又吉某の『火花』の増刷数が話題になり、「増刷」という語が新聞紙上を踊りました。

 そこで「刷」が問題になり、昨日、「『新明解国語辞典』の第四版六刷までが熱い」というネット上でもはっきり書かれていることについて、「刷」の意味を問いましたが、では、『新明解』の第四版はどれほど増刷されているのでしょうか。

 私は、辞書研究者でもないので、詳しいことは分かりませんが、次のような記録を持っています。
 『新明解国語辞典』第四版
 1989年 第四版 第一刷
 1993年     第十三刷
 1995年     第二十七刷
 1996年     第三十三刷
 ずいぶん、売れた辞書だと感心しています。

 実は、見坊豪紀の死去が、1992年10月21日、山田忠雄の死去が1996年2月6日となっています。見坊と山田がこの『新明解』の躍進をどう受け止めたか、また書くつもりですが、ここでは、『新明解』の語釈について、昨日の続きを書いておきます。

 私は、『新明解』について、「版」については、「初版」から「第七版」まで、そして、第四版については、初刷と、1991年2月25日発行の第四刷、そして、第三十三刷を持っているのですが、その「動物園」とそれに加わった「都人士」の語釈が、こんなに変化しているのです。

『新明解』における「動物園・都人士」の語釈一覧

○ 「動物園」
初版 鳥獣・魚類などを(自然に近い状態で)飼い、観覧者に見せる公園風の施設。
二版・三版は同じ

四版 生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀無くし、飼い殺しにする,人間中心の施設。

五版 捕らえて来た動物を、人工的環境と規則的な給餌(きゅうじ)とにより野生から遊離し、動く標本として都人士に見せる、啓蒙(けいもう)を兼ねた娯楽施設。

六版は同じ

七版 捕らえて来た動物を、人工的環境と規則的な給餌(きゅうじ)とにより野生から遊離し、動く標本として一般に見せる、啓蒙(けいもう)を兼ねた娯楽施設。

○ 「都人士」
初版 [消費者としての]都市居住者。
二版・三版・四版は同じ

五版 (生活の便利さを享受する一方、自然に接する機会に恵まれない)都市居住者。
六版・七版は同じ

 「都人士(とじんし)」とは聞き慣れない言葉ですが、『日本国語大辞典』初版にも立項されています。徳富蘆花の「思出の記」からの用例があります。

 以上、報告しておきます。