夢のわたりの浮橋 | Denbayのブログ

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世の中は夢のわたりの浮橋かうち渡りつつ物こそ思へ  (奥入)」

「男女の仲というものは、夢の渡りにかかっている浮橋のようにはかないものなのか。あの人のもとをを訪ねては、ただ物思いに屈するほかないのだから。」

鈴木日出男『源氏物語引歌綜覧』(風間書房・2013年)p.189より

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源氏物語の「薄雲」の帖の中に、「夢のわたりの浮橋か」という光る源氏の言葉がある。藤原定家の「源氏物語奥入」の中に、冒頭の歌が記されており、この源氏の言葉は、この歌を引いたものと考えられているようだ。ただし、鈴木によれば、この歌は「出典未詳」とのこと。もちろん、作者も分からない。

源氏物語の最後の帖が「夢の浮橋」であるから、この歌の中に、源氏物語の全体を貫くモチーフのヒントが隠されているかも知れない。
「薄雲」の中のこの場面では、光る源氏と明石の君の「束の間の逢瀬が、心の距離と関係のはかなさを痛感させる」(鈴木)言葉となっている。

あるいは紫式部は、「心の距離」と「関係のはかなさ」というものを、もっと普遍的なものとして見ていたのかも知れない。