見栄を張ることができる力 | "学者への道" in Arizona

見栄を張ることができる力

アメリカの大学院にはTA制度があります。

Teaching Assistant(TA)とは授業を教える手伝いをすることで、

授業料免除、生活費が支給される制度のことです。

日本にもTA制度はありますが、おこづかい程度なもんで、

生活費をカバーするなんてレベルではありません。



アメリカの大学では、TAを先生扱いすることで、

担当教授を減らし、教授の負担や給料を削減し、

なおかつ大勢のクラスなどはTAをつけることで学生一人一人に気を配り、

低コストで授業の質をあげることを可能にしているのです。

これこそアメリカの大学教育、大学経営。



授業の質をあげるもう一つの要因は学生。

学期の最後には必ず、先生とTAの評価シートが配られ、

先生の成績表が大学のシステムに入ります。

この先生の評価がヒドイと、

大学教員の昇進にも影響するし、

教授もTAも同じクラスを教えることができなくなるし、

教授の評価を知ることができるウェブサイトなどに広まってしまうと、

大学のステータスに関わる問題に発展することも。

ただ学生にいい成績をあげてもいい先生の成績表にはつながらず、

どれだけ学んだか?授業の構成の善し悪し?教育者として問うような項目なども。



自分も秋にTAした哺乳類学の先生成績表が返って来ました。

なんと、20項目以上ある成績表の総合評価は五段階で4.8!

英語が母国語でないTAが気になるのは、この項目、

「The instructor speaks clearly and audibly when presenting information.」

一年前は3.9だったのが、今回4.4にアップしてました(°∀°)b

授業の前にちゃんと時間使って準備してたから当たり前なのかもしれないけど、

こうやって、先生側も次はここを気をつけよう、ってフィードバックがもらえるのは良いシステムだと思います。



しかーし!

今学期はそんな流暢なことを言ってられないのです。

今回初めてTAすることになったのは、集団遺伝学(Population Genetics)。

簡単に言えば、数学をつかって進化を説明する学問分野。



不安がいっぱいなのですY(>_<、)Y

1。60人ほどいる学生のうち、ほぼ半数が大学院生、少数がポスドク(博士)というハイレベルクラス(こいつ絶対オレより集団遺伝学詳しいだろうってやつがごろごろ)。

2。二年前に一度このクラスはとったけど、その頃は丸暗記に丸暗記を重ねただけで、人様に教えるなんて自信は全くない。

3。高校生物の遺伝学のテストで100点をとったことが自慢だったのが、アリゾナに来た最初の夏に受けた学部生の遺伝学のテストで問題文が理解できずに赤点をとったというトラウマ。

4。うちのボスは集団遺伝学の権威で、うちのボスが教えているのがこのクラスで、うちのボスに自分の理解度を勘違いされてて、うちのボスにこのクラスのTAに指名され、うちのボスの。。。重圧。

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(授業を受けてた当時の丸暗記シート。今ではほとんど理解できずw)



ってな感じで、不安材料は挙げればきりがないのですが、

授業の初日の自己紹介で、

「宿題とリーディングを毎週やれば問題ない」

「数式と専門用語が理解できない時は、先に進む前に聞け」

「そのためにTAがいるんだからTAを使え」

(ちなみにTAは自分一人。笑)

と調子に乗って、

クラスを前に、見栄を張ってみました(笑)



でも見栄を張ることは、

自分への誓いでもある。

今の自分では到底届いていないけど、

なりたい自分の姿を、

口に出して言ってみる。



そのあと、なりたい自分のために何もしなければ、ただの口だけダメ人間。

そのあと、なりたい自分のために努力し続ける決意があるなら、大抵なれる。

気がする。



今回こそもうダメだろうって壁を何度も乗り越えてくると、

まぁきっとまた本気でやってたらなんとかできるんじゃなかって、

思えるようになってくる。



これを乗り越えて、この不安な日々をふり返って、

これを将来のネタにしてブログを書いてる自分を想像すると、

これから起るであろうどんな困難も楽しみに思えてくる。



成長するためには、恥をかいてなんぼ。



でもやっぱり恥をかくのはくやしいから、

生徒に負けないぐらい勉強して、

見栄を張ってやるんだ。