今回紹介するのは、
オッフェルトリウム「ミセリコルディアス・ドミニ」(主の憐れみを)K.222です。
演奏時間6分ほどの宗教曲で、モーツァルトが19歳の時の作品です。
オッフェリトリウムとは、ミサ曲で入祭唱の次の部分で歌われるものです。
従ってこれも独立した曲として作曲されているが、ミサ曲の部品の一つなのです。
ミュンヘンのバイエルン選帝侯の依頼により作曲されたもので、
曲想が美しいだけでなく、対位法を多用するなど作曲技法の点で極めて充実しています。
遺作となった名曲「レクイエム」を既に予感させるものとも言えるでしょう。
5年前に14歳のモーツァルトに教会音楽を講釈したマルティーニという神父は、
この曲を聞いて、神童モーツァルトが青年期に入りなおも成長を続けている事実に
賞賛を送ったという逸話があります。
ところで、この曲については、面白い「他人の空似」があります。
ベートーヴェンの第9交響曲「合唱」のテーマに似た旋律が、
中間部で何回も出てくるのです。
べートーヴェンがこの曲を聴いて盗作したのか否かは不明であすけれど。
オススメCDは、
マーカス・クリード(指揮)RIAS室内合唱団+ベルリン放送交響楽団のもの。
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クリードは、イギリス生まれでバロックから古典派までの合唱曲を専門とする指揮者です。
常任を務めたベルリンのRIASコーラスとのこの録音は、
合唱団のコントロールが極めて巧みで誠実な音楽作りが素晴らしいです。
彼が、モーツァルトの地味ながら美しい曲を、心から愛し大切にしていることが、
聴き手にストレートに伝わってきます。
彼のCDのおかげで、美しさを理解できたモーツァルトの声楽小品が沢山あり、
筆者にとっては本当にありがたい存在です。
では、また。
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