20年ぶり自宅で陶芸個展 「環境芸術」の造形作家 土田さん
前衛的、実験的な造形作品や、意匠を凝らした陶芸作品で国内の美術界に旋風を巻き起こしたのち、環境のための芸術パフォーマンス「エコロジカルアート」を国内外で展開し、以後十七年余り、芸術パフォーマンス以外の造形作品の制作を止めていた造形作家、土田隆生さん(69)=京都女子大学名誉教授=の陶芸展が二十八日から、長浜市三ツ矢元町の土田さん宅で開かれる。「孫の好みに応えた」という、ユーモラスで、ほのぼのとしながらも、土田さん作品に共通する有機的なエネルギーが横溢する作品群から、中学校教諭、京都女子大学教授時代の陶芸作品までを展示予定。五月五日まで。
長浜市出身の土田さんは滋賀大学、京都市立美術大学に学び、中学の美術教諭を務める傍ら日展などに写実的な彫塑作品を出品していたが、公募美術団体の閉鎖性、因習に幻滅。中学教諭を十年で自主退職し、農耕や琵琶湖の魚獲りなど半自給自足の生活を五年余り続けながら、美術の既成概念や常識を打ち砕く作品を創作し続けた。
東京で催した個展が大きな反響を呼び、日本の高度経済成長期に次々と誕生した各地の造形公募展に相次いで受賞。「現代日本具象彫刻展」「神戸具象彫刻大賞展」で大賞を受賞するなど、国内現代彫刻の第一人者として脚光を浴び、昭和五十八年には京都女子大学助教授、平成元年には同教授を務め、創作と教育学部の美術教育のいずれもに実験的で斬新な手法を持ち込み注目されていた。一方、各地の造形公募展の作品が大型化し、「作家の資本力競争」の様相が強まってきたことに反発。また自身の造形制作も資材、燃料などのエネルギーを大量に消費し、環境への負荷が予想以上に大きいことに悩み、表現手法を模索するうちに芸術になじまないとされる環境問題をアートパフォーマンスの手法で表現することに。自然と共生した自身の体験も芸術と環境を独自の視点で見つめる契機となっていたという。平成六年、大学の授業で生徒の協力を求めて試行。白衣の女子学生が下半身を琵琶湖岸の砂浜に埋めて、独自のポーズを取るパフォーマンスが反響を呼んでいた。
土田さんは四年後、この表現を「エコロジカルアート」と名付け、次々と場所やパフォーマンスの趣向を変えて企画。フランス西海岸、サン・マロ湾上に浮かぶ小島の修道院で世界遺産のモン・サン=ミシェルの砂浜、エジプト・ギザのピラミッド直下などでも実演。大学を退職後、作陶を本格的に再開し、滋賀大学でともに学んだ妻、明子さんと「協作」した作品も展示する。
土田さん宅は知善院前の南北通りを北上し、長浜北幼稚園南側交差点を東に折れてすぐ。家屋正面に作品のウィンドディスプレーがある。午前十時から午後五時まで。
〔写真〕自宅で個展準備に取り組む土田さん