数日来、書き続け、あるいは入試センタにFaxを送り、
文科省に伝えましたが、反応はまったくなく、いたずら
に日が過ぎて行くことにイライラ感を募らせています。
そこで、今日ははっきり、まとめようと思いました。
Ⅰ 古文の問6と関係する本文は、諸本に従えば、
次の通りです。
(大将殿が)威(おど)し聞こえ給へば、すがすがしき御
心にて、この君たちをさへや、知らぬ所に率て渡し給は
んとあやふし。
a この部分に会話(心内)記号を付している一般書
は私の知る限り、岩波書店版『日本古典文學大系』だ
けです。
b したがって、会話記号をつけない限り、次のよう
な口語訳が可能です。
「(三条殿は)あれこれ考えない(夕霧の)お心で、こ
こにいる子どもたちをまで、(私には)分からぬ所へ連
れて行ってしまうのではないかと不安になる。」
c この口語訳は次の選択肢④とほぼ一致します。
④ 三条殿は、強気に帰宅を拒みながらも、思い切
りのよい「すがすがしき御心」の大将殿ならば、ここに
いる子どもたちまでも自分の手の届かない場所に連
れて行ってしまいかねず、「あやふし」と危惧した。
一つの結論として、会話(心内)記号を打たなけれ
ば、「あやふし」は三条殿の思った内容になり、問6の
正解は④ということです。
Ⅱ ところが、センター試験の本文は次のようでした。
(大将殿が)威(おど)し聞こえ給へば、「すがすがしき
御心にて、この君たちをさへや、知らぬ所に率て渡し
給はん」とあやふし。
a 岩波書店版『日本古典文學大系』は、
(大将殿が)威(おど)し聞こえ給へば、すがすがしき
御心にて、「この君たちをさへや、知らぬ所に率て渡し
給はん」とあやふし。
b この本は、「すがすがしき御心にて」を心話の内容
からはずすことによって、その指示する人は「夕霧」で
はなく、「雲居雁」だとするのですが、この点について
は、この本を読んでいる受験生に多少可哀相な気も
しますが、入試原文に従うのは当然でしょう。しかし
この本に従うならば、「(雲居雁は)一本調子なので、
「コレコレ」と(考え、行動する恐れがあるのが)『あや
ふし』」と口語訳できそうです。
c 入試原文は、閉じカッコを、この岩波書店版『日
本古典文學大系』と同じにしました。もう一度原文を
注意点を太字に変えて書きます。
(大将殿が)威(おど)し聞こえ給へば、「すがすが
しき御心にて、この君たちをさへや、知らぬ所に率
て渡し給はん」とあやふし。
Ⅲ こうして見ると、「あやふし」は地の文であり、敬語
が付されていません。この原文中、三条殿については
すべて敬語で遇しています。したがって、この「あやふ
し」は、三条殿の心情ではないと言えるでしょう。受験
生もそう考えたに違いありません。
「『うたてこそあらめ』とて、さもや染みつかむとあやふ
く思ひ給へり(「末摘花」)」という例もあります。
Ⅳ 以上の点で、次の「公表正解」の太字部分が誤りだ
ということは明らかだと考えます。
④ 三条殿は、強気に帰宅を拒みながらも、思い切
りのよい「すがすがしき御心」の大将殿ならば、ここに
いる子どもたちまでも自分の手の届かない場所に連
れて行ってしまいかねず、「あやふし」と危惧した。
Ⅴ 私見を加えます。
1 余分な会話(心内)記号を加えたために、④が
正しい選択肢にならなくなったのではないでしょうか。
2 では、③が正しい選択肢かどうか、それは別問
題です。ただ、私は③を正解としてよいと思っていま
すが。ぜひ先週書いたブログを参照して下さい。
Ⅵ 時間がありません。もし誤った採点がなされてい
れば、速やかに訂正して下さるよう、関係方面に
強くお願いいたします。