渋谷区恐妻家組合-歯を抜いた後の顔って、こんなもん
昨日、またしても俺は歯医者に行くハメになった。例のヨン様歯医者に「さぁ、今日は親不知を抜きましょうねぇ」と嬉しそうに言われるが、こっちはちっとも嬉しくねぇんだ。早速、歯茎に麻酔をするのだが、これがなかなか痛い。3分も時間をかけやがって。そんな時間があれば、ラーメンだってできるぞと思う俺。歯を削って神経を取る所まできたのだが、痛みが襲い俺は首を切られた後、まだ羽をバタつかせる鶏のように暴れた。
歯医者「武藤さん、麻酔が効きにくいので、もう一本打ちましょう」
こうして、また3分間も麻酔を打たれるのだが、今度は舌が麻痺してきた上に、顔面の右が引きつるような感じがした。これじゃぁ、俺の顔面はバイク事故を起こした後に会見した、ビートたけし状態だ。

そして歯医者に歯を抜かれるのだが、歯を抜く音って、ずいぶん気持ち悪いねぇ。歯を抜いた後、血が出るわ出るわ。その後止血して、歯医者を後にするのだが、やたらと血が止まらない。渋谷の街中で血を吐いたら、親切?なおネェさんが救急車を呼びやがって、俺は救急車でH尾病院に運ばれてしまった。そして、顔が麻痺してるから喋る事ができない。H尾病院の医者に筆談で俺は歯を抜いただけであって、頭以外どこも悪くない!と言って、家に帰る。
家に変えれば帰ったで、彩絵が「ドテチン。今日はごちそうやで」と上機嫌だ。俺は顔が麻痺して、喋る事ができない。
「どうしたんだ、そんな上機嫌で?ナベツネでも死んだのか?」
彩絵「それよりもえぇ事やがな。村上ファンドが撤退して、阪神が救われたんや!」
食卓には、赤飯にタイの尾頭付きに、お吸物。紅白の蒲鉾に煮しめ。まるで祝膳だ。
彩絵「ドテチン、歯ぁ抜いたんやろ?せやから、ドテチン用のメニューも用意したで」
そのメニューは赤い粥に、たい焼きの衣を付けて揚げたクリームコロッケに、よく煮込んだ味付け昆布。極め付けが紅白のポテトサラダだ。よく、こんなメニューを作るよ。
俺は、赤粥を恨めしそうに喰いながら、尾頭付きのタイを食べ、赤飯を食べる彩絵と、長女&長男が羨ましいと言うよりも「俺へのあてつけもいい所だ!」と思いつつ、引きつる顔でメシを喰ったのだった。
渋谷区恐妻家組合-未だに怖い
俺の娘、沙希(6歳)が昨日から歯が痛いという。彩絵は俺に「ドテチン、歯医者連れて行ってあげなさいよ。ついでに、あなたも歯医者長い事行ってないんでしょ?この機会に、歯の検診でもしてきたら?」と言いやがる。俺にとって歯医者は、虚塵とバカ乃花と同じ位に嫌いな存在だ。忘れもしない2001年5月1日。俺が22歳の時だ。親不知が痛くなって歯医者で抜歯した後、虚塵が中日に17-0で負けた試合があった日だが、、最終バッターの高橋由がアウトになって試合終了になったと同時に、麻酔が切れて歯が痛くなった上に、虚塵のボロ負けがあまりにもおかしくて、「痛おかしい」状態に陥ってしまった。痛おかしいと言うのは、痛さとおかしさでのた打ち回る状態の事で、それ以来、俺は歯医者が怖いのだ。

俺は、顔が青ざめていた。
彩絵「ドテチン?あんた、歯医者が怖いん?」と挑発的に聞きやがる。
「バカ言うな!来月28(歳)になるのに、歯医者が怖い訳ないだろ!」
彩絵「フ~ン、意外やなぁ?ウチ8月で、31(歳)になるのに未だに歯医者怖いねん。ドテチンが歯医者怖ない言うて、これで安心して沙希を歯医者連れてってもらえるわ」
なんとヒドい嫁だろうか?俺にカマをかけるとは。しかし、ここで「歯医者が怖い」なんて言ったら、確実に彩絵にバカにされた挙句に、ジャンショーグンに言い触らされるだろう。アイツは獣医師の上に、医学を志す人間でありながら「歯医者が怖い!」と言うくせに、俺の歯医者嫌いを合コン等でバラしまくるヒドい兄貴分である。

結局、俺は沙希と歯医者に行くハメになった。ご丁寧に彩絵が歯医者に電話で「女の子と、エスキモーみたいな野人系のマッチョな男が伺いますので、よろしくお願いします」って、エスキモーみたいなのはねぇだろ!まぁ、確かにエスキモーとよく間違われるのは確かだが。
こうして歯医者に行って、診察室(別名:処刑室)にすぐに入れられた。沙希の方は単なる歯茎の腫れだったが、俺のほうはロン毛でキンパの、ヨン様ソックリな若いニィちゃん(一応、院長のようだ)「いやぁ、これはヒドいですねぇ。虫歯が7本。それもC3ですよ。オマケに変な位置に親不知が生えていて、たまに歯茎痛くなりませんか?」と図星を突きやがる。
歯医者「この機会に虫歯を全て治した上で、親不知も抜いてしまいましょう」と優しい?微笑みで言われた。更に「また、結構歯石も付いていますねぇ。今日は、歯石を取りましょう。それから虫歯の治療をして、親不知の治療をしましょう」
俺はギロチン台みたいなイスに座らされた挙句に後ろに倒され、空気洗浄機みたいなものを口に突っ込まれ、ヨン様歯医者に容赦なく歯石を取るのだが、ヨン様歯医者は「こりゃぁ頑固な歯石ですねぇ。葉の裏までに侵食してますよ。ヘタしたら30代総入れ歯になりますよ」と脅しをかけやがる。
この歯石を取る音がたまらなく気持ち悪い上に、歯茎に針金みたいなものが引っかかって、痛さのあまりに「ギャァ~~~!」と絶叫した上で、と殺寸前の豚のように悪あがきをする有様だ。
歯医者「あらあら。これ位で痛いようじゃ、これから先が困りますよ。それに、沙希ちゃんに笑われますよ」
このヨン様歯医者、優しい顔に似合わずとんでもないヤツだ。こうして、40分間拷問のような時を送ってしまった俺は、待合室で脱力感に包まれていると、受付の可愛いおネェさんが「沙希ちゃんの方は今日で終わりですね。とりあえず、薬出しときましたのでそれ飲んで下さい。で、武藤さんの方は、月曜日また来てください」と言いやがる。冗談じゃねぇ!月曜日と言えば、(6月)5日じゃねぇか!一体、何回歯医者に通うのだろうか?
そして、彩絵。よくも俺にカマをかけた上で(大嫌いな)歯医者に行かせた挙句に、これから暫く地獄を味わう事に対して「日頃の行いが、ドテチンは悪いからなぁ」と笑いやがって!
ヨン様歯医者と言い、彩絵と言い「笑顔の素敵な人間」は(常人では考えられない)恐ろしい事を、俺に対して躊躇なく平気でしやがるなぁ......。
渋谷区恐妻家組合-TCKのパドック
万馬券。なんといい響きであろう。しかし、これが武藤家7月の変が起こるきっかけになってしまうとは思ってもいなかった。いつも通り職場から帰ってきた俺は、まず風呂に入る。しかし、この風呂ダチョウ倶楽部の熱湯風呂じゃあるまいし、ハンパじゃなく熱い。おかげで俺の足は紅白餅のように真っ赤と真っ白になってしまった!

嫁に「何でこんな熱い風呂を用意してるんだよ。釜茹でにする気か!」と激怒したのもつかの間、逆に彩絵に「綾ちゃん、これは一体なんや!?」と1枚の紙を、眉間へのパンチと共に突きつけられたのだった。この紙は六本木のキャバクラの領収書である。
彩絵「御飲食代¥126,480って、なんやこれ!?説明せんかい!」
「こ、これはですね。ナショナルと一緒に行った大井競馬の帰りに、万馬券を当ててだね。それで祝杯を挙げた次第なんです」まるで、この時の俺は、ハングマンの実験台状態のモルモット叔父さん状態だった。
彩絵「万馬券?ほな、これもそうか?」
彩絵が更に、顔面にパンチで叩きつけた紙切れ、これは"ソー○の領収書"だった。どうやら、俺が領収書をジーパンのポケットに入れたままにしていたのを、ジーパンを洗濯する際にポケットを確かめた彩絵によって見つかってしまった、悲劇である。
怒りの収まらぬ彩絵は「アンタ!今すぐ財布の中身見せぇ!あんたの性格からして、領収書たくさん溜め込んでいるはずや!」
「そ、そんな。プライバシーってモンがあるだろ~!」
彩絵「ボケぬかさんかい!万馬券当てて、ウチに内緒にしとくその腐った性根が許せんのや!」
「だって、大の字の所なんか、万馬券当てて大の字が好きなもの買ってもゆかりちゃんは文句言わないのに、何でうちはそうなんだ!」と逆ギレすると、嫁の怒りは更にヒートアップ。
彩絵「あんたなぁ。ゆかちゃんの実家知ってるやろ?ゆかチャンの実家は超大金持ちの、ゆかチャンはお嬢様やさかい、ゆかチャンにとっては¥1000万が、ウチら庶民の¥100の感覚なんやで!それに大ちゃんかて、万馬券当てたらゆかチャンに貢献しよるんやで。誰かさんみたいに黙ってソープ行ったり、キャバクラ行ったり、まん○らけで美少女グッズ買い集めたりせぇへんのや!」そして、とどめが「ギャンブルするなとは言わん!賭け事せん人間は、ウチは信用できんさかい、むしろ積極的にしたらえぇ!せやけど、その儲けを妻に内緒で一人で使い込む根性が気に喰わんのじゃ!」
この日、武藤家には怒り狂う鬼嫁の狂乱の声と、被害者である俺の悲鳴日付が変わるまでの、6時間もの間続いた。
これを俺の実兄である、社会科教師の健は武藤家7月の変と名づけた。
渋谷区恐妻家組合-早くタレね
ナベツネが本日80歳になった。俺としては1日、いや1秒でも早く死んで欲しいのが正直な所で、ナベツネの命日=国家的祝日にしてもいい位だ。それ位、この妖怪は嫌われている。
某掲示板(2○ゃ○る)では、ナベツネを人間版ゴキブリと書き込んだ投稿者に、ゴキブリは身をもって殺虫剤等の開発に貢献しているのに、コイツ(ナベツネ)がやる事は功罪ばかり。こんなヤツとゴキブリを比べたら、ゴキブリに失礼だ!とまで書かれたほどだ。

ナベツネといえば、あれで結構マヌケなエピソードをたくさん残している。特に、俺が産まれた1978年には"水たまりで溺れて、溺死寸前"と言うマヌケな事をやってくれている。て言うか、水たまりでどうやったら溺れる事ができるのか?ナベツネがアンチ虚塵過激派に暗殺される前に聞いておきたい話だ。
何はともあれ、ナベツネの寿命がこれで縮まったのは確かだ。ナベツネよ!地獄逝きの故人タクシーが、いつでも貴様を待っているぞ!と言うメッセージを、誕生日の祝辞に代えさせてもらう。
渋谷区恐妻家組合-ある日の夕食
俺は今でこそ何でも食べるが、結婚する前は魚が大嫌いだった。と言うのも、俺の親父が大洋漁業(現:マルハ)に勤務してたために、イヤな程魚を食わされたからである。

男とは身体が資本である。外に出れば7人の敵がいる生き物だ。厳しい東京と言う大都会社会の中に身を置き、顧客(と言うよりも悪友たち)の理不尽な応対もこなして胃が"急性胃潰瘍"を起こしても、エイヤッと踏ん張って家族の為に働いてこそ、一人前の男だと俺は思う。
その資本である身体を作るためには、毎日の食生活にも気を配らねばなるまい。新婚当初、俺は彩絵に一枚のメモを手渡した。それは俺の好物ベスト5を書いたものであった。
第1位  カレー
第2位  鶏のから揚げ
第3位  餃子
第4位  ハンバーグ
第5位  とんかつ

彩絵は、私が手渡したメモを読むなり「フ~ン」と言っただけで、メモをゴミ箱に捨ててしまった。
まったくもって言語道断な嫁である。その冷ややかな蔑んだ彩絵の目には「小学生の給食かよ」というメッセージがモロに現れていた。
毎日とは言わぬ。せめて一週間に一回は手渡したメニューから夕食を選んでも罰は当たるまい。いや、稼ぎ頭である俺の好物を食卓に並べてこそ「俺の選んだ嫁」である。そう思わぬか?その日、俺は残業であった。天候は大雨の上に、バイクの運転中に転倒して書類を台無しにして、上司である兄貴分のジャンショーグンに"バカにされながら怒られ"て、家に辿り着くと午後8時20分。疲れ果てた俺は、玄関に倒れ込んでしまった位に疲労していた。
「あぁ~、疲れた。風呂より先にメシにしてくれ」
寝っ転がって錐揉みしながらズボンを脱ぎ、ついでにシャツも脱ぐ。彩絵曰く
彩絵「そっちの方が疲れるやろ?」
そうかもしれぬが、これは気分的なものなのである。家の外でこんな恥ずかしい着替え方をする度胸などない。無事シャツと褌だけの軽装になると、俺は疲れ切った身体をようやく起こして食卓についた。

彩絵「お待たせ」
嫁がこぼれ落ちそうな笑顔で運んできた夕飯は"サバ味噌"であった。御丁寧に生姜までも添えてある。
嫁は、俺の魚嫌いを重々承知のハズである。確か昨日は"サワラの西京焼き"、そして一昨日は"うな重"。更にその前日は"カレイのから揚げ"である。魚処の三重県出身の彩絵は無類の魚好きだから、俺にとっては始末が悪い。
「彩絵ちゃん、いい加減にしてくれ!なんで4日連続で魚なんだよ。俺が(虚塵並に)大嫌いなものばっかり並べやがって。このままじゃ痩せ細って死ねっていうのかよ?」
彩絵「別にエェやん。ウチ、魚好きやねんから」
今にもキレる寸前な俺とは正反対に、彩絵は"今日のサバは、脂が乗っててめちゃ美味しい"と言わんばかりの満足顔であるのが、俺の怒りを加速させるのだ。
「この前から夕飯残して腹減ってるんだ!栄養失調で死んでしまうじゃないか?」
彩絵「何、贅沢ばっかりぬかしとんじゃい!ボケぇ!お義母さんから、綾ちゃんの魚嫌い治す様に、ウチは言われてんねんで!!」
「あんな非情なお袋の言う事の方が、俺よりも大事か?俺が倒れたら武藤家全滅の危機だぞ。肉を出せ。肉がダメなら、麻婆茄子出してくれ!」
彩絵「エエか。お義母さんから"あんたの魚嫌い治せ"って、毎度言われるウチの身にもなってみ?アンタは一向に改心する気配もないし」(この時、目を逸らして、泣き顔をする彩絵)
「分かった、分かった。じゃぁ、味付け海苔でも出してよ」
彩絵「ワレ小学生か?ボケ!もう、ウチは許さへんで!」
彩絵の目の白い部分が、みるみる内に血管が走って直視できない鬼の形相になる。なんと恐ろしい嫁を私はもらってしまったのだろうか。
彩絵「エエか。よう聞きや。子供の教育にも影響するんやで。綾ちゃんが好き嫌いだらけで、子供にどうやってしつけするんや?親がこんなんやったら、子も好き嫌いが多ぉなるで」
こうして、俺は彩絵によって"無理やりサバ味噌"を口の中に押し込まれた。椅子の後ろに手を廻した上で手錠をかけられ、俺の口に無理やり(サバ味噌を)入れられて、不服そうに彩絵の顔に(サバ味噌を)吐こうものなら、容赦なく鉄拳制裁が襲ってくる。
これじゃぁ、まるで旧日本軍より性質が悪い矯正方法だ!

そんな彩絵も、嫌いなものがある。納豆である。俺が過去、納豆をイヤミったらしく彩絵の前で食べたら"納豆は人間の喰いもんやない!""嫌納豆権を認めろ!""エェ加減にせな、マジ刺すで"と言って、目が据わった彩絵は包丁を手にしている。それ以来、武藤家からは"納豆が姿を消した"のは言うまでもない
渋谷区恐妻家組合-音を聞くのもイヤだ

俺の髪は、何かにつけて兄貴分のジャンショーグンや、宇和島に在住する漁師の彩や、知人の建築デザイナーの翔子・無二の悪友のナショナルによってヒドイ目に遭わされる事が多い悲劇の髪だ。
そして、俺の髪への悲劇はこれでもかとまだ続く。
有給のある日、呑気にドラクエ7をしながら、彩絵が俺に優しい声で耳元で囁く。そして彩絵は、後ろに何かを隠しながら、微笑んで私に近づいてくる。
「な、なんだ?何か企んでないか?」
彩絵「人聞き悪い事言わんときぃな。それはそうと綾ちゃん。だいぶ髪がのびてきたな?」
俺の髪は、事ある毎にジャンショーグン・彩・翔子・ナショナルによって丸ハゲにされ、職場では「精神統一のために頭を丸めるなんて、郵便局員の鏡だな」と、事情を全く知らない課長の志村のオッサンに言われる。それならまだいいが、新人の瑞穂と言う女の子には俺=マルコメ頭とまで思われている有様だ。
彩絵「綾ちゃんの美容院代って、いくらやねん?」
「頭キンパにした上で、カットしてるから、¥12000位かなぁ?」
彩絵「¥12000。ムダな出費やなぁ。毎回ハゲにされるのにも関わらず、髪が伸びるたびにキンパに染めて、年4回行ったとしたら¥48000。えらい出費やなぁ」
「毎月のように髪を染めに美容院に行く、嫁に言われたくない」のが本音だ。
彩絵「綾ちゃん。5万あったら、美味しいものいっぱい食べれて、プレステのソフトもたくさん買えると違うか?」
確かに、それは言えていると俺は思った。
彩絵「それを手伝ってあげようかな?と、思ってウチが散髪したるわ」
彩絵が俺の前に差し出されたのは、見るのもおぞましい電動バリカンであった。
「ゲッ!俺が見たくないものを目の前に突き出しやがって」
彩絵「大ちゃんに借りて来たんや!」
ジャンショーグンのヤロー。この前、俺の言った競馬の予想(有馬記念)で外れたからって、彩絵を使って俺を丸ハゲにしようとする狡猾さは、とても兄弟盃を交わした仲ではない。まさに鬼畜、いや極悪ゴリラだ。
彩絵「まぁ、そんなイヤそうな顔せんと、ウチに任せてドロ舟に乗ったつもりで、安心してウチに身を任せんかい!これも、武藤家マイホーム計画の第一歩や」
「ドロ舟って、俺はカチカチ山のタヌキか?それを言うなら大船だろ?」
彩絵「そう細かい事言うなって。江戸っ子やったら腹を据えて、愛する妻に全てを捧げる心意気でウチに全てを詫さんかい!」
それとこれとは話が別だ。ただでさえ、俺はバリカンの音を聞くだけでも鳥肌が立ちそうなのに、ましてやジャンショーグンの差し金と分かったら、大船もタイタニック号にしか思えない。
「俺は郵便局の郵貯の勧誘員だぞ。ましてや品川駅の周辺は、大企業がたくさんあって、お得意様も多いんだ。ヘンな頭で集金なんか行って、ハジをかいたらどうするんだ」
彩絵「その浮いた¥12000を綾ちゃんに渡す、って言うたらどなんする?」
その言葉に2つ返事でOKしてしまう俺。まるで、パブロフの犬状態だ。
彩絵「まぁ、たまには臨時の小遣いあげんと、ご近所さんから"武藤さんの所は、実はカカァ天下"やと言われたら、イヤやしなぁ」
結局、そんな事が原因かよ!異様に輝く彩絵の瞳。どうやらバリカンで、俺の頭を猛烈に刈りたそうである。何かに取り憑かれてしまったと言ってもよい。
彩絵「よっしゃ!決まりや。ならそこに座って」
彩絵の後ろからは、ポンチョの反り返ったようなものが出てきた。どうやら家庭散髪セットを一式、ジャンショーグンから渡された模様である。
彩絵「じっとしてや。これでもウチは高校・大学とピアノ習ってたんやで。芸術センスは十分あるねん」
全然説得力のないセリフである。ピアノと散髪の関連性が全く分からない。こんな嫁を卒業させたフェリス女学院をただ恨むしかない。そして、いきなりバリカンが勢い良く耳の横から入りだす。
「チョット待て。それは違う。散髪屋は髪を湿らせた後でクシをあてて、クシからハミ出した毛を、ハサミやバリカンで刈っていくんだ。俺はこれでも"元美容師"だった事を知って、彩絵ちゃんはやっているのか?」彩絵は慣れない手つきで両手が動く。目を閉じながらも一応「横と後ろだけで、前と上はそのまま」という注文は出しておく。
いい調子でバリカンが滑っていく。薄目を開けてみると、想像以上に長い髪の毛の束が床に落ちていた。
「さ、彩絵ちゃん。結構長い髪の毛が落ちてるけど、これで大丈夫か?バリカンが深く入りすぎてないか?」
彩絵「大丈夫やって!ウチに任しとき」
嫁の声は必死である。高まる不安。いくら¥12000のためとはいえ、我ながら軽はずみな事をした悔悟をしてももう遅い。
「も、もういい。それぐらいで止めてくれ!お願いだぁ!!」
あんまりしつこく左右交互に刈るので、俺は叫ばずにはいられなかった。
彩絵「いやぁ、綾ちゃんにはこの髪型が一番似合ってるで」
笑ってごまかす彩絵。俺は非常に不安になってきて「頼むから、彩絵ちゃん。手鏡で髪形を見せて」西部警察の二宮係長のような泣きが入る有様。
彩絵は申し訳なさそうな表情の反面、目が笑っており、俺にゆっくりと手鏡を差し出してきた。
その瞬間、俺は真冬の上に、更に自分の頭を見て身も心も完全に凍りついてしまった。
「うわぁ、丸ハゲじゃねぇか!!」
今考えたら、まだ散髪代を嫁から貰っていない。4年も前の事なのに。
ショックでそれどころではなかったのだ。貰えるにしたって¥12000では、俺の深い心の傷は埋まるものではなかった。
彩絵はこう言った。
「遅かれ早かれ、どうせ大ちゃんとかに"丸ハゲにされる運命"なんやから、愛する妻に丸ハゲにされた方が嬉しいやろ?」
嬉しいわけねぇだろぉ!!!
渋谷区恐妻家組合-あくまでもイメージだ
彩絵が猫なで声で「綾ちゃ~ん?アルバイトしない?」と、プレステをやっている俺に話しかけてきた。俺はそれ所ではない!PIAキャロットへようこそ3をやってる途中で、バイトなんかする気も起きんのだ。
彩絵「¥3000、いや¥5000出すからやってよぉ」
¥5000と言う金額と、彩絵の悩ましい声に「まぁ、そこまで言うならやってやろう!」

彩絵「手で洗ってよね」
洗濯籠の中に入っているのは、ナント彩絵の下着だけ。
こういう状況下だと、兄貴分のジャンショーグンはパンツを頬ずりしたり、頭にかぶるだろうと思われるが、俺はそんな事はしない(したいけど、見られて怒られたらたまったものじゃない!)
しかし、彩絵のパンツって白だのピンクだの、水色だの、黄緑にラベンダーパープルetc.地味なパンツしかねぇ!なぁ。それも、シルクならいいとしてイ○ーヨー○ドーで"3枚¥1000"で売ってるような、安物のパンツばっかだぞ!少しは俺のために、シルクの赤とか、艶のあるタイトな黒とか着用して、数少ない三番稽古の喜びを増徴させようと言う気があるのか?と問いたくなる程だ。
俺は嫁のパンツを手で洗いながら、「日頃、散々コキ使われているからな。ちょっと復讐してやるか?」と思った俺は、彩絵のパンツを干して乾かして取り込む際にエアーサロンパスを振りかけてやった。それを知らずに、そのパンツを履いた彩絵は「ちょっと、綾ちゃん!パンツに何したの?と股間を押さえながら涙目で訴える。俺は、待ってましたとばかりに「日頃、散々武藤家の亭主の威厳をコケにした挙句、散々イジメやがって!おしおきに、エアーサロンパスを振りかけてやったのだ!!!」誇らしげな俺に、泣きながら彩絵は「おぼえてらっしゃい!」と言うのが関の山だ。彩絵と結婚する事4年。遂に嫁に夫婦ゲンカで勝利した俺は、喜びのあまり酒盛りを始めた。

翌朝。武藤家の朝は、俺の相撲の稽古から始まる。朝5時に起きて、四股・鉄砲・摺り足と相撲の稽古は毎日欠かさない。起きて土俵を見てみると、土俵中央に盛り土をして"神主が振る棒(名前忘れた)"が無残にも崩された挙句、彩絵の足跡らしい物神聖なる土俵の上に無数に広がっている。さすがに、この位で早朝早く怒ったら1日が重くなってしまう。気を取り直して、廻しを締めた瞬間だ!俺は思わず「ギャ~~~~!!!」と叫んでしまい、彩絵に沙希(娘)に、敬司(息子)に、テリー(犬)がビックリして飛び起きた。そして、股間を押さえてもんどりうっている俺に彩絵は「昨日の仕返しや、ザマァみぃ!」と冷徹に言い放つ。しかし、しかしだ。俺は高校の相撲部時代に"かわいがり"をしてくれた先輩の廻しにエアーサロンパスを降り掛けた事があるが、これはエアーサロンパス以上に強烈な刺激臭が、俺の股間を襲う。
「さ、彩絵ちゃん!エアーサロンパス以外に、何を廻しに掛けたんだ!」
彩絵「これやがな。よぅ見んかい!」
彩絵が、俺の目の前に投げつけてきたものはメンソレータムの空瓶だ。
彩絵「自業自得や!そうやって、1日中股間押さえといて呻いとったらえぇ!郵便局に、有給で欠勤の届けだしとくわな」
彩絵は、そう言った後稽古場を立ち去り、俺は午前中の貴重な時間を風呂場でセガレを冷却していたのだ。やっぱり、彩絵にケンカを売るのは、マジ止めよう!これが原因で、俺のセガレは4日間再起不能の仮死状態に陥ってしまったのだ。
渋谷区恐妻家組合-JFAは黄色がイイと思う
俺の嫁・彩絵は、サッカーが嫌いだ。正式に言えば、サッカーをするのは好きなようだが、いわゆるサポーターが大嫌いのようだ。もうじきワールドカップが始まると、日本代表のサポーターがゾロゾロと現れるが、彩絵に言わせればエセ愛国者の一言で片付けられてしまうのだ。そもそも彩絵の主張は「日本、ニッポンてアホみたいに言いよるサポーターってヤツは、一回でも選挙行った事あるんか?国のためになんぞ貢献でもしたんか?本気で国に貢献するなら、自衛隊入らんかい!」と、まるで蔑んだ目で口汚らしく罵る。
だから、俺がサッカー日本代表のユニフォームを着て「日本代表」の応援をテレビでしていると、彩絵は「あんた!選挙もロクに行かん人間が、サッカーの日本代表応援する資格なんか無い!」とテレビのリモコンを奪って彩絵の大好きな、プロ野球の阪神戦に変えてしまうのだ。そして彩絵の大好きな、金本アニキがバッターボックスに立つと「キャ~!アニキぃ!虚塵なんか、ぶっ潰してぇ!」と(今年で31にもなるのに)黄色い声援を送る。

自慢ではないが、俺の嫁・彩絵は元教員と言う事もあり、選挙を欠かした事が無いのが自慢と言う。しかし俺から言わせれば都知事選=石原の大本命のような選挙に行く位なら、まだ人気の無い馬の「単勝馬券」を買ってるほうがよっぽどいいのが本音だ。
しかし、ある時。衆議院選挙が告示されての事だった。
彩絵が例によって「選挙行かなかったら、1ヶ月エッチ禁止!その上で、サッカー日本代表のユニフォームを全て雑巾にする」と言う脅しを掛けてきた。
こうなれば仕方なく選挙に行くフリをして、馴染みの相撲部屋で朝稽古を見た後、ちゃんこを食って家にいかにも「衆議院選の選挙に行ってきました!」と帰った。
彩絵「選挙行ってきたの?」
「あぁ、分かりきった事聞くなよ」
彩絵「で、誰に投票したん?」
この場合、投票者の名前が言えないと疑われるので、東京7区の候補者の名前を覚えて帰り、適当に返した。
彩絵「ホンマに投票したん?」
「だから、分かりきった事を聞くなって!」
彩絵「ふ~ん。じゃぁ、これはなんや?綾ちゃんの宛の選挙券忘れて、投票してきたん?」
俺は、選挙の際に自分宛の選挙入場券はがきが送られてくる事を、全く知らなかった。
彩絵「あんたなぁ、よくもこんなアホなウソつくなぁ!?選挙行くのに、選挙券が無くて選挙が投票できるわけないやろ?妻であるウチに、よくもここまでシラジラしくウソ付ける、あんたの根性叩き直したる!!!」
こうなると、お約束の嫁の一方的な俺への攻撃が始まる。
「頼む、彩絵ちゃん。許してくれ!俺が悪かった!」
彩絵「あんたも日本男児なら、潔くよく覚悟決めんかい!日本男児なら、言い訳せんのが男ってモンやろ?」
こうして、嫁にいい歳した男が子供の見ている前で、ケツ丸出しの上で、週刊少年マガジンでケツを30回も叩くのだから、痛い以上に娘にこんな恥ずかしい所を見られて、穴があったら入りたいのが正直な所だ。
その後、俺は嫁の監視下の下。選挙会場に選挙に行った。
そして、1ヶ月間エッチをさせてもらえなかった上に、俺が集めに集めた日本代表のユニフォームは雑巾どころか、嫁が裁断バサミで、切り刻むだけ刻んで、我が家の犬の寝床の敷料にしてしまったのだ。
この中にはゴン中山のサイン入りユニフォーム3着もあったんだぞ!
俺が文句を言おうにも、彩絵に「ウソをついた、自業自得や!」と言い返されてしまった。
なんて事をするんだ、彩絵~~~~~~~っ!!!
渋谷区恐妻家組合-ぱちんこウルトラセブン
俺の悪友である、ジャンショーグンがパチンコに勝って俺の家に遊びに着やがった。そして俺に、煙草2カートンをくれた。普通の人なら彼は"なんて、いい友人だろう"と思うかもしれない。しかし、嫁が、大の嫌煙者と分かっているから相当な、イヤガらせもいい所だ。
「大の字がパチンコで勝ったんだって。土産のマルボル2カートン。ホントありがたい、持つべきものは友だなぁ。毎日の煙草代って大きいからな。これで少ない小遣いが浮くなぁ」
彩絵「ドテチン、ホンマによかったなぁ。毎日自動販売機で買わんでもエエがな。余計にスパスパ吸ったらアカンで。じゃあ今月の小遣いから¥6000引いとくな」
俺の目は確実にテンになってた。
「な、なんでそうなるんだよ!これは大の字から貰っただけだ!なんで俺の小遣いに影響するんだよ。これは小遣いと、別にして考えてくれ!」
彩絵「あんたなぁ!ウチが煙草嫌いなん我慢して、あんたに煙草吸わせてやんりょるんやで?そこん所分かってるん?ドテチンは家計から、何の足しにもならへん煙草代を持っていくやないの?毎日2箱で抑えれば一ヶ月持つがな。厳しい家計に少しは貢献しいや。大体、あんたの稼ぎが悪いさかい、専業主婦でいたいウチが、しゃーなくピアノ教室をやって、武藤家の財務を遣り繰りしよるんやで!そこん所、分かってるん?」
「それとこれとは別じゃないか!¥3000あったら、メイド喫茶も1回行けるし、麻雀格闘倶楽部だって数回できるんだぞ。」
ジャンショーグン「な、なん何だ?大きい声出して。」
ジャンショーグンが驚いた顔で、我が娘:沙希をあやすのを止め出した。
「大の字、¥6000めぐんでくれ!お前が持ってきた煙草を、彩絵が経費として、俺の小遣いから¥6000取りやがった」
ジャンショーグン「ったく、情けねぇヤローだぜ。テンピン(ピン=¥1000)恵んでやるよ。競馬に勝った事だしさぁ」
「やっぱ大の字、さすが俺の心の友だぜ!」
しかし、後ろから彩絵が怖い顔して
「アンタ!大学生の大ちゃんから、ようカネ貨りるなぁ?恥を知らんのか!?それにウチの事情を口にするなんて、アンタは世帯主の自覚があるんか。こんなボケな事、ゆかりチャン(ジャンショーグンの嫁。彩絵とは親友)が知ったら、ウチのメンツ丸潰れもエェ所やで!!」
これを見ていた、ジャンショーグンはプロレスの観客の如く「いいぞ、彩絵!ムトーをコテンパンにしてしまえ!!」
こうなれば、嫁の集中砲火を浴びているのは俺だけである。彩絵は目を真っ赤にさせながら、俺に怒っている。ジャンショーグンは、俺の娘の沙希に「沙希ちゃん、いいかい?大人になっても、沙希ちゃんのパパみたいな人の所にお嫁に行っちゃダメだよ!」
彩絵は、この言葉に「大ちゃん、もっと言ってやり!沙希に、こんな情けない父親を持って、恥ずかしい思わせて、男性感の教育せなあかんのや!」
俺は言い返すチャンスを逃したまま、(いつもの如く)嫁に一方的に口汚らしく罵られるだけであった。
そんなに俺が悪いのか?ただ煙草2カートン貰って、小遣い取られた上に、友人にカネを恵んでもらってそんなに恥ずかしい事なのか?
その模様を娘に見せて、「こんなパパを持った沙希ちゃんは、パパみたいな人にお嫁に行ったらダメよ!」と言う彩絵よ。お前だって、俺に一応嫁いだんだろ~~~~!!!(涙)