知的障害とは、学習面や生活面において発達の遅れがあるものをいいます。
医学的には精神遅滞とも呼ばれます。以前は精神薄弱と呼ばれていたこともあり、「知恵遅れ」と呼ばれていたことさえありました。精神薄弱や知恵遅れという言葉が差別的なイメージを持たれやすいことから、2000年から知的障害という呼称に改められました。
知的障害(精神遅滞)を定義している、世界的な診断基準があります。アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM―Ⅳ―TR)」では、知的障害を次のように定義しています。
A: 明らかに平均より低い全般的知的機能(IQ70以下)
B: 以下の少なくとも2つの技能領域において適応機能の明らかな制限を伴っている。
コミュニケーション、自己管理、家庭生活、社会的・対人的技能、地域社会資源の利用、自律性、発揮される学習能力、仕事、余暇、健康および安全
C: 発症年齢が18歳未満
知的障害の水準を反映する4段階の重症度を特定することができる。
軽度精神遅滞 : IQレベル 50~55からおよそ70
中等度精神遅滞: IQレベル 35~40から50~55
重度精神遅滞 : IQレベル 20~25から35~40
最重度精神遅滞: IQレベル 20~25以下
精神遅滞 重症度は特定不能: 精神遅滞が強く疑われるが、標準的検査で測定不能の場合(例:非常に重度、非協力的、幼児)
上記の知的障害の段階をよりわかりやすく説明すると、次のようになります。
● 軽度 : 本人・周囲とも障害にはっきりと気付かずに社会生活を営んでいて、障害の自認がない。
● 中等度: 過半数の精神年齢は小学生低学年程度。
● 重度 : 多動や嗜好の偏りなどの行為が、問題になっている。概ね精神年齢は4歳児程度しかない。
● 最重度: 寝たきりの場合も多い。しかし運動機能に問題がない場合、多動や嗜好の偏りなどの行為が問題になる場合がある。実際の精神年齢は1歳児程度。
この知的障害を伴うもののうち、体細胞の21番目の染色体が1本多い(21トリソミー)ことによって発症するものを「ダウン症候群(ダウン症)」と言います。