下の姉が心臓病で十四歳の若さで急逝して、その悲しみが癒え切れぬ、私が六年生の事でした。昼休みに、
あまり親しくないクラスメートのN君が近ずいて来て、「お前とこのお父ちゃん凄いな。僕んとこのお母ちゃんが
大事な結婚指輪失うてな、お前のお父ちゃんに相談したら、**小学校の砂場掘ってみいうから掘ったら出て
きたんや。」、と親父を褒め称えたのです。真相を知りたくて、私は帰宅するとすぐに親父に尋ねました。
その問いに親父は素っ気なく、「わしや無い、かってに書いとる事言うただけや。」と、つまり自動書記だと言い切
るのです。幼い私には、分かったようで分からない返答に困惑しながらも、それに答えようも無く、それ以上深く
追究しませんでした。その頃、親父の超能力は評判となり、大阪府警の刑事が来て未解決事件の相談に来た
事もありました。親父は刑事に、人を裁く事は見ないと断ったそうです。 親父の超能力について、 最も興味を
持ったのは弟子の一人が私に言った事です。親父が空を飛んだというのです。親父に訊くと、「あいつらは若い
のに足腰が弱おおて、付いて来れん言い訳や。」と、やはり素っ気なく答えたのでした。 完