皆様、こんばんは。







 数日前、業界内で気になるニュースが飛び交いました。





『一部小売で夏のクリアランスセールが前倒し(6月開催)になるらしい』と。





 節電やプレセールを背景に、なるべく早く在庫を処分しようという考えなのでしょう。




今年は震災もあり、特に春物在庫が沢山残っていますしね。




 しかし、私はこれには反対です。本当、やめて欲しい。








 そもそもクリアランスセールとは何か?







辞書によると、『在庫品一掃の大売り出し。蔵払い。』とのこと。







 これに私の定義を加えるならば、



■販売適正期の終了間近に、シーズン該当在庫品を値引き販売し、在庫を削減すること。



 と考えます。







 つまり、①販売に適した季節が終了する直前に、②初めて値下げを行い、③着用期間が短いことを消費者が了承し、購入しする。ということです。








 私は新入社員の頃から、現行の、夏は7月、冬は1月というクリアランスセールの開催時期に異論を唱えていました。






 だって、7月は夏がまだ始まったばかりでしょう!?





 1月はまだまだ寒いでしょう?やっと寒くなった頃でしょう?






 何故、その時期に値下げを行う必要があるのか?








 歴史を紐解くと、昔は日本でもクリアランスセールの開催はもっと遅かったとか。




しかし、「他社に先駆けて」を合言葉に、クリアランスの前倒しが行われてきたのです。








 クリアランスセール前倒しのデメリットは、私が考えるに以下の通り。他にももっとありますが。



①消費者が損をする。⇒プロパー(店頭投入価格)の販売時期が短いことで、アパレルは小ロット生産(少量生産)を迫られる。結果、製造原価が高くなり、小売販売価格も本来の適正価格を上回る価格に設定されやすい。クリアランスセールでも損をしない、価格構造を作り上げる。つまり、価格が高くなりやすい。結果、消費者が損をする。






②国内繊維産業が弱体化する。⇒これだけ消費者のファッションアイテムを購入する販路(選択肢)が拡大する中で、いずれクリアランスセールが開催するだろう事が容易に想像できる百貨店等店頭小売において、消費者はわざわざプロパー価格で購入するだろうか?結果、百貨店、アパレルの利益幅は縮小し、原価の高い国内縫製工場等を使用することを避け、コストの低い海外生産を更に志向せざるを得ない。






③ファストファッションがスタンダードになる。⇒そもそも洋服作りは、極めてコストのかかる産業である。良い糸、生地、服資材、縫製を国内の安心できる熟練したプロフェッショナルが作成すると、それなりの価格になる。百貨店で売られている洋服は、あながち高すぎるとは思えない。つまり、これまではそれがスタンダート(基準)だった。いい服は、それなりの価格がする。しかし、ファストファッションが台頭して以降、彼らの圧倒的なコストパフォーマンスに、国内の繊維産業の多くは衰退を余儀なくされた。そして、消費者は徐々にファストファッションの価格設定に価値観を合わせ始め、百貨店のよく分からない設定の洋服を「高い」と感じるようになった。そして、クリアランスセール価格での販売期間が長くなればなるほど、益々「価格が低いこと」が当然の事となり、プロパーで購入することを躊躇い、百貨店のクリアランスセールよりも更に価格設定が低いファストファッションでの購入を選択することが、消費者のスタンダードになる。






④四季感が崩れる⇒もうすぐ夏が終わるから、夏物を安く買う。春の息吹を感じ始めたから、冬のクリアランスへ出かける。この季節と連動した、消費行動の喚起は極めて重要である。しかし、まだ梅雨も真っ只中なのに、夏物を安く買う。初雪はまだなのに、ダウンコートを50%OFFで購入する。そんか四季の移ろいと間逆のシーズンアイテムの購入は、日本人ならではの四季を愛でる感覚を大きく損なうことになる。




 




 さて、ファッションを生んだ国、フランスではセール(ソルド)の開催は法律で規制されています。確か最大5週間まで。





 何故か?




 

 簡単に言うと、ファッション産業が法令によって保護されているのです。「勇み足厳禁」「後出しじゃんけん禁止」によって、ファッション業界に存在するあらゆる企業、個人が適正な価格で販売する事を保護され、不当な価格競争に巻き込まれることを、逃れられているのです。



 さすが、ファッションを文化として愛する国です。



 ファッション業界に尊厳が与えられていると感じます。







以下、私の提言。





日本百貨店協会と日本アパレル産業協会が提携し、加盟する企業のクリアランスセール開催時期を特定し、規制する


 *個人的には、夏のクリアランスセールは、8月1日~30日。冬のクリアランスセールは2月1日~28日が妥当だと思います。




 まずは、ここから始めませんか?




 多分、誰も反対しないと思うんだけどな。






 

 

 クリアランスセールって何なのでしょうか?単なる企業の販売促進策になっていませんか?




 

クリアランスセールの再考が、日本のファッション業界の最善の再生策だと、私は信じています。






おやすみなさい。