アサヒ節だよ人生は!(その11) | 僕の奥様はイエローキャブ!?《シアトル大暴れ編》

アサヒ節だよ人生は!(その11)

元彼と別れ3年も経つと、過去のこと全てが吹っ切れて、私達はお互いを、ベストフレンドと呼ぶ様になりました。たまに会うと、二人の間には、笑いが絶えませんでした。

私、40歳を超えたころから、真剣に老後のことを考え出したのです。このまま一人だったら、誰に下の世話をしてもらったら言いのだろうか...ってね。

でも、元彼とこうして会って、彼の屈託のない笑顔を見ていると、この人がじいさん、私がばあさんになった時、お互いに一人だったら、一緒に暮らそうかって聞いてみよう。どちらか先に寝込んだ方が、もう一方に下の世話をしてもらう、そんな老後もいいじゃないか。

そんな風に考えると、先のことは先になってから考えるとし、今は目の前にある“私の人生”を謳歌しようと、何年ぶりかに穏やかで、スムーズな精神状態の毎日を送っていたのです。あの男が、土足でつかつかと私の暮らしの中に入り込み、邪魔をし始めるまでは...

あの男の目的は、女のガードを破ることでした。多分、それまでにも何人もの女性のガードを破って、楽しんでいたのだと思います。男にとってそれは、1つ制覇したら、次のステージに進んでゆくゲームだったのです。

私は、男のゲームの1ステージでしかありませんでした。制覇したら次のステージの女に進むはずだったのでしょう。でも、計算違いしたのです、男。

これまでの女性は皆、男のゲームを承知で、ガードを緩めていたのです。終わったら、後腐れなく、男は次のステージに進めました。

ところが、ずっと愛に飢えていた私は、こんな男のことを真剣に愛してしまったのです。完全に立場は逆転して、男にどんどんのめり込んで行ってしまいました。そして、男の母親が、子供の時に男を溺愛したように、私は母性本能丸出しにして、男に尽くしたのです。

無茶な生き方をしていた男だったけれど、淋しい心の持ち主で、私が愛情を注ぐと、それが心地良かったらしく、ゲームの次のステージに進まず、私のところに居座ってしまったのです。

でも、“アイ・ラブ・ユー”とは、いつまで経っても言ってくれませんでした!

愛情をコミットしたくなかったのです。まだ20代の頃、遊び半分で交際していた女性に、心にもない言葉“アイ・ラブ・ユー”を言ったばかりに、結婚、後に別居と、自分の人生を狂わせてしまったことを、後悔していたのです。

あのM子ちゃんと私にシャンペンをご馳走してくれた夜、男は言いました。自分は一人の女では我慢できない男だから、もう女はこれ一人っきりと、確信の持てる人に会うまでは、愛情は絶対にコミットしたくないって。

男は私に愛情をコミットする代わりに、無責任に、二人の将来を匂わす話ばかりし、おまけにあの“ハニーという媚薬”を私に盛り続けたのです。

あのシャンペンの夜の男の言葉が、ずっと頭の中にあって、私、馬鹿だから、私なら男に愛情をコミットさせられる、そう自惚れたのです。そして、無責任な男の話を聞きながら、二人の未来像をしっかり頭の中で描いていました。

私、男に気に入られよう、浮気されないようにしっかり捕まえていようと、必死でした。

男は、資産家の長男であることが自慢で、自分は一文なしのくせに、セレブと呼ばれる人達が集まるところに通っては、家からもらう遺産を当てに、散財するのが大好きだったのです。

上流階級の人達の遊びは、だから何でもしたがりました。その1つがコカインでした。

私ね、昔から酒も飲んだし、タバコも吸いました。飲んでハッピーな気分になるのが大好きだったから。吸ってほっと一息つくのが気分転換だったから。

でも、ドラッグだけは全く興味がなかったし、手を触れたいとも思いませんでした。でも、ハイソな女達は皆吸っている、だからお前も吸え。パーティーの度、そんな風に押し付けられて、彼好みの女になりたくて、コカインを吸ったこともあります。

白い粉をクレジットカードで砕いて、ストローのように丸めた札で、鼻から吸うのです。あれね、鼻の中は傷ついて出血するし、翌日からひどい鼻づまりを起こし、呼吸出来なくなるのです。

一度、ピカデリーサーカス近くのバーで、怪しい男から手に入れたコカインを吸わされたことがありました。心臓が激しく脈打ちました。頓服か何かの混ぜ物が入っていたのでしょう。

そのバーのトイレで、私、ぶっ倒れたのです。映画『パルプフィクション』のワンシーンのように。そうしたら、バウンサー(バーの用心棒)二人が来て、粗大ごみのようにして、私を通りに放り出しました。

そこまでして、命かけても、こんなバカ男に気に入られようとしていた私。今考えたら本当滑稽だけれど、あの時は、必死に男の心を掴もうとしていたのです。

男は、酒が弱いくせしてがぶ飲みし、いつもべろんべろんに酔っ払っていました。そして酔うと、口数が増え、暴言を吐くのです。交際して2ヶ月くらい経った頃、そんな酔った勢いで、私の一番聞きたくないことを口にしました。

浮気!

バカ正直に100%信用し続けていた男の言葉は、みな嘘っぱち。陰で他の女と...

腹を立てるよりも、自分の愚かさに情けなくなりました。もうこれっきりにしようと決めたのです。

そうしたら男、不治の病の母親の命にかけて、もう二度と浮気をしないと誓ったのです。そして、愚かな私はその言葉を信用して、縒りを戻したのです。

でも、それからの男は変りました。ちょうど年の瀬で、私は日本へ里帰りすることになったのです。出発の前日、日本から戻ったら、二人のことをちゃんとしようと、素面で男が言った時、私、うれしくって、やっと気持ちが通じたと、有頂天になったのです。

年が明け日本から戻ると、二人のことを話し合う状況ではありませんでした。住んでいるところを追い出された男、ホームレスとなったのです。

チャンスだと思いました。私のフラットに泊めて、側で監視したら浮気も出来ないし、何より、男に“アイ・ラブ・ユー”を言わせる、一番の近道だと考えたのです。

大きなスポーツバッグに、身の回りのものだけを詰めて、男は私のフラットに潜り込んできました。6年前のバレンタインズデーのことです。ロマンチックなはずのその日に、何が起こったかは、2月14日の記事 の通りです。

あの翌朝、素面になった男の態度は一変しました。しおらしく、もう二度と浮気はしないと、またその安い頭を下げたのです。

母親の命にかけて誓っても、一ヶ月も守れなかった誓い、私は信用していませんでした。なんでこんな奴に自分を台無しにされながら、それでもしがみついているのか。そう考えると悔しかったけれど、この時も私、男を許したのです。

私のガードを破るのが、男にとっては、ゲームの1ステージだった様に、男に“アイ・ラブ・ユー”と言わせることは、私のゲームの1ステージだったのかも知れません。

とりあえずは元の鞘に納まり、表面的には平和が戻った風の二人でした。でも、こんな男のことです。予想通りのことを、また繰り返してくれました。でも、その時の私は、それまでの2回とは違ったのです。

浮気男とバカ女の結末は、それからちょうど一ヵ月後のこと、日本で言うならホワイトデー。私が半狂乱になって大暴れした夜のことでした。

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