今でもふと思い出す数少ない元彼の一人、Kには私がとことんハマりこんでいた。
10代の頃に出逢った私のことを、彼は今でも「あの頃から10代特有のきゃぴきゃ
ぴが全然なかった」
と、からかい半分にいつも言う。
Kは飲み屋のオーナーで、いつも周りに人が集まっていた。
そんな彼だったけど、普段の顔を知っている私はお店を離れたときの
彼が1番好きだった。
人前では見せない、大きすぎるほどの優しさ、いたわりを持っていた。
鎧をはずした時の彼にいつもときめいていた。
別れた今でもたまに連絡を取る関係だけれど、私に対する優しさは
相変わらずで、入院した時もどこからか聞いてものすごく支えになってくれた。
彼は、私の決して表に出すことのない、心の奥底にある辛さ、苦しさを気づいてくれ
る唯一の人だった。
何度となく気づいてくれて、やっと私は気づいた。
彼も同じように、辛さ苦しさを自分の中に閉じ込めて、決して表に出すことをしない
人だということに。
周りに慕われ、いつも人に囲まれ、はたから見ればものすごく幸せに見える彼も
孤独なんだなって今となって分かる。
電話での彼、彼と2人で飲みながらゆっくり話しをする時、そんな孤独を感じている
彼を垣間見ることができる。
そんな違う一面を見てから、別れてから、私は本当の意味で
彼と裸で向き合っていると思う。
彼に隠すことはなにもない。知られて困ることは何にもない。
それは、彼もそれ以上にいろんな経験をしてきていることを知っているからだと思
う。
人の味わう辛さ、苦しさは経験したことがある人でないと奥深い部分まで理解してあ
げることはできない。
そう常に考える私は、唯一彼にだけは自分をそのまま出すことができる。
腐れ縁と化しつつあるこの関係。
私にはとっても、付き合っていた最中よりももっと居心地のいい関係にもなりつつある。