書という友-ヘミングウェイと徒然草 | Denbayのブログ

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「ひとり灯のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするこそ、こよなう慰むわざなる。」
『徒然草』第十三段より

"There is no friend as loyal as a book."
ヘミングウェイ

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古今東西、書物を愛した人は多い。
ただ、その愛好が、現実の人間関係に対するものよりも強くなると、その性向はやや病的な要素を帯びるかも知れない。

ただ、そうした病に取り憑かれた人も、また少なくないと思う。
多分、僕もそうした人間のうちのひとりだ。 上に引用した二人の男にも、書物への愛好というよりも、人間(他人)からの逃避の傾向が見られるような気がする。一種の「人間嫌い」と言ってもいいのかも知れないが、この言葉は誤解を招きやすいかも知れない。なぜなら、徒然草の作者にも、ヘミングウェイにも、表面的には「社交性」が見られるからだ。

しかし、この「社交性」と「人間嫌い」は、決して矛盾するものではないと思う。友人や隣人たちとの交流の中で楽しく振舞いつつ感じる孤独というものもあるだろう。現実における親近が、心の裡の距離と一致するとは限らない。人間には、楽しみつつ厭うという能力もある。

「世に從へば、心外の塵にうばはれて惑ひ易く、人に交はれば、言葉よそのききに隨ひて、さながら心にあらず。」
(『徒然草』第七十五段より)

「さるべきゆゑありとも、法師は人にうとくてありなん。」
(『徒然草』第七十六段より)

また、二人が、「人間」というものを深く追求しようとしたということも、彼等の一種の「人間嫌い」と矛盾するものではないと思う。人間が探求するのは、親しみ感じるからとは限らない。むしろ、そこに違和があり、隔たりを感じるからこそ、その対象を探求しようと思うこともある。

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「一冊の書物ほどに誠実な友はいない」

なぜ、複数形の「books」ではなく、単数形の「a book」なのだろう?

いずれにしても、徒然草の一節は、ヘミングウェイの言葉に対する格好の解説となっているように思われる。

ひとり、灯の下に本を拡げて読む。それは、逢うことのない友との出会いである。その友は誠実であり、高邁であり、潔癖であり、親切であり、同情的である。 人は、その交流から、あらゆるものを得る。その中には、現実の人間関係や現実そのものからは得られないものもあるかも知れない。

「逢うことのできない人を友とできるのであるから、読書は素晴らしい」と言う人もいるかも知れない。しかし、むしろ「逢うことができない人」であるからこそ、書物は「最善の(誠実な)友」となり得るのである。直接の人的な接触の不可能性が、読書の可能性なのである。

読書は、一種の病であるかも知れない。 しかし、それは人生における最大の慰めでもある。

ヘミングウェイが『徒然草』に出逢っていたら、彼は『徒然草』を「a book」のうちに数えただろうか・・・。

■ヘミングウェイの言葉
http://www.goodreads.com/quotes/2058-there-is-no-friend-as-loyal-as-a-book
http://thinkexist.com/quotation/there_is_no_friend_as_loyal_as_a_book/145021.html

■『徒然草』第十三段への解説など
http://www.koten.net/yomu/tsure/013.html http://blogs.yahoo.co.jp/talisman_peachi/11898427.html
http://d.hatena.ne.jp/Tsubute/20130721 http://www.kcc.zaq.ne.jp/dfaks108/tzg013.htm

■『徒然草』第七十五段・第七十六段への解説など
http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/tsuredure/turedure050_099/turedure075.htm
http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/tsuredure/turedure050_099/turedure076.htm
http://www.kcc.zaq.ne.jp/dfaks108/tzg075.htm http://www.kcc.zaq.ne.jp/dfaks108/tzg076.htm
http://plus.harenet.ne.jp/~kida/topcontents/news/2010/022201/index.html
http://www.meigennavi.net/pc/word/020/020919.htm http://www.ne.jp/asahi/jimihen/oyaji/ture46.htm

■『徒然草』全巻原文
http://www.geocities.jp/rikwhi/nyumon/az/turezure_zen.html

■古筆手鑑『見努世友(みぬよのとも)』 一帖(二十五折)
http://www.idemitsu.co.jp/museum/collection/introduction/calligraphy/kana/kana01.html