後半部分、原文でいうと、Talking it out:のところです。ポッドキャストで提供されているオーサーへのインタビューEp.10のまとめで、話題は羽生結弦君になっています。記事のタイトルとなった真央ちゃんとはまったく関係ありません。こっちを聞いた後で、全日本の結果をみて書いた記事なんでしょう。

 

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徹底的な話し合い:オーサーは最近、アイスネットワークが提供するポッドキャスト「アイストーク」(ホストはニック・マッカーベル)にゲストとして出演し、羽生との関係を明らかにする発言を行った。

 

オーサーは、スターとなった羽生に課せられた要求、このスーパースターとオーサーがスケート・カナダの前に「コネクトしておらず、ずれがあった(注1)」状態であったこと、羽生の技術に対する追求心について長時間語った。非常に興味深い内容となっていた。

 

オーサーはマッカーベルに次のように語った。「スターの座に上り詰めるのは、誰にとっても圧倒されるようなものだ。ヨナもそうだった。我々にはそのことについて、少しばかり経験がある。以前には見たことがないようなものだったけど。今やゆづにも同じことが起こっている。日本人はこのアスリート(注2)を巨大な高みに押し上げて、ファンのために最高のパフォーマンスとスケートを続けるように大きなプレッシャーを与えている。世の中、そんなものだね」

 

「そういったことをゆづと話している。「この問題はヨナの時にも経験したよ。これは過去に我々も、ヨナにも、彼女のファン(注3)にもあったことなんだ」

 

チームの過去の経験を認識していれば、羽生を元気づけることになるとオーサーは考えている。

 

「我々にはアスリート時代にも同じ経験があるということがわかっていれば、少しは心の安らぎになるんじゃないか。トレーシー(ウィルソン)はオリンピックのメダリストだ。私もオリンピックのメダリストだ。だから、「どんな気持ちかわかる」と心からいうことができるんだ。

 

羽生人気は時に理解しがたいものになっているということをオーサーは認めた。

 

「自分も、特にゆづについては、その人気ぶりと、今、課せられている要求にちょっとばかり圧倒されている。(トロントでは)二人のガードマンが必要だし、複数の調整役も必要だ。リンクには私のチームがいるが、結弦が楽にすごせるように助けてくれ、ずっと守っているまったく別のチーム(注4)がいる。

 

オーサーは大きな大会で勝利を収めた2人の生徒は、まったく別のタイプだと述べた。

 

「羽生は非常にプライベートな人間(注5)だ。ハビとゆづはまったくちがう人間だ。ゆづは母親とトロントに住んでいて、こちらで部屋を借りている。自分達の生活をしていし、基本にあるのはスケートだ。勉強もしている。大学の授業をこなしている」

 

マッカーベルはオーサーに、羽生とフェルナンデスがどのようにつきあい、相互作用をもたらしているのか尋ねた。

 

「仲がよい、本当にね(注6)。尊敬しあっているし、同じ立場だからかもしれないね」とオーサーは述べた。

 

このインタビューがさらに注目すべきものとなったのは、先月のNHK杯で取り上げられたオーサーが羽生とのコミュニケーションの問題についてオーサーが質問された時である。

 

「スケート・カナダの前には結弦とは少しばかりその問題があった。少しばかりずれがあり、整理しなければならなかったので、そうした。集まって、ミーティングをやった。会議室でテーブルの向こうにいる相手にむかって、こう言ったんだ「OK。自分にはこんな風に見える」すると、ゆづのほうから、「自分はこんなふうに感じてる」と言ってきた。

 

「だから、私はいった。「OK。いいだろう。これは役に立つ」そして、大人として、それをやってのけただけさ」

 

ミーティングはかなり深刻であったようだ。

 

「ゆづにアドバイスを送っているゆづのチームから何人か出席していた。ゆづにとって、そこにいてもらうのが重要だった」とオーサーは振り返った。「必要だと思うことは徹底的に話しあった。トレーシーもいた。そしてゆづは話をしたがったので、通訳はいなかった。少しばかり余分に時間がかかることになった。だが、本心を聞く必要があったんだ」

 

ミーティングは重要なものではあったが、責め合うようなものではまったくなかったとオーサーは述べた。

 

「不愉快なことや意地の悪いことなどかけらものなかった。ただのコミュニケーションだ。全員がそれを切り抜けて、ハグをしあって、OK、では前に進もう、ということになった。すると突然、スケートもよくなった」

 

それからオーサーは、ゆづに対する今の視点は昨年とどう異なっているのかを説明した。

 

「彼(羽生)はもちろん、いつでもパーフェクトなスケートをしたがっている。少しばかり課題がある時期がシーズンにはあるものだ。誰も10月に準備はできていないのだから...実をいうと、今シーズン、実際に築き上げてきているものにはとても満足しているし、昨年みたいに、12月にすべてができあがってしまう必要などない。なのに、突然、誰もがそれを期待する...だから今は、ただ、作品を築き上げようと努力し続けるだけだ。これまで小さなミスはあったけど、大きすぎるミスというものじゃない。次に向かって築き上げる努力を続けるだけだ」

羽生が4回転アクセルをまもなく試すのかという質問に対して、オーサーは次のように答えた。

 

「クワドアクセル(4回転アクセル)、さあ、どうだろう。おそらくゆづは地上最高のトリプルアクセルを飛んでるし、技術も優れている。飛ぶ可能性はあるか。たぶんある」

 

オーサーはそれから、さらに大きな挑戦を続け ハードルを上げ続けている羽生の不屈の精神と、洞察力を褒め称えた。「水準を上げ続けているのは、とても誇らしいことだ。今シーズン、4回転ループについて話しあっていたんだが、スケート・カナダの後で、こういったんだ。「ショートプログラムで四回転ループをやる必要は本当にないんだ」

 

すると、羽生がこう言ったとオーサーは語った。「いや、4回転ループをやる必要はあるし、それも今やらないといけない。今ほうちにミスしておかないといけない。そうしたら来年、これはつらいことでなくなるから」

 

「あっといいたくなるような答えだった。そうとも、その通り!(注7)」とオーサーはマッカーベルに告白した。

 

「スケート・カナダで勝つのは重要なことではない。もっと重要なのは、プレッシャーがある中で、ジャッジの前で、みんな(注8)の前で、四回転ループをひねり出す機会を1度増やすことだ。試合は練習とはまったくちがう状況だ」

 

最後にオーサー四回転ルッツも羽生のプログラムに入れる可能性があると述べた。

 

「とても負けず嫌いの強い選手だ。四回転ルッツも何度か降りている。近い将来にやれると確信している

(注9)」

 

http://www.japantimes.co.jp/sports/2016/12/27/figure-skating/time-mao-change-direction-give/

 

念のため、注をつけておきます。適当に無視してください。

 

Nick McCarvel(ニック・マッカーベル):ニューヨーク在住のフリーランスライターでデジタルコンテンツ作成者

 

注1: disconnectです。「ずれ」「食い違い」「(通話などの)停止」を表す言葉で、ここでは「ずれ」「食い違い」とかで大丈夫ですが、今年のショートプログラムは「コネクト」を意識しているといっています。connectとdisconnectっていう言葉が今シーズンのクリケではキーワードの一つなのかも。connectの反意語のdisconnectでは少なくも一度目は「コネクト」という言葉を残しておきたいな、と思いました。わざわざ引用符もついていることですし。

 

注2:原文は複数形でして、それだとキム・ヨナと羽生結弦、の意味になっちゃいます。一瞬、アンチがカナダまでいったのか、とぎょっとしたのですが、その可能性は低いですよね。ないと思いたい。たぶん、単数形にすべきものでしょう。口頭のインタビューをそのままおこしたような記事ですので、文法的にかみあわないところが多少あっても不思議はないです。書き起こしの時のまちがいかもしれません。

 

注3  her people、なんです。韓国人ととれないこともないですけど...

 

注4 satelite です。オーサーのチームがスケートリンク(限定)で面倒を見ているのに対して、ANAのチーム(ですよね)は、従者や衛星のようにあちこちについていっているってイメージで使っていると思われます。

 

注5:http://newslounge.net/archives/152741 にあるとおり英語のままの「プライベート」を使ってます。「チーム・ブライアン」ではたしかなかったと思うのですが、インタビューでは何度かお目にかかった言葉です。

 

社交的なハビと対照的に使っているものの、内向的、という意味じゃないでしょう。プライバシーを大事にする、とか、(仲間やまわりと遊ぶより)自分に集中してやっている、とか、ストイック、とかいうかんじかな。日本でも、練習や多少力をぬいて当然のリハあたりでも全力投球でびっくりする、という証言は多々ありますし...日本じゃ、織田君をはじめとしてなかなかのはちゃけぶりを見てますから、あれ、というかんじでもありますが、本人もカナダと日本じゃ別人格と言ってましたのでそうなんでしょう。

 

注6 原文 geniuneです。genuine(本物)ととりました。

 

注7 原文“Which was like Wow. You know what, you’re right!”です。オーサーの興奮がこの訳で通じるといいんですけど。

 

注8 crowd 集まった大勢の人、ととるなら、「観客」。ふつうはこれでいいと思います。でも、試合のインタビュー聞いていると、インターネットやテレビで見ている人のことをはっきりと意識していますので、このようにしました。オーサーの意図とはちがうかもしれません。

 

注9  competitive  競争力のある、という意味で仕事でよくお目にかかるもので、つい、そっちでとってましたが、他のインタビューでもオーサーはこの言葉を結弦君につかっていたのです。そのときは明らかに「負けず嫌い」という文脈でした。ここはどっちかなあ。

 

it’s something that’s on the horizon.  直訳すると、「(クワドルッツは)近い将来に現れる何かである」