政治と憲法つれづれ草 by リリー -2ページ目

政治と憲法つれづれ草 by リリー

つれづれなるままにリリーも憲法について語ってみんとてするなり。

2019年11月に101歳で亡くなった中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬について、政府は2予備費から約9600万円を計上することを閣議決定しました。予備費、つまり税金から経費を捻出するのです。予備費は新型コロナ対策に使うべきだという声もあります。

中曽根元首相の合同葬は、新型コロナウイルスの影響で延期されていました。この内閣と自民党が合同でやる合同葬は10月17日の14時からグランドプリンスホテル新高輪で行われます。

内閣府の合同葬準備室はこう説明しています。

「首相経験者だからと言って、必ずしも合同葬などを行うとは限りません。生前の功績や過去の先例を見て、内閣の判断で決めています。色々な意見はあると思いますが、適切な判断だったと考えています」※ここまで2020/09/25『JーCASTニュース』より。

立憲民主党の蓮舫参院議員はこの決定に対し自身のツイッターで「その税金は『想定し得ないコロナ感染症対策』として計上した予備費を充てることも適当ですか?」とツイートしています。
※2020/09/26『スポーツ報知』

加藤勝信官房長官は今日の記者会見で「9600万円は妥当だ」と強調し、「新型コロナウイルス対策に万全を期す観点から積み上げた。必要最小限だ」と述べました。また、2020年度補正予算で計上したコロナ対策費ではなく、一般的に使用できる「当初予算の予備費を活用する」とも言いました。
※2020/09/28『東京新聞』

この合同葬は内閣と自民党が開催する合同装です。税金を投入することは妥当なのでしょうか。ポイントは2つあると思います。ひとつは税金を投入すること。もうひとつは1億円近いこの金額です。どう思いますか? 
「国連で3年前に採択された核兵器の開発、保有、使用を禁じる核兵器禁止条約を新たに1か国が批准し、発効に必要な批准国はあと5か国となりました。新たに批准したのは地中海の島国マルタです」(NHK)。

核兵器禁止条約は50か国が批准してから90日後に発効することになっています。この度マルタ共和国が45番目の批准国になりました。あと5か国です。

唯一の被爆国である日本はまだ批准していません。せめて46番目になりたいと思います。希望的な観測ですが、世界的に見て核兵器は必要ないと考える人が増えているのではないでしょうか。興味深い調査結果があります。

NHKが今年の8月にアメリカと日本の18歳から34歳までを対象に核兵器の必要性についてアンケートを実施しました。日本の85%、そしてアメリカの7割が「核兵器は必要ない」と回答しています。若者たちの認識が変わってきているのではないでしょうか。全人口に占めるこの層の割合は確実に広がっていきます。

カナダ在住の被爆者、サーロー節子さんはこう言います。

「国際政治はますます厳しい状態になり、目の前には暗闇があるが絶望はしていない。若い人たちを見て、希望が持てる時代がやってきたと感じている」。

※2020/09/22NHKニュースより
2015年9月19日。集団的自衛権の行使を容認する「安全保障関連法」ができました。あれから5年の今日、この安保法について再び熟考しておきたいと思います。ポイントは、日本の自衛隊と米軍の一体化が進めば進むほど、日本国民がアメリカの戦争に巻き込まれる可能性が高まるということ。以下、北海道新聞の社説です。

********************

安保法成立5年 対米追従 立ち止まる時

安倍晋三前政権が残した「負の遺産」の中には、数の力で強行的に制定した法律があまたある。その最たるものが、歴代政権が違憲としてきた集団的自衛権の行使を容認した安全保障関連法だ。成立からきょうで5年になる。

本来認められない権利の行使に道を開くため、ハードルが高い改憲を避け、一内閣の恣意的な判断で憲法解釈を変更した。憲法に基づいて政府を統治する立憲主義を無視したやり方であり、到底認められない。

憲法9条は国際紛争を解決する手段として、武力による威嚇または武力の行使を放棄している。集団的自衛権の行使は、他国の武力紛争に介入することになりかねず、それを認めた安保法は違憲の疑いが強い。廃止が筋である。

首相の交代を機に、安保法を含めてこれまでの安保政策の問題を正し、憲法の平和主義に徹した外交・防衛に立ち返るべきだ。

制定の背景に、米国が日本に対して、より軍事的な役割を果たすよう求めていたことがあったのを忘れてはならない。施行後、自衛隊は米軍を対象に、平時から他国の艦艇を防護する「武器等防護」などを実施し、活動範囲を地球規模へと拡大した。同時に安倍前政権はトランプ政権に強く求められて米国製の高額な防衛装備品を大量購入し、事実上の「空母」保有など専守防衛を逸脱する政策を進めてきた。その間に加速したのは米軍と自衛隊の軍事的一体化である。それは日本が「米国の戦争」に巻き込まれる危険を自ら高めていることに他ならない。

安倍前政権は米国との対等な関係を目指すとして安保法や特定秘密保護法などを制定し「日米同盟はより強固になった」と誇った。だが実際は対米追従の度合いを高めただけだったのではないか。戦後日本の国是である専守防衛を形骸化させた責任も大きい。

安倍前首相は退任間際に談話を発表し、歴代政権が否定してきた「敵基地攻撃能力の保有」を念頭に、ミサイル阻止に関する新たな方策の議論を次期政権に促した。敵基地攻撃能力の保有は憲法に基づく専守防衛の原則に反する。

公明党は保有に否定的で、自民党や防衛省関係者からも、相手国の攻撃着手を見極めるのは難しく「保有は現実的でない」との慎重論が出ているのは当然である。

やみくもな安倍路線踏襲は危うい。対米追従政策を含めいったん立ち止まり、軌道修正する時だ。


アベノミクスの継承を掲げる菅義偉内閣が始動しました。

新型コロナウイルスの感染拡大で経済は戦後最悪の落ち込みです。それでも株価は2万円の大台を保っています。不思議に思いませんか?

気をつけなければならないのは、株高に目を奪われてアベノミクスの問題点を見失うことです。アベノミクスによって格差は拡大しました。

安倍政権は雇用の改善をアピールしてきました。でも、大半は、賃金が低く、待遇も劣る非正規労働者。その日正規労働者たちは、コロナ禍に直撃されて弱り果てています。

非正規労働者は今年7月、131万人も減りました。つまり食べるに困る人たちが増えたと言うことです。この数字は過去最大で、立場の弱い人たちにしわ寄せが集中したのです。

こうした状況を放置してはならない。

貧富の差が広がると、中間層がなくなります。中間層がなくなることは、安定的な経済成長の基盤を損なうことにつながります。

こんな状況に菅首相はどう対処していくのでしょうか。このまま放っておいて良いわけはありません。

菅首相は「自助、共助、公助」が基本だと言いました。「自助」が先頭に来ているということは、まず自分で何とかしろ、国をあてにするんじゃない、とつきはなしているようにも聞こえます。

これ以上、格差が広がらないよう、一部の富裕層だけが潤うことのないよう、菅新政権に求めます。

*2020/09/18『毎日新聞』社説から
改正ドローン規制法。これは知る権利の侵害です。

9/6からテロ防止などを理由に米軍基地やその周辺でドローンによる飛行が原則禁止されました。ドローンを飛ばす場合は30日前までに米軍の同意が必要になります。

これでは基地内で発生した出来事に対応できません。報道の自由が侵害されるのです。国民の知る権利に応える報道は憲法によって保障されています。取材規制によって、国民は基地の実態を知ることができません。

2019年6月。言論と表現の自由に関する国連のデービッド・ケイ特別報告者は、国連人権理事会に報告書を提出しました。辺野古新基地建設の抗議活動などに日本の当局が圧力を加えたり、過度に規制したりし続けていると批判したのです。この時、菅官房長官は報告書が言及した政府によるジャーナリストへの圧力は「全くないと思っている」と反論しています。

もしも菅氏が総理大臣になったら、この問題にどう向き合うのでしょうか。だいたい想像はつきますが。

※2020/09/09琉球新報社説
イージス・アショア配備計画の撤回について、防衛省が報告書をまとめました。問題の多い報告書です。

河野太郎防衛大臣は、6月に撤回を表明した際に「ブースターの落下問題が原因」と説明しています。報告書の本文はわずか9ページで、ほとんど事実関係の羅列です。河野大臣は、「経緯を検証する」と言っていたのに、事実関係の羅列は「検証」ではありません。

もともとこの計画は行き詰まっていました。意地の悪い見方をすれば、今回の計画の撤回は、ブースター問題にかこつけたのではないでしょうか。

これまでの問題点を振り返ってみましょう。

秋田県内の候補地では選定資料に大きな誤りがありました。

住民説明会では防衛省職員が居眠りをし批判を浴びました。

地元住民の反発が強まり、配備先は白紙となっていました。

イージスのレーダーには、実績も試作機もない機種が選ばれていました。
これには自衛隊関係者からも異論が出ていました。

アメリカの圧力を感じます。政府は計画を撤回する一方でこのレーダーを契約通り購入するといいます。転用するのだそうですが、一体何に転用するのでしょうか。

そして何より不審に思うのは、この報告書の公表が、政権が移行するというこの混乱期になされたことです。まるで、どさくさに紛れて問題のまく引きをしようとしているみたいではありませんか。

国民を置き去りにしアメリカの言いなりの日本政府の体質と不誠実さは一向に変わる気配がありません。

※ 2020年9月5日毎日新聞社説より
令和2年8月28日。安倍首相が突然に辞意を表明しました。翌日の社説も翌々日の社説もこの話題でもちきりです。長期政権についてのある社説は野党の「貢献」にふれています;

安倍政権がなぜ、ここまで続いたのか。最大の要因は、2012年、安倍首相が自民党総裁に返り咲いて以降、計6回の衆参両院選で全て大勝したことだろう。ただし勝利の背景には、旧民主党政権が国民の失望を招いた後だったという有利な点が元々あったことを忘れてはならない。安倍首相は「弱い野党」に随分と助けられてきたのである。
(2020/08/30毎日新聞社説)。

鳩山由紀夫氏はTwitterでこう述べています;

野党の皆さん、安倍政権の間どこにおられたのですか。共産党だけは頑張ってましたが、長期政権に最も貢献したのはあなたがたでしたね。仲間同士でケンカしたり選挙が近くなったらくっついたりでは、国民の皆さんはうんざりだと思いますよ。まあ私にだけは言われたくないと思っているのでしょうけれど。

安倍長期政権を支え続けてきたのは実は野党だったのかもしれません。
安倍晋三首相は2020年8月24日をもって、内閣発足からの連続在職日数が2799日となり、歴代最長となりました。
 
連続在職日数が長い首相の2位は佐藤栄作。3位は吉田茂です。

安倍首相の大叔父にあたる2位の佐藤栄作首相は、沖縄返還を実現したことで知られています。確かに大きな功績だと言えるでしょう。

ですが、沖縄の施政権返還で日米が合意した1969年11月の首脳会談で、佐藤栄作はニクソン大統領と密約を交わしました。

「緊急時に核を再び沖縄に持ち込む密約」です。

また、「沖縄の米軍用地の現状回復費用を日本側が肩代わりする」という密約も交わしています。米軍が使った在日米軍基地の現状回復の費用を、日本が肩代わりしなければならないというのはおかしな話です。にもかかわらず、こういう密約を交わしてしまいました。

さらに、「米国の短波放送中継局の解体移転費用について日本側が肩代わりする」という密約も交わしています。

こういう人がノーベル平和賞を受賞しているんですね。

※2020/08/25『琉球新報』社説
ちっとも報道されないのですが、疎開学童を乗せて那覇から九州に向かった対馬丸が、米潜水艦の魚雷攻撃によって沈没してから、8月22日で76年です。乗船した学童のうち9割以上が犠牲になりました。

政府は、南西諸島のお年寄りや女性、子どもたち10万人を九州と台湾に疎開させる決定をしていました。沖縄の学童集団疎開は、この10万人疎開の一部でした。

本当の目的は、子供たちの保護などではありません。食料が不足する中、軍の足手まといとなる老幼婦女子等約10万人を転出させ、軍の食料を確保しようとしたのです。

集団疎開学童784人が犠牲になったのは、国民の保護よりも軍の論理を優先させた結果です。

軍隊は国民を守らないということがよくわかります。

※2020/08/22『琉球新報』社説より

安倍晋三首相は終戦の日の式辞で、先の大戦でのアジア諸国への「加害と反省」にも「歴史の教訓」にも言及しませんでした。

八月十五日の終戦の日の「全国戦没者追悼式」。安倍首相は第一次内閣の二〇〇七年には「加害と反省」に言及しましたが、第二次内閣の一三年以降、今年も含めて八回連続で触れていないのです。

また、昨年までは「歴史と謙虚に向き合う」「歴史の教訓を胸に刻む」などと歴史に言及していたが、今年はそれすらありません。

天皇陛下のお言葉に今年も「過去を顧み、深い反省」との表現が盛り込まれたのとは対照的です。 
そして今年は「積極的平和主義」という文言が唐突に登場し、「世界が直面しているさまざまな課題の解決に、これまで以上に役割を果たす決意」を表明しました。

積極的平和主義は、改憲で自衛隊を憲法に明記し、その軍事的役割を拡大させようという首相政治的意図を含む文言です。そうした政治的な文言を、「戦没者を追悼し平和を祈念する」という日に、わざわざ表明したのです。

また、同じ15日、安倍内閣の閣僚4人が靖国神社に参拝しました。この日の閣僚の参拝は4年ぶりで、しかも4人というのは安倍内閣で最多です。翌日には別の閣僚も参拝しました。これでは侵略戦争を肯定していると受け取られかねません。内閣の姿勢は日本の国際的信用に影響します。

※ 2020/08/20『東京新聞』社説より編集。