気仙沼市立本吉病院@宮城県気仙沼市 | MY LIFE AS A PIG

MY LIFE AS A PIG

山と農業と旅を愛するAkihisaのブログです。
高崎高校→北海道大学農学部→銀行員(札幌・鹿児島・福岡・US)→旅人(日本縦断・世界一周)→大分大学医学部(編入)→明日は何処…
大分朝読書コミュニティBunDoku主宰/NPO法人NICE GWCコーディネーター/財務経営アドバイザー

今回の東北は、何よりも自分自身が被災地の現場に入って活動をするなかで、震災や、その後の復興の現実について感じ取るとともに、今後自分ができるコト・関わり続けていけるコトを見出したい、という想いで訪れました。

これまでの経験やネットワークから、今回はNICEという昔から付き合いのあるNGOからボランティアに入り、現場に触れ、現場の声を聞き、現場のニーズに沿った活動を日々行ってきたわけですが、一方で今、自分は医学生という立場でもあります。
被災地との、より長期的かつ直接的・効果的な関わり方を考えたとき、それは自分が将来なるであろう「医療者」という役割と、切っても切れないモノになるのだと思います。

ただ、被災地の忙しい医療現場にお邪魔して迷惑をかけるようなコトだけはしたくなかったので、当初は現地の病院に連絡を取るコトを迷っていたのですが…。
人づてで、学生を快く受け入れて下さっている先生の噂を聞いたため、今回の東北訪問では1病院だけ、FBで連絡を取ってお邪魔させていただくコトにしました。


気仙沼市立本吉病院は、気仙沼市の本吉地区(もとよし;人口約11,000人)における唯一の病院です。
(同地区には当院の他には診療所もありません)

本吉病院は震災後に常勤医がいなくなってしまい、約半年間は全国からの派遣医師の応援により医療体制を維持してきましたが、2011年10月から川島先生が院長として赴任、2012年4月にはもう1名の常勤医が赴任され、現在は常勤医2名+後期研修医1名(※)の3名体制となっています。


$MY LIFE AS A PIG
(病院の1Fは津波を被ってしまったため改装中。ボランティアの方々が2Fの診察室へ誘導しています)


新院長の川島先生は、赴任当時もけっこうニュースになっていましたが、京都大学医学部6年生の時にボクシングでプロデビューされているというお茶目な経歴の持ち主です。笑
一時はウェルター級で西日本新人王にまでなっているので、普通にメチャメチャ強いのだと思われます。
(↑↑ 拙い表現しかできませんが、もはや自分の想像の範囲を超えてるのでww)

川島先生は、震災当時は徳州会系列の庄内余目病院(山形県庄内町)で働かれていましたが、2011年4月に徳州会グループの災害医療協力隊(TMAT)の一員として本吉病院に派遣。その後も毎週ボランティア医師として自ら当院に通い続けていましたが、地域で唯一の病院であるにもかかわらず常勤医師が確保できない状況を見かねて、とうとう自らがココで働くコトを決意されたそうです。


当院は、基本的に外来は午前中のみで、午後は訪問診療に出掛けています。
今日は午前中は川島先生の外来を見学させていただきながらお話を伺い、午後は後期研修医の先生の訪問診療に同行させていただきました。

…できればもっと何日も滞在させていただいて、現場をじっくりと見たり、先生を始め様々な方からお話を伺うべきだと思うのですが、今回はどうしても私の日程の都合上1日だけしかお邪魔するコトができず、自分の中でちょっと消化不良の面もありました。

外来や訪問診療で耳にする疾患は、他の病院見学の時と比べて明らかにユニークなモノがあるというわけではないのかなと思いました。
そうすると、すでに「災害地医療」のステップは終了していて(個別の具体的治療としては、です)、現在の病院としての課題は、従来の医療提供体制(特に高齢者を中心とした慢性疾患のケア)を、被災して社会インフラや地域性が壊された土地で如何に維持・発展していくのか、になるのかなと。
(私が今振り返っての勝手な考えなので、全然違う可能性も十分にあり得ます)

もちろん診察中の会話のそこここで、「震災のときに…」「仮設住宅では…」などという言葉が交わされているのを聞くと、地域住民の震災後のシビアな状況が今も継続しているのだと実感するのですが…。


見学しながら、自分の思考は

「この地域の将来像はどうなるのか。医療提供体制はどうなっていくのか」

に移っていきました。
ただそれは、もっと長期間、そして可能なら東北のいくつかの地域の病院を比較しながら見ていって、それぞれの地域の特徴や震災の被害状況、復興の動向等まで勘案していかなければ、見出すコトはできないのかもしれません。


…うーん、何だか全体的に歯切れが悪くてすいません。
診察・治療に直結する医学知識ももちろんですが、今回は、この国の社会保障の仕組みや広域医療圏のあり方、地域医療の形について、もっともっと理解を深めなければと思わされた一日でした。



※ 後期研修医

(医療者でない方のために基礎知識から)医学生は大学医学部6年間を卒業後、医師国家試験に合格すると資格上は「医師」となりますが、この段階ではまだペーパードライバー同様なので、卒業後2年間、「初期研修医」としていくつかの専門科を回りながら、医師として必要最低限の現場スキルを身につけていきます。
初期研修医として2年を修了後、より専門分化してスキルを高めていく時期が「後期研修医」と呼ばれます(専門にもよるかもしれませんがだいたい3年くらいのはず)。

で、ここの後期研修医は、当院で長期間研修をしているというわけではなく、日本プライマリ・ケア連合学会から、プライマリケア(総合診療)を専門?としている後期研修医が1ヵ月交代で入れ替わりで送られてきている、という形になります(学会の被災地支援プロジェクトの一環のようです)。