草野鍛冶の槍を復元 長浜市鍛冶屋町の山田さんが | 近江毎夕新聞

草野鍛冶の槍を復元 長浜市鍛冶屋町の山田さんが

 長浜市内保町で「鉄工房樂」を運営する、鉄作家の山田大輔さん(42)=長浜市鍛冶屋町=がこのほど、戦国時代に活躍していた草野鍛冶の鍛冶師が秀吉に納めたとされる「草野槍」を独自のイメージで再現制作した=写真。制作された七本は、芸術作品として来月五、六の両日、長浜市街地で開かれる芸術イベント「アートインナガハマ」に出展される。また同二十六日から旧余呉町域で開かれる「余呉まるごと里山芸術村」にも展示される。
 山田さんは岐阜県関市出身。鉄工所に勤務しながら鉄素材の工芸作品を創作していたが、昨年独立し、たまたま訪れた長浜で国友鉄砲の歴史に触れ、様々な人々との出会いを通して草野鍛冶の伝統が残る鍛冶屋町に転居した。鉄工房では鉄の素材を生かした繊細でダイナミックな手づくり感あふれる調度類やモニュメントなどを制作。鉄工芸を通して地域のまちづくりにも貢献している。
 復元された槍は、鍛冶屋町内に残る実際の草野槍を参考にしたり、独自のイメージを膨らませて創作した。赤熱した鉄素材をハンマーで打つ昔ながらの作業を続けて完成させた。
 槍先の鍛造で有名だった鍛冶屋町の草野鍛冶は、室町時代からの伝統で、戦国時代には武具や槍を生産する拠点集落の一つとして、当時百軒近い鍛冶屋が軒を連ねていたという。明治時代には農具を作る野鍛冶に姿を変えたが、昭和三十年代にほぼ鍛冶屋が消滅。現存して実際に使える鍛冶小屋は市文化財に指定されている「萬右(まんよ)鍛冶小屋」のみとなっている。鍛冶の衰退とともに、過疎化も進み、活気がなくなっていくまちを再興させようと、山田さんら地元有志が「鍛冶屋まちづくり委員会」を設立し、鍛冶文化の継承、発展でまちづくりを目指している。