素数ゼミ調査 ~オタクQ&A~
調査7日目。
相変わらず車で走りまわり、
素数ゼミを採集しまくってます。
ここで13年ゼミについてご紹介。
実は素数ゼミって一種類ではないんです。
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110524/21/mus-musculus/99/82/j/o0800060011248649961.jpg?caw=800)
左から、Magicicada tredecim、Magicicada tredecassini、Magicicada tredecula
これは学名と言って、生き物の世界共通語(ラテン語)です。図鑑など開くと必ずでてきます。
Magicicadaが属名、tredecimが種小名です。属名は大文字から、種小名は小文字で、文字は斜体(イタリック)などのルールがあります。リンネの二名法って呼ばれます。
例えば、我々ヒトは、Homo sapiens。同じHomo属(比較的近縁)には、Homo neanderthalensis(ネアンデルタール人)などがいます(化石でした残ってないですがw)。
これら13年ゼミ3種は同じMagicicada属であることもあり、かなり見た目が似ています。
区別する一番のポイントは腹面。
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110524/21/mus-musculus/50/1c/j/o0800060011248649962.jpg?caw=800)
M. tredecimは腹全面また側面が黄色い。(一度属名を書いた後は、MagicicadaをM.のように省略できます)
M. tredecassiniは腹面が真っ黒で黄色がありません。
M. tredeculaは腹面に黄色いストライプが入ったような模様をしています。
こいつらが、一つの地域で大発生します。同じ場所でこの3種が捕れることもあります。一地域の 大発生集団をまとめてbroodって呼びます。
そして新しく2000年に記載された13年ゼミが、
M. neotredecim
サイズや姿はM. tredecimにすごく似ていますが、鳴き声が一番の違い。
この新種を記載した人たちの本部に昨夜から泊まっています。
ってな感じで、13年ゼミは計4種存在します。
さてここから日常生活に全く役に立たない、マニアックQ&Aのコーナー(・∀・)
なぜセミは鳴くのか?
それは子孫を残すため。オスが鳴きメスを引き寄せるのが一般的なセミ。しかし、素数ゼミは少し違う。メスが指を鳴らすようなクリック音をだして、オスを呼び寄せ、それからオスがメスに気に入られようと大きな音をだします。なのでセミの鳴き声で主に聞こえているのはオスの声だけです。
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110526/01/mus-musculus/24/21/j/o0800060011250982224.jpg?caw=800)
なぜ複数の種類の13年ゼミがわざわざ同じ地域で同時に大発生するのか?
それはいっぱい数がいれば天敵に食われる可能性が減るから。異なる13年ゼミが同じ場所で同時に大発生することで、天敵も食べきれない。だから他の13年周期と自分の13年周期をシンクロすることで利益が生まれ、大発生集団が今日まで生き残こることができたってわけ。
13年ゼミの種間では交配は起こるのか?
種間で交配はしないと考えられています。主な理由はDNAを見ると大きく4つのグループに別れるためです。しかし、説明した4種の特徴に当てはまらない(種が混ざった?)個体もいくつか発見されており、精密な調査をしなければ、種間で交配が起っていないとはいいきれません。
また13年ゼミ4種は鳴き声を変えることで自分の種類を判別しているのではないかと研究されています。例えば、M. tredecimとM. neotredecimが同じ地域に発生する場合、M. neotredecimの鳴き声が高く、両者が異なる地域に発生する場合、M. neotredecimの鳴き声は低くなるそう 。メスが自分と同じ種類のオスを選ぶのに役立つんです。
これは形質置換と呼ばれて、Magicicadaの場合、異なる種同士の交配を避けている可能性を示しています。鳴き声をかえることで種を確立したのではないかというお話。
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110526/01/mus-musculus/70/16/j/o0800060011250982222.jpg?caw=800)
セミの鳴き声を録音するおおがかりな実験機器(笑)
同種内の13 年ゼミと17年ゼミは221年(13 x 17 = 221)おきに交配するのか?
これはミステリーです。この疑問を解くため、13年ゼミと17年ゼミが接する地域のセミを捕まえ、分布を調べたり、DNAを調べたり、遺伝子の交流がないか研究されています。
他には13年ゼミと17年ゼミを交配させる実験も行われ、卵を産み、卵がかえることまでは知られていますが、幼虫が成虫になれるかはまだ知られていません(時間がかかりすぎるので。笑)
今回の調査では13年ゼミの分布を調べるため17年ゼミと接する地域で採集したり、セミを解剖して精巣や卵巣からDNAサンプルを採ったりしてます(この解剖がモーテルの洗面所やテーブルで行われてきたことは秘密ですw)。
ちょっとマニアックでしたが、素数ゼミの魅力が少しでも伝わればと思います。
というのも、今泊まっている小屋には、
自分を含め、日本人研究者3人。
新種記載した一人で、長年に渡り素数ゼミに命をかけるJさん。
新種記載した相方で、世界中のセミを研究しているコネチカット大学のSさん。
同じコネチカット大学でオーストラリアのセミを研究しているKさん。
素数ゼミのドキュメンタリーを撮っているカメラマンSさん。
この小屋にはBBC(イギリスの有名なカメラクルー)も数日前に泊まっていたそう。
みんながプロジェクトXにでてきそうな熱い人たちです。
自分もいつかそんな人たちを目指して。。。
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110524/21/mus-musculus/13/71/j/o0800060011248649981.jpg?caw=800)
~おまけ~
ハンミョウ
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110524/21/mus-musculus/8e/4d/j/o0800054711248649964.jpg?caw=800)
ケンタッキー州の田舎町で奇跡の鍋焼きうどん
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110524/21/mus-musculus/ae/6f/j/o0800060011248649976.jpg?caw=800)
相変わらず車で走りまわり、
素数ゼミを採集しまくってます。
ここで13年ゼミについてご紹介。
実は素数ゼミって一種類ではないんです。
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110524/21/mus-musculus/99/82/j/o0800060011248649961.jpg?caw=800)
左から、Magicicada tredecim、Magicicada tredecassini、Magicicada tredecula
これは学名と言って、生き物の世界共通語(ラテン語)です。図鑑など開くと必ずでてきます。
Magicicadaが属名、tredecimが種小名です。属名は大文字から、種小名は小文字で、文字は斜体(イタリック)などのルールがあります。リンネの二名法って呼ばれます。
例えば、我々ヒトは、Homo sapiens。同じHomo属(比較的近縁)には、Homo neanderthalensis(ネアンデルタール人)などがいます(化石でした残ってないですがw)。
これら13年ゼミ3種は同じMagicicada属であることもあり、かなり見た目が似ています。
区別する一番のポイントは腹面。
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110524/21/mus-musculus/50/1c/j/o0800060011248649962.jpg?caw=800)
M. tredecimは腹全面また側面が黄色い。(一度属名を書いた後は、MagicicadaをM.のように省略できます)
M. tredecassiniは腹面が真っ黒で黄色がありません。
M. tredeculaは腹面に黄色いストライプが入ったような模様をしています。
こいつらが、一つの地域で大発生します。同じ場所でこの3種が捕れることもあります。一地域の 大発生集団をまとめてbroodって呼びます。
そして新しく2000年に記載された13年ゼミが、
M. neotredecim
サイズや姿はM. tredecimにすごく似ていますが、鳴き声が一番の違い。
この新種を記載した人たちの本部に昨夜から泊まっています。
ってな感じで、13年ゼミは計4種存在します。
さてここから日常生活に全く役に立たない、マニアックQ&Aのコーナー(・∀・)
なぜセミは鳴くのか?
それは子孫を残すため。オスが鳴きメスを引き寄せるのが一般的なセミ。しかし、素数ゼミは少し違う。メスが指を鳴らすようなクリック音をだして、オスを呼び寄せ、それからオスがメスに気に入られようと大きな音をだします。なのでセミの鳴き声で主に聞こえているのはオスの声だけです。
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110526/01/mus-musculus/24/21/j/o0800060011250982224.jpg?caw=800)
なぜ複数の種類の13年ゼミがわざわざ同じ地域で同時に大発生するのか?
それはいっぱい数がいれば天敵に食われる可能性が減るから。異なる13年ゼミが同じ場所で同時に大発生することで、天敵も食べきれない。だから他の13年周期と自分の13年周期をシンクロすることで利益が生まれ、大発生集団が今日まで生き残こることができたってわけ。
13年ゼミの種間では交配は起こるのか?
種間で交配はしないと考えられています。主な理由はDNAを見ると大きく4つのグループに別れるためです。しかし、説明した4種の特徴に当てはまらない(種が混ざった?)個体もいくつか発見されており、精密な調査をしなければ、種間で交配が起っていないとはいいきれません。
また13年ゼミ4種は鳴き声を変えることで自分の種類を判別しているのではないかと研究されています。例えば、M. tredecimとM. neotredecimが同じ地域に発生する場合、M. neotredecimの鳴き声が高く、両者が異なる地域に発生する場合、M. neotredecimの鳴き声は低くなるそう 。メスが自分と同じ種類のオスを選ぶのに役立つんです。
これは形質置換と呼ばれて、Magicicadaの場合、異なる種同士の交配を避けている可能性を示しています。鳴き声をかえることで種を確立したのではないかというお話。
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110526/01/mus-musculus/70/16/j/o0800060011250982222.jpg?caw=800)
セミの鳴き声を録音するおおがかりな実験機器(笑)
同種内の13 年ゼミと17年ゼミは221年(13 x 17 = 221)おきに交配するのか?
これはミステリーです。この疑問を解くため、13年ゼミと17年ゼミが接する地域のセミを捕まえ、分布を調べたり、DNAを調べたり、遺伝子の交流がないか研究されています。
他には13年ゼミと17年ゼミを交配させる実験も行われ、卵を産み、卵がかえることまでは知られていますが、幼虫が成虫になれるかはまだ知られていません(時間がかかりすぎるので。笑)
今回の調査では13年ゼミの分布を調べるため17年ゼミと接する地域で採集したり、セミを解剖して精巣や卵巣からDNAサンプルを採ったりしてます(この解剖がモーテルの洗面所やテーブルで行われてきたことは秘密ですw)。
ちょっとマニアックでしたが、素数ゼミの魅力が少しでも伝わればと思います。
というのも、今泊まっている小屋には、
自分を含め、日本人研究者3人。
新種記載した一人で、長年に渡り素数ゼミに命をかけるJさん。
新種記載した相方で、世界中のセミを研究しているコネチカット大学のSさん。
同じコネチカット大学でオーストラリアのセミを研究しているKさん。
素数ゼミのドキュメンタリーを撮っているカメラマンSさん。
この小屋にはBBC(イギリスの有名なカメラクルー)も数日前に泊まっていたそう。
みんながプロジェクトXにでてきそうな熱い人たちです。
自分もいつかそんな人たちを目指して。。。
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110524/21/mus-musculus/13/71/j/o0800060011248649981.jpg?caw=800)
~おまけ~
ハンミョウ
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110524/21/mus-musculus/8e/4d/j/o0800054711248649964.jpg?caw=800)
ケンタッキー州の田舎町で奇跡の鍋焼きうどん
!["学者への道" in Arizona](https://stat.ameba.jp/user_images/20110524/21/mus-musculus/ae/6f/j/o0800060011248649976.jpg?caw=800)