再愛(「伊勢物語」第22段) | Denbayのブログ

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昔つきあっていたけれど、なんとなく別れてしまった彼女から
「なっ君のこと忘れられないの。やっぱり、まだ好きかも」
なんてメールが来たのでナリヒラ君は、
「いつまでも心の友でいた方がいいよ、いつまでもね」
なんて返事をしてみたものの、結局ナリヒラ君は、その夜のうちに彼女の部屋へ。
昔話をしたり、先々のことを話し合ったり。

「千の夜の八千倍の夜を一緒に過ごしたいくらいだよ」

とナリヒラ君が言うので、彼女は

「千の夜を一夜と思っても、おしゃべりをしているうちに朝は来ちゃうわ」

てなわけで、なんのことはない、ナリヒラ君は、昔よりも足しげく彼女の部屋に通うようになってしまいましたとさ。

「伊勢物語」第22段の拙訳

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ちょっと思うところあって、「伊勢物語」なんかを読んでみている。
しかし、なんなんだ、このグズグズの恋愛ショート・ショート集は(笑)

でも、このグズグズ感が、それほど悪い感じがしない。
儒教的(中国的)な倫理観が伝播する前の日本人の考え方、「やまとごころ」というのは、こういう「なさけ(情)」を核としたメンタリティだったのかな?

この「情愛」の世界は、それはそれで心地よいものだ。

江戸時代になると、大和民族の側は儒教的倫理観に支配される。
そうなると、大和の側は「情愛的」なメンタリティを後進的で劣ったものと見做すようになる。
というような図式が正しいのかどうかは分からないけれど。

夜を共にした男女の仲を、朝の鳥が邪魔をするという話は、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」と一緒だな。

「伊勢物語」は面白い。

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以下、原文。

むかし、はかなくて絶えにけるなか、なほや忘れざりけむ、女のもとより、 憂きながら人をばえしも忘れねばかつ恨みつゝなほぞ戀しき といへりければ、 さればよといひて、をとこ あひ見ては心ひとつをかはしまの水の流れて絶えじとぞ思ふ とはいひけれど、その夜いにけり。いにしへゆくさきのことどもなどいひて、
秋の夜の千夜を一夜になずらへて八千夜し寝ばやあく時のあらむ
返し
秋の夜の千夜を一夜になせりともことば殘りてとりや鳴きらむ
いにしへよりもあはれにてなむ通ひける。

 「伊勢物語」第二十二段