ったのだ。

 

このジャンプの改善を目にすることができると考えるだけでわくわくする。2月の4大陸選手権と3月の世界選手権が待ち遠しい。

 

 

★以上の翻訳の原文: http://perform-live.com/our-works/video-analysis-of-figure-skating/183-how-to-improve-the-quad-loop-of-hanyu.html

一番上のタイトルにも同じリンク先をはっています。

著者のArnaudさんより写真の使用と翻訳については許可をいただきました。

 

著者のArnaud Mucciniさんはフランスの方で、10年以上のコーチ歴を持つスケート・コーチであり、ビデオ分析の専門家です。

 

 

1時間ほどでわーっと訳したものなのでまちがいいっぱいしてるかも..気がついた時に修正をかけていきますのでご容赦ください。気がつかれましたら、ご教示いただけると幸いです。