ニューメキシコ天然温泉、年越し冒険記 | "学者への道" in Arizona

ニューメキシコ天然温泉、年越し冒険記

新年あけまして、おめでとうございます。

だれにもマネできない、すごい年越しにしてやろうと、

12月30日から1月1日まで、ニューメキシコ天然温泉地で一人冒険してきたので、

写真集をどうぞ。



一日目

アメリカの温泉に行ってみたい。ってことで、

前日30分だけ調べたおおよその目的地である、Jamez Springs(ニューメキシコ)へ、

ツーソンから8時間のドライブ。

"学者への道" in Arizona

途中こんなウシさんたちに出会いながら、午後3時ごろ目的地到着。



硫黄の臭いがするSoda dam。

"学者への道" in Arizona



そして凍っているトレールを10分ほど歩き、

天然温泉の一つ、Spence Hot Springs。

"学者への道" in Arizona

(みんな水着着てるし、ちゃんと写真の許可もらいましたw)

眺めが格別です。秋にくると山一面紅葉してるみたいですよ。



天然温泉は無料ですが、せっかく来たのでBath Houseというお風呂屋さんへ。

30分、12ドル!と東北なんかの天然温泉屋さんと比べるとかなり高いですが、

この地域一番熱い温泉をひいているらしく、最高です。

"学者への道" in Arizona



人口375人(ウィキ調べだけど個人的には人口50人w)のJamez Springsの町には、

数えるほどの店しかなく、みんな知り合い、みんないい人。

お土産屋さんで手袋を買った際、店員のインド人のおばちゃんと仲良くなったり、

この町唯一のバーでは、ビールを片手にオススメ天然温泉の情報を収集するため聞き込み。



そして夜は、だれもいないキャンプ場に一人テントを張り、

氷点下になる山の寒さを乗りきるため、

靴下二重、ズボン二重、インナー二重、シャツ、パーカー、フリース、ダウン、レインコートに、

寝袋に、モーフ二枚!!!と万全の体制で望む。

さすがに余裕だろうって高をくくってたら、

なぜか、

吹雪、、、笑

"学者への道" in Arizona

公式な発表によると-10℃(車の温度計は-17℃)!

地面から伝わる寒さがハンパじゃなく、

朝方トイレに行くときなんか、テントに積もった雪をかき分ける始末(°Д°;≡°Д°;)

「寝たら死ぬぞ」っていうのはウソで、「寒いと寝れないぞ」というのがホント。笑

といいながら意外とぐっすり寝れたんだけど、

この経験は一度でいいというのが本音(-"-;A



そして二日目

大晦日の朝でも6時ごろからやっているこの町のベーカリーで、吹雪がやむのを待つ。

なんと昨日のお土産屋のインド人はかけもちでお隣であるこのベーカリーでも働いていて、

昨夜の凍え死にかけた話をしたら、案の定クレージーの称号をもらいました。

"学者への道" in Arizona

昨夜のバーの聞き込みによると、

McCauley hot springs という山の奥地の天然温泉がオススメらしい。

ネットでも評判が良いのだが、評価が1つ星か5つ星と極端。

1つ星の理由は、温泉が見つけられなかったというもの(・_・;)

見つけた人たちは5つ星で絶賛という、一か八か、

冒険にはもってこいの温泉じゃないか!ってことで決定。



朝の10時ごろには雪も少し小降りになり、

天気予報でもやむ予報だったので、

McCauley hot springs へいざ出陣。



ただでさえ人が迷うらしいトレールなのに、

雪が積もってトレールが全く見えない( ̄□ ̄;)

50mぐらいに不定期に、こんなトレールのサインがあるんだけど、

"学者への道" in Arizona

実際は膨らんだ石と石の幅や、かすかな雪の積もり方の違いを頼りに、

トレールらしき方角に歩き、このサインを確認してガッツポーズをしながら進むという具合。



携帯もつながらないし、もし吹雪が強くなったり、山から転げ落ちたり、遭難したら、、、

と、もちろん最悪の事態も頭をよぎる。

ずっと登りだし、雪は深いし、新しく積もった雪に一歩一歩自分の足跡をつけ、

神経を研ぎすましてトレールを探して歩くこと、

1時間15分、ついに発見!

McCauley hot springs

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緑色の水草が生い茂り、メダカみたいな魚までいっぱい泳いでる。

雪山のオアシス。



実は絵を描くことも目的としてたので、バックには水彩絵の具セットを持参。

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水はもちろん温泉を使い(前回はスポーツ飲料w)、絵を描き進めるが、

吹雪がおさまるどころか、横降りになり、雪が絵に入り込む(笑)



なのでちょっと中途半端な感じになっちゃいましたが、強制終了。

"学者への道" in Arizona

水面の白い点々は実際の雪がにじんだだけです(笑)



1時間ほど描いてましたが、他のハイカーが来る気配すらないので、

これは入るしかないでしょう!と一人テンションをあげ、

吹雪の中衣服を脱ぎ捨て、

生まれたままの姿でダイブ!

"学者への道" in Arizona

おさっしの人もいるかと思いますが、

この顔は気持ちいいからではなく、寒いからです。笑

McCauley hot springsの別名は、McCauley warm springs。

そう、ぬるいんです。

温泉とはお世辞で呼んだとしても、肩まで浸かってても全く暖まらないレベル。

じっとしてると魚がつついてくるので、古い角質を食べてくれる?かもしれない効果があるぐらいですかね。

この後、吹雪の中、スポーツタオル一枚で体を拭き、着替える寒さはご想像にお任せします(+_+)



帰りは、自分の足跡をたどるだけなので、下山は実に簡単(20-30分)。

途中すごいハイキング装備した老夫婦とすれ違い、

「こんなクレージーなやつが他にもいるとはうれしいよ」

"Thanks for the trail"(トレールを作ってくれてありがとう)

と言われました。

自分が必死に歩いた足跡を辿っている人がいて、それを感謝されるって、

なんとも言えない気持ちになりました(*゚ー゚)ゞ



町に帰って、すでに顔見知りになった風呂屋に行き、

奮発して生まれて初めてのマッサージ(40ドル)まで受け、

大晦日のカウントダウンを見るためにバーへ。

この地域に4500年前から住んでいる先住民(Jemez Pueblo)の末えいにここの歴史を教わったり(男女の役目、異なる言語、文化)、

交通事故を乗り越えた太ったおばちゃんと熱く人生論を語ってみたり(一度死んだようなもんだからどんな悪い日があっても生きてるだけで幸せなんだとか)、

他にも若いピアニストや不思議な老人と暖炉の前で話していると、

バー店長が受話器を持って、自分宛に電話だそう!Σ(゚д゚;)



電話の相手は前日知り合ったお土産屋(兼ベーカリー)店員のインド人で、

夫と話して、もしDr.Tがバーに居たら家に招待しようと思っていたとのこと。

昨日出会ったばかりのアジア人を、大晦日の夜に、自宅に招待してくれるという、奇跡。



もちろん自分は吹雪きの中のテントはなんとしても避けたかったので、超ラッキー!

夫は薬剤師だからか、着いた家は山奥の豪邸で、自分のためにゲストルームまで!

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シャンパンを飲みながら、いろんな話をして、カウントダウンを見て、2013年を迎えました!

そして極めつけは、除夜の鐘ならぬ、銃の鐘!

これはニューメキシコの文化なのか(アリゾナでもやらない)、

ハンドガン(もちろん本物の実弾)を夜空に向けて発砲!笑

"学者への道" in Arizona

(銃声とその重みに逃げ腰w)

おかげで、一生忘れられない新年になりました。



薪で暖められた家はやはりテントとは真逆で、快適。

2013年最初の朝食はさすがにおせちではなく、ホットケーキと七面鳥のベーコン。

"学者への道" in Arizona

この地域の人たちは猟をするから、ガレージの冷凍庫はいろんなお肉でぎっしり。

お土産にElk(大きなシカ)のお肉までいただきました。

こっちも何かしなくてはと、お礼に雪のダメージを受けた水彩画をあげたらすごく喜んでくれました(*^ー^)ノ



この冒険で気づいたことは、

未来を変える行動、タイミング、出会いの大切さ。

もしあの時、あの店で、あのインド人から、手袋を買ってなかったら、朝食付きゲストルームはなかったし、

もしあの時、吹雪がやまなかったら、温泉も絵も自分が残した足跡を感謝されることもなかったし、

もしあの時、バーで知らない人に勇気をだして話しかけなかったら、この山の歴史を知ることも人生観を語ることもなかったし、

日常で起る一つ一つの出来事やちょっとした行動が、

その後の大きなイベントにつながっていることを知れた。



もう一度人生をやりなおしたとして、

同じように自分がアリゾナ大学の大学院にいる確率はどれほどなんだろう?

同じ興味を持って、同じ大学に行って、同じ先生に出会って、同じ研究課題を選んで、同じ論文を読まない限り、

今のアリゾナの教授に大学院の出願書を出そうなんて思うことないから、何か一つでも欠けてたら自分はここにいない。


これはいつもそばにいる仲間にも言えることで、

もし人生をやりなおしたら、ランダムなイベントで友達が違う大学に行って、出会うことすらなかったかもしれない。

毎日何気なく起る一つ一つのイベントが、すごい偶然の上になりたってる奇跡なんだなって気づけた。



これは進化学でもあてはまって、

もし地球のテープを巻き戻して始めからやりなおしたら、

また人間みたいな生き物が生まれるなんて限らない。

100回中99回は高等な動物は生まれず、すべてバクテリアの世界だった。

なんてことも十分考えられる。

きっとランダムや偶然という要因は大きいんだと思う。



でも逆に言えば、

何か変わりたいと思っている人なら、何か行動を起こすことで、

ランダム性だとか、あらゆる可能性が開かれるのかもしれない。

何もしなかったら、たいした奇跡は起らない。

何かをやり続けたり、思い切った行動をしない限り、

本当の奇跡って味わえないのかも。

"学者への道" in Arizona



この冒険にならって、

明日からの2013年、自分もあらゆる可能性を目指して、

自分の研究と向き合いますφ(.. )